e15(イーフィフティーン)
e15(イーフィフティーン)は、1995年にロンドンで創業したドイツのプレミアム家具ブランドです。建築家フィリップ・マインツァーとデザイナー、アートディレクターのファラ・エブラヒミによって設立され、一貫した先進的なデザインと、高品質な素材、革新的な手工芸的生産方法を特徴としています。ブランド名は、ロンドンのハックニー地区にあった最初の工房の郵便番号に由来し、その名には創業の地への敬意が込められています。
現在本社をフランクフルトに構えるe15は、グローバルなホーム&コントラクト市場に対応するモダンブランドとして、家具からライティング、テキスタイル、ストーンウェアに至るまで、インテリアに対する包括的なアプローチを維持しています。世界中の厳選されたプレミアムリテーラーとのネットワークを通じて、その作品を展開しています。
ブランドの特徴とデザイン哲学
e15のデザイン哲学の核心には、「ラディカルな新しいシンプリシティ」という理念があります。1990年代、冷たく無機質なアルミニウムやガラスの構造が主流であった時代に、創業者フィリップ・マインツァーは直感的に温かみのある木製家具を生み出すことを決意しました。この決断が、現代家具デザインの歴史において忘れがたい足跡を残すこととなります。
e15が世界的な評価を確立した最大の要因は、ソリッドウッド(無垢材)をその最も純粋な形で使用する先駆的なアプローチにあります。木材の自然な木目、節、経年変化によって生じる亀裂など、すべての自然の特徴を隠すのではなく、むしろそれらを作品の本質的な美しさとして積極的に表現します。この哲学は、代表作であるBIGFOOT™テーブルやBACKENZAHN™スツールに如実に現れており、素材の誠実さと本質的な形態を重視する姿勢を体現しています。
無垢材の使用に加え、e15は大理石、レザー、メタル、ガラスといった高品質な素材を洗練された方法で組み合わせ、多様な仕上げを展開しています。モノマテリアル構造と自然な仕上げを重視し、持続可能な方法で調達されたオーク材を中心に、環境への配慮を製品づくりの不可欠な要素として位置づけています。
e15のもう一つの重要な特徴は、「美的持続可能性」という概念です。単に環境に配慮した素材を使用するだけでなく、時代を超えて愛され続けるデザインを創造することこそが、真の持続可能性であるという信念を持っています。ミニマルで普遍的なデザインは、見る者を飽きさせることなく、経年とともにパティナを纏い、さらなる美しさを増していきます。また、作品は研磨とオイル仕上げにより、新品のような状態に蘇らせることも可能です。
創業と発展の歴史
1995年、建築家フィリップ・マインツァーはロンドンのハックニー地区(郵便番号E15)に最初の工房を構え、e15を創業しました。ドイツ生まれのマインツァーは、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでプロダクトデザインを、アーキテクチュラル・アソシエーションで建築を学び、建築とデザインの両面に精通した独自の視点を培いました。
創業当初からデザイナー、アートディレクターとしてマインツァーと共にブランドを築いてきたファラ・エブラヒミは、現在e15のヘッドデザイナーおよびアートディレクターとして、ブランドの創造的ビジョンを牽引しています。エブラヒミの豊かな色彩感覚と繊細な素材の組み合わせは、e15の作品に独特の芸術性をもたらしています。
2001年、マインツァーはドイツに帰国し、e15の本社をフランクフルトに移転しました。フランクフルトという立地は、ヨーロッパ、特にドイツ国内の厳選された専門工房やサプライヤーとの緊密な協力関係を構築する上で戦略的な意味を持ちました。地域ネットワークによる短い輸送ルートは、環境負荷の低減と同時に、製品の高い品質を保証することを可能にしています。
創業から30年近くを経た現在、e15は建築家やデザイナー、アーティストとの密接なコラボレーションを通じて、独創的な製品を開発し続けています。同時に、1920年代のドイツモダニズムの建築家であり主導者であったフェルディナント・クラマーやリチャード・ヘレの重要なデザインを復刻し、モダニズムの遺産を現代に継承する役割も果たしています。
代表作品とアイコンデザイン
BIGFOOT™ テーブル(1994年)
