椅子やソファの座面・背もたれを覆う素材の総称。布、皮革、合成皮革などがあり、耐摩耗性は規格化された試験で評価される。
張り地
張り地とは、椅子やソファの座面、背もたれ、肘掛けなどを覆う素材の総称のこと。布地、本革、合成皮革のほか、ペーパーコードのような編み材を含めて指す場合もある。
解説
張り地は家具のなかで最も早く傷む部分にあたる。人体が直接触れ、荷重と摩擦が繰り返し加わるためである。フレームやポリウレタンフォームなどのクッション材が健在でも、張り地の摩耗によって使用を終える家具は少なくない。逆に言えば、張り替えができる構造であれば、家具の寿命は張り地の寿命を超えて延びる。
布地の耐摩耗性は日本産業規格のJIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」で評価される。摩耗強さの試験にはA法からF法まであり、このうちE法がマーチンデール法にあたる。円形の試験片を標準の摩擦布に押し当て、多方向に擦って、糸が切れるなどの終点に達するまでの回数を数える方法である。JISではこの方法を主に毛素材の織編物に用いるものと位置づけているが、海外では椅子張り地の耐摩耗を示す数値として広く使われており、対応する国際規格はISO 12947である。日本のカタログでマーチンデールの回数が記載されるのは、海外の生地を扱う場合が中心になる。業務用の張り地では5万回以上が一つの目安とされるが、これは定められた条件下の試験結果であり、実際の使い方や環境での耐久を保証する数値ではない。
素材による性格の違いは、手入れの前提に現れる。布地は通気性があり肌に触れたときの温度差が小さい反面、液体を吸い込むため染みが残りやすい。皮革は表面で液体を弾き拭き取れるが、乾燥やひび割れを避けるための手入れが要る。合成皮革は扱いが容易で価格も抑えられるが、樹脂層が経年で加水分解し、10年前後で表面が剥離することがある。長く使う前提の家具では、この寿命の差が判断を分ける。
選ぶ際に確認しておきたいのは、張り替えが可能な構造かどうかである。座面が取り外せてタッカーで留められているものは比較的容易だが、フレームと一体に成形されたものや、縫製が複雑なものは費用がかさむ。純正の張り地による張り替えを受け付けている経路があるかどうかは、正規販売店で扱う論点と重なる。
Reference
- 摩耗強さ試験(JIS L 1096)(カケンテストセンター)
- https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/170
- 摩耗強さ試験(JIS L 1096・関連規格 ISO 12947)(ボーケン品質評価機構)
- https://www.boken.or.jp/find_tests/textile_general_performance/physical_performance/1269/
- JIS L 1096:2010 織物及び編物の生地試験方法(日本規格協会)
- https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+L+1096:2010
- 品質管理(シンコー)
- https://www.sincol-n.co.jp/?page_id=3161