概要

バッケンツァーンは、ドイツの家具ブランドe15が1996年に発表した無垢材の腰掛けである。四本の同じ形の脚を組み合わせただけの構成で、名称はドイツ語で臼歯を指す。丸太の中心部から取った材を使うため、乾燥の過程で脚に割れが入る。この割れを欠点として除かないことが、製品の前提になっている。設計はe15の共同創業者であるフィリップ・マインツァー。同社の最初の製品であるテーブルBIGFOOTの端材から生まれた製品であり、発表から現在まで生産が続いている。

特徴・コンセプト

四本の脚だけで成り立つ構成

幅と奥行は270mm、高さは470mm。四本の脚は上部で接し、下へ向かって細くなる。脚と脚の間には隙間が残る。この隙間について、e15は四つの部材が集まって全体をつくっていることが見て取れるためのものだと説明している。一本の材から削り出した塊ではないことが、床に近い側で分かる仕組みである。

座面には浅いくぼみが彫られる。掛けたときに体を受けるためのもので、この面を平らにした仕様も同じ寸法で用意されており、そちらはサイドテーブルとして扱われる。脚と座面は分解できず、一つの塊として出荷される。

割れることを前提にした木取り

使うのは丸太の中心部、すなわち心材である。心材は乾燥に伴って外周方向へ割れが入りやすく、表に見える部分には避けられることが多い。e15はこれを避けず、割れの幅が±1.5cm程度までであれば、構造に支障がない限りそのまま部材として使う。

割れの扱いは形そのものにも及ぶ。部材を斜めに切る際、その切断線を割れの上に通す。切り口では割れが開いて現れ、脚の稜が楔形になる。e15はこの楔形の稜を、割れとあわせてバッケンツァーンの特徴として挙げている。木の乾き方は一本ごとに異なるため、割れの位置と幅も個体ごとに違う。

仕上げと素材の選択肢

標準はオークまたはウォールナットの無垢材にオイルを塗ったものである。オイルは表面に膜をつくらないため木肌の凹凸が指に残り、傷や汚れがついても研磨と塗り直しで戻せる。このほか、着色してラッカー塗装を施したチョコレートブラウンとダークブラウンも選べる。

エピソード

テーブルの端材から

1994年、ロンドンで建築を学んでいたフィリップ・マインツァーは、厚い無垢材によるテーブルBIGFOOTを設計した。翌1995年に創業したe15の最初の製品となったものである。脚には木の中心部の材が使われた。当時、節や割れを含むこの部分は高級家具に適さないとされ、廃棄される側にあった。

バッケンツァーンは、このテーブルの製造で出る端材を使うために設計された。e15はこの経緯を、一本の木のほとんどの部分を使い切るという方針の具体例として説明している。

発表当時の反応

e15がBIGFOOTを初めて公開したのは、1996年にケルンで開かれた国際家具見本市である。マインツァーは後年、節と割れのあるオーク材が等外品と受け取られ、来場した販売業者に笑われたと振り返っている。同時に、展示台の前を通った人がテーブルの表面に触れずにいることはなかったとも述べている。当時の市場では、塗装された滑らかな面やガラス、金属による構成が好まれていた。バッケンツァーンが加わったのも同じ年にあたる。

派生と展開

2021年には、オーク材に含まれるタンニンを反応させて黒く発色させたBackenzahn Black Oakが加わった。塗料を塗るのではなく木そのものの成分を反応させるため、色の出方は個体によって異なる。表面は蝋で仕上げられる。

2026年6月には、折り曲げたステンレス鋼で構成するBACKENZAHN STEELが発表された。無垢材の版と同じ輪郭を板金でつくったもので、屋外でも使える。仕上げは研磨とヘアラインのステンレス、真鍮めっき、粉体塗装の2色が用意されている。

評価と影響

一般に、e15を代表する製品として扱われている。木の状態に手を加えずに使い切る作り方の代表例として挙げられることが多い。

2016年には、ローザンヌ州立美術大学(ÉCAL)のプロダクトデザイン修士課程との協働が行われた。学生はバッケンツァーンの製造に使われるのと同じ端材だけを用いて家具や道具をつくるという条件のもとで制作し、成果はミラノで発表された。

基本情報

名称 バッケンツァーン / BACKENZAHN(型番ST04)
デザイナー フィリップ・マインツァー(Philipp Mainzer)
ブランド e15(イーフィフティーン)
発表年 1996年
デザインの成立国 ドイツ
分類 スツール
主要素材 ヨーロピアンオークまたはウォールナットの無垢材
仕上げ オイル、または着色のうえラッカー塗装(チョコレートブラウン、ダークブラウン)
サイズ 幅27cm × 奥行27cm × 高さ47cm
仕様 座面にくぼみのある腰掛け、または天板が平らなサイドテーブル
派生 Backenzahn Black Oak(2021年)、BACKENZAHN STEEL(2026年)

Reference