フィリップ・マインツァーによってデザインされたBIGFOOT™テーブルは、e15を象徴するアイコニックな存在であり、現代家具デザインの古典として広く認知されています。その設計において最も特徴的なのは、樹木の中心部(心材)から採取された角形の脚部です。厚さ40mmの天板は、7~8枚のソリッドウッドの板から構成され、脚部との間に意図的な隙間を設けることで、堂々とした脚部の存在感を際立たせています。
無垢材の乾燥過程で脚部に生じる特徴的な亀裂は、各テーブルをユニークな存在にしています。水平方向の木目を持つ天板と、不規則な年輪を見せる脚部との対比が、並外れた視覚的コントラストを生み出します。このデザインは、装飾を排除するのではなく、木材の本質的な特性そのものを装飾として昇華させた画期的な作品として評価されています。
2019年には、デザイン25周年を記念して、アーティストのジェフ・マクフェトリッジとのコラボレーションによる限定版が94台制作されました。このテーブルは、アメリカ北西部の森に住むとされる伝説の生物ビッグフットをモチーフとしたアートワークが施され、デザインとアートの融合を体現しています。
BACKENZAHN™ スツール/サイドテーブル(1995年頃)
ドイツ語で「臼歯」を意味するBACKENZAHN™は、e15のもう一つの代表作です。マインツァーが木材を使用する際に樹木全体を活用したいという願いから生まれたこのデザインは、BIGFOOT™テーブルの脚部に使用される心材を用いて制作されました。本質的で彫刻的な形態を持ち、スツールとしてもサイドテーブルとしても機能する多目的性を備えています。
2020年の25周年を記念して、マインツァーはブラックオークを用いた特別版「BACKENZAHN BLACK OAK」を制作しました。長年にわたり愛され続けるこのデザインは、e15の先駆的な無垢材使用の象徴として、数々のデザインコレクションや美術館の常設展示に選ばれています。
HOUDINI チェア(2009年)
ドイツの工業デザイナー、ステファン・ディーツによってデザインされたHOUDINI チェアは、e15のイノベーション精神を体現する作品です。ディーツは、高価な成型設備を使用せずに、人体に寄り添う有機的なシェルを実現する方法を模索し、木製グライダーや航空機の製造技術からインスピレーションを得ました。
その結果生まれたのは、無垢材と可塑性部材を組み合わせた革新的な製造プロセスです。オートクチュールの構造方法に着想を得た独特のシルエットは、ネオンレッドを含む大胆なカラーパレットによって、さらに印象的なものとなっています。2019年には10周年を記念して、ファラ・エブラヒミがキュレーションした記念カラーパレットが発表され、メタリックトーンとドラマティックな色調を組み合わせた洗練されたコレクションが展開されました。
BASIS ワークステーション(2019年)
英国の著名な建築家デヴィッド・チップフィールドとのコラボレーションによって生まれたBASISシステムは、2017年に発表されたトレッスルテーブルから発展したモジュラー型ワークステーションです。現代のクリエイティブで機能的な作業環境のニーズに焦点を当て、本質的な要素だけに絞り込んだスマートでカジュアルなデスクシステムとして設計されています。
ヨーロピアンオークの幅広い平板で構成された矩形の天板は、わずかに外側に傾斜した脚部によって支えられています。伝統的なジョイナリー技術を用いた構造は、素材と職人技の純粋な使用を強調しています。中央スパインに沿った様々なワイヤーマネジメントオプションや、音響バリアと磁気ピンボードを兼ねるプライバシーパーティションなど、現代のワークスペースに必要な機能を優雅に統合しています。
協働するデザイナーたち
e15の強みの一つは、世界的に著名な建築家、デザイナー、アーティストとの密接な協働関係にあります。各クリエイターは、e15の一貫した哲学と創造的視点を共有しながら、独自の視点と専門性を作品に注入しています。
- フィリップ・マインツァー(Philipp Mainzer)
