ハウ(HOWE)― "Moving Design"の哲学で空間を解放する、折りたたみ家具の先駆者

HOWEは、1928年にアメリカ・コネチカット州トランブルでハロルド・ハウによって創業された家具ブランドである。「折りたためるものなら、ハウに聞け(IF IT FOLDS, ASK HOWE)」を初期のスローガンに掲げ、カードテーブル、折りたたみベビーベッド、帽子掛けなど、多機能かつ省スペースな家具の製造から歴史を歩み始めた。20世紀を通じて北米における多目的テーブルのリーディングブランドへと成長し、1960年代後半にはヨーロッパへ進出。1989年にデンマーク・ミゼルファートの欧州ライセンシーを買収し、HOWE Europe a/sとして本格的な欧州生産体制を確立した。

2011年の「ONE WORLD – ONE HOWE」構想により、欧州HOWEが北米事業を統合し、デンマークを拠点とするグローバルブランドへと再編された。現在はオーデンセに本社を置き、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランドに子会社を展開。CF Groupの傘下において、建築家やデザイナーとの密接な協働を通じ、コントラクト市場に向けた高品質かつ持続可能なチェアとテーブルを世界各地に届けている。「Moving Design(動くデザイン)」というブランドコンセプトのもと、スタッキング、フォールディング、ローリングといった卓越した可動性と、バウハウスの機能主義に根ざしたミニマルな美学の融合を追求し続けている。

ブランドの特徴とコンセプト

HOWEのものづくりの核心にあるのは、「Moving Design」という独自の設計哲学である。これは単に物理的に家具が動くことを意味するのではなく、人々が働き、学び、思考し、コミュニケーションする空間そのものを自在に変容させるという壮大なビジョンに基づいている。HOWEが手がけるすべてのチェアとテーブルは、折りたたみ、スタッキング、キャスターによる移動といった高い機能性を備え、一人のスタッフでも容易に空間のレイアウトを変更できるよう設計されている。

デザイン面では、バウハウス運動から受け継いだ「形態は機能に従う」という原則を貫きつつ、スカンディナヴィアンデザインの伝統であるシンプルな美学と素材の誠実さを融合させている。過度な装飾を排し、構造の合理性そのものが生み出す端正なフォルムは、モダンなオフィスから歴史的建造物まで、あらゆる建築空間と調和する普遍性を持つ。

サステナビリティへの取り組み ― Moving Sustainability

HOWEは「Moving Sustainability」の理念のもと、持続可能な家具づくりを推進している。2011年より導入された「サステナブルデザインガイドライン」は、新規・既存すべてのHOWE製品に適用される包括的な指針であり、原材料の調達から製造、流通に至る全工程で最高水準の環境基準を追求するものである。ISO 9001およびISO 14001認証を取得し、環境製品宣言(EPD)や健康製品宣言(HPD)を通じて製品のライフサイクル全体にわたる透明性を確保している。

具体的な取り組みとして、ホルムアルデヒド、PFAS、PVCなどの有害物質の排除、クロムIII(クロムVIに代わる安全な代替素材)の使用、厳格なVOC排出試験の実施が挙げられる。また、2011年に導入されたテイクバック・オプションにより、使用済みのHOWE家具を回収・リサイクルする仕組みも整備されている。SixEチェアにおいてはリサイクルプラスチック100%のシェルを実現し、AS100チェアではフレームにリサイクル素材46%以上を含有、素材全体の76%がリサイクル可能という高い循環性を達成している。

ブランドヒストリー

創業期 ― アメリカの折りたたみ家具メーカーとして(1928年〜1960年代)

1928年、ハロルド・ハウがコネチカット州トランブルで創業。折りたたみ式のカードテーブル、スナックテーブル、ベビーベッド、帽子掛け、ミシン台など、あらゆる「折りたためる家具」を製造した。ニューヨークの名門ホテル、ウォルドルフ・アストリアへの折りたたみバンケットテーブル納入が初期の重要な取引となり、高い耐久性と機能性への信頼を確立する転機となった。1950年代には建築・デザイン市場に本格参入し、スキッドモア・オウイングズ・アンド・メリル(SOM)のプロジェクト向けに500シリーズ折りたたみテーブルを開発するなど、コントラクト家具メーカーとしての地位を固めていった。

欧州進出とデンマーク拠点の確立(1960年代〜2000年代)

1960年代後半、HOWEはライセンス契約を通じてヨーロッパ市場への展開を開始した。1989年には欧州のライセンシーおよびデンマーク・ミゼルファートの生産設備・事業を買収し、HOWE Europe a/sを設立。これにより欧州におけるチェアとテーブルの自社生産が実現した。建築家・デザイナー(A&D)に焦点を当てた戦略と積極的な製品開発により、欧州事業は急速に拡大。一方で1990年代から2000年代初頭にかけては、欧米のHOWEがそれぞれ独立したブランドコンセプトと市場戦略を展開するという二極化の時期でもあった。

グローバル統合と現在(2011年〜)