- e15の共同創業者であり、クリエイティブディレクター兼マネージングディレクターを務める建築家。BIGFOOT™テーブル、BACKENZAHN™スツール、ASHIDA テーブル、ENOKI サイドテーブルシリーズなど、e15を代表する数多くの作品を手掛けています。建築事務所「PHILIPP MAINZER OFFICE FOR ARCHITECTURE AND DESIGN」も主宰し、国際的な建築およびインテリアデザインプロジェクトを手掛けています。ドイツデザイン評議会の執行委員会メンバーとしても活動し、建築、デザイン、ブランディングに関する講演も行っています。
- ファラ・エブラヒミ(Farah Ebrahimi)
- e15の共同創業者であり、ヘッドデザイナー兼アートディレクター。マインツァーと共にブランドのビジョンを形成し、特に色彩と素材の組み合わせにおいて独自の感性を発揮しています。HOUDINIチェアの10周年記念カラーパレットのキュレーションなど、e15の芸術的表現を牽引しています。イランへの定期的な旅から得られるインスピレーションは、作品に多文化的な深みをもたらしています。
- ステファン・ディーツ(Stefan Diez)
- ドイツの工業デザイナー。HOUDINIチェアとその派生作品であるMR COLLINSスツール、THIS THAT OTHERシーティングシリーズなどを手掛けています。ディーツの特徴は、単にデザインを創造するだけでなく、新しい製造技術そのものを開発する点にあります。素材と生産技術がデザインを形作るというアプローチは、e15の哲学と完全に合致しています。
- デヴィッド・チップフィールド(David Chipperfield)
- 英国の著名な建築家。BASISテーブルおよびワークステーションシステム、コーヒーテーブル、サイドボードなど、簡潔で本質的なデザインをe15のために制作しています。チップフィールドの作品は、極限まで削ぎ落とされた形態と、伝統的な職人技への敬意を特徴としています。
- デヴィッド・サルストラップ(David Thulstrup)
- デンマークの建築家兼インテリアデザイナー。北欧のデザイン感性とe15のモダニズムを融合させた作品を生み出しています。
- フェルディナント・クラマー(Ferdinand Kramer)
- 1920年代ドイツモダニズムの建築家であり、デザイナー。e15は彼の家具デザインを復刻し、現代に継承しています。素材の熟慮された使用と、それによってもたらされる簡潔な形態は、時代を超えた優雅さを放っています。
- リチャード・ヘレ(Richard Herre)
- 1920年代に活躍したドイツの建築家。1926年にデザインされたSTUTTGARTチェアなど、幾何学性と合理性を内包した表現的な美学を持つ作品が復刻されています。
これらのクリエイターに加え、フィリップ・アレイス、フロリアン・アッシェ、ヨルグ・シェルマン、アナベル・クルーテ、ハンス・デ・ペルスマッカーなど、多彩なデザイナーとの協働により、e15のコレクションは常に新鮮さと多様性を保ち続けています。
製造へのこだわりと持続可能性
e15の製品は、主にドイツをはじめとするヨーロッパの厳選された専門工房と協力して生産されています。この地域ネットワークは、短い輸送ルートを確保し、環境負荷を低減すると同時に、各工房の熟練した職人技と高度な専門性を活用することを可能にしています。
持続可能性は、e15にとって単なる付加的な要素ではなく、製品づくりの根幹を成す原則です。持続可能な方法で調達されたオーク材やその他の高品質な天然素材を使用し、すべての素材は環境的および品質的パラメータに基づいて選定されています。さらに、e15は「美的持続可能性」という独自の概念を重視しています。これは、一年で時代遅れになるような美的価値ではなく、長年にわたって飽きられることのない、時代を超えた美しさを創造することを意味します。
e15の家具は、経年とともにパティナを纏い、より美しく成熟していきます。使用による痕跡を美しい変化として受け入れる一方で、研磨と新たなオイル仕上げによって新品同様の状態に蘇らせることも可能です。この長寿命設計こそが、真の持続可能性を体現しています。
また、e15は品質証明としてすべての製品にエンボス加工されたロゴと個別のシリアルナンバーを付与しており、真正性を保証しています。この細部への配慮は、ブランドの誠実さと製品への責任を示すものです。
国際的な評価と展開
e15の作品は、長年にわたり数々の国際的なデザイン賞を受賞しています。マインツァーとエブラヒミは、モジュラーソファSHIRAZで2008年にドイツ連邦共和国デザイン賞を、KERMANで2017年にインテリア・イノベーション金賞を受賞しました。これらの受賞は、e15のデザインが単なる商業的成功にとどまらず、デザイン界において重要な貢献を果たしていることを証明しています。
e15の作品は、世界中の美術館の常設コレクションに収蔵されており、現代デザインの重要な一部として認識されています。また、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オーストラリアにまたがる550以上のパートナーショップを通じて、グローバルな展開を実現しています。
フランクフルトのフラッグシップショールームは、e15の世界観を体験できる場として機能しており、家具のみならず、クヴァドラット/ラフ・シモンズのテキスタイルやディネーセンのフローリングなど、厳選されたパートナーブランドの製品との調和的な空間提案を行っています。
モダニズムの継承と現代への架け橋
2019年にバウハウス創立100周年を迎えた年、e15は自らのルーツとモダニズムの創設原理を振り返りました。モダンなドイツブランドとして、e15はモダニズムの共有原則の継続を表していますが、同時に環境を重視し、量より質を尊び、実験精神を大切にする多文化的な現代世界と統合し、進化することに意欲的です。
フェルディナント・クラマーやリチャード・ヘレといった1920年代のモダニズムの主導者たちの重要なデザインを復刻することで、e15は歴史的遺産を現代に継承する役割を果たしています。これらの復刻作品は、単なる懐古主義ではなく、時代を超えた優れたデザイン原則が現代においても有効であることを証明しています。
同時に、ステファン・ディーツのHOUDINIチェアに見られる革新的な製造技術の開発や、デヴィッド・チップフィールドとの現代的なワークスペースソリューションの創造など、e15は常に前進し続けています。過去への敬意と未来への革新のバランスこそが、e15の真の強みなのです。
建築とデザインの統合
e15の独自性の一つは、建築とデザインの境界を越えた統合的なアプローチにあります。創業者フィリップ・マインツァーは、家具コレクションの創造と並行して、ニューヨークで建築実務を行い、2001年のドイツ帰国後も「PHILIPP MAINZER OFFICE FOR ARCHITECTURE AND DESIGN」を通じて国際的な建築およびインテリアデザインプロジェクトを実現しています。
この建築的視点は、e15の製品が単独で存在するのではなく、空間全体の中で機能し、環境と調和するようデザインされていることを意味します。家具、ライティング、テキスタイル、ストーンウェアに至るまで、インテリアに対する包括的なアプローチは、この建築的基盤から生まれています。
e15の作品は、住宅用途のみならず、コントラクト市場においても高い評価を得ています。オフィス、公共施設、商業空間など、多様な環境において、e15の家具は機能性と美的価値を両立させた空間ソリューションを提供しています。
基本情報
| ブランド名 | e15(イーフィフティーン) |
|---|---|
| 設立 | 1995年 |
| 創業地 | ロンドン、イギリス(現在の本社:フランクフルト、ドイツ) |
| 創業者 | フィリップ・マインツァー(Philipp Mainzer)、ファラ・エブラヒミ(Farah Ebrahimi) |
| 名前の由来 | ロンドンのハックニー地区にあった最初の工房の郵便番号(E15) |
| 本社所在地 | フランクフルト、ドイツ |
| 主要製品 | 家具、ライティング、テキスタイル、ストーンウェア |
| 代表作品 | BIGFOOT™ テーブル、BACKENZAHN™ スツール、HOUDINI チェア、BASIS ワークステーション |
| 主要デザイナー | フィリップ・マインツァー、ファラ・エブラヒミ、ステファン・ディーツ、デヴィッド・チップフィールド、デヴィッド・サルストラップほか |
| 生産拠点 | 主にドイツをはじめとするヨーロッパの専門工房 |
| グローバル展開 | ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オーストラリアの550以上のパートナーショップ |
| 公式サイト | https://www.e15.com |