2011年、HOWEは「ONE WORLD – ONE HOWE」構想を実行に移し、欧州HOWEが北米HOWEの全事業を統合した。以降、デンマーク発の欧州戦略とコレクションを北米市場にも展開する一元的なブランド体制が敷かれている。2013年には、デヴィッド・ローランドの名作40/4チェアの北米ライセンスを取得し、ブランドの象徴的プロダクトとしてグローバルに展開する体制を整えた。ミシガン州に組立工場を設置し、北米顧客への迅速なデリバリーを実現している。現在のHOWEは、デンマーク・オーデンセに本社を構え、アメリカ、イギリス、ポーランド、フランスに完全子会社を持つ国際的なコントラクト家具ブランドとして確固たる地位を築いている。親会社はCF Groupである。

主なインテリアとその特徴

40/4チェア(1964年〜)― デヴィッド・ローランド

40/4チェアは、20世紀を代表するデザインの一つとして国際的に認知される、世界初の本格的スタッキングチェアである。40脚を4フィート(約120cm)の高さに積み重ねられることからその名が付けられた。デザイナーのデヴィッド・ローランドは、チャールズ&レイ・イームズ、フローレンス・ノル、エーロ・サーリネンらを輩出したクランブルック・アカデミー・オブ・アートで学び、ラースロー・モホイ=ナジやノーマン・ベル・ゲデスのもとでも研鑽を積んだ人物である。

1964年の発表以来、途切れることなく生産が続けられ、累計販売数は800万脚を超える。初の大量発注は、SOM設計によるイリノイ大学シカゴ校の新キャンパス向け17,000脚であった。同年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館オープンにあたっても採用され、第13回ミラノ・トリエンナーレではグランプリを受賞。メトロポリタン美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムなど、世界各地の美術館のパーマネントコレクションに収蔵されている。

1992年にHOWEが国際ライセンスを取得し、2004年からはローランド本人との協働により、ライティングタブレットチェア、ラウンジチェア、バースツール、アウトドアチェア、オールウッドチェア、スウィベルチェアなど、多彩なファミリーへと展開された。HOWEのエンジニアリングと40/4の設計思想が融合した現行コレクションは、リバプール大聖堂やカンタベリー大聖堂といった歴史的建築から現代のオフィス、教育施設まで、世界中のあらゆる空間で使用されている。

SixEチェア(2012年〜)― ピアソン・ロイド

SixEは、ロンドンを拠点とするデザインスタジオ、ピアソン・ロイド(トム・ロイドとルーク・ピアソンが1997年に設立)によるポリプロピレンシェルチェアのコレクションである。その名称は、このチェアが体現する6つの「E」に由来する。すなわち、Ergonomic(人間工学的)、Efficient(効率的)、Elegant(エレガント)、Environmental(環境配慮型)、Economic(経済的)、Ease of handling(扱いやすさ)である。

シンプルなモノシェル構造でありながら、優れた座り心地を実現するこのチェアは、HOWEの中核的な価値観を体現する製品として位置づけられている。サイドチェア、アームチェア、キャスター付きアームチェア、スレッドベース、バースツールなど多様なバリエーションを展開。環境面では、Design for Disassembly(分解設計)の思想を取り入れ、リサイクルプラスチック100%によるシェルも実現するなど、HOWEのサステナビリティ戦略を牽引する存在となっている。

Tempestテーブル(1974年〜)― HOWE / コンプロット・デザイン

Tempestは、HOWEが誇るフリップトップ(天板跳ね上げ式)テーブルシステムの代名詞的製品である。そのルーツは、アメリカ海軍潜水艦に採用されたHOWEの伝説的なVictoryテーブルにまで遡る。多目的施設における食事、会議、研修、カンファレンスなど、あらゆる用途に対応する汎用性の高いテーブルシステムとして1974年に登場した。

2002年には、ボリス・ベルリンとポール・クリスチャンセンによるデンマークのデザインユニット、コンプロット・デザインとの協働により、脚部とメカニズムの第2世代へとリマスターされた。堅牢かつ美しいフリップトップ機構、エレガントな楕円形の脚デザイン、隠しキャスターによる優れた可動性を特徴とし、一人のスタッフでも容易に移動・収納が可能。使用しないときは天板を跳ね上げてネスティング(入れ子状に収納)でき、空間を最大限に有効活用できる。リンキングシステム、モデスティパネル、電源ソリューション、ケーブルマネジメントなど、豊富なアクセサリーにより、現代のワークプレイスに求められる高度な機能にも対応する。

タンチェア(1955年設計 / 2013年復刻)― アルネ・ヤコブセン

タンチェア(Tongue chair)は、デンマーク建築・デザインの巨匠アルネ・ヤコブセンが1955年にデザインしたシェルチェアである。成型合板による座面と背もたれが一体となったシェルと、クロムメッキスチールの脚部という2つのエレメントで構成される。ヤコブセンの代表作アントチェアに次ぐ第2のチェアデザインであり、舌のような有機的な曲面が特徴的なフォルムを持つ。

元来、1957年に完成したムンケゴー・スクール(コペンハーゲン北部ゲントフテ)のためにデザインされ、後にSASロイヤルホテル(現ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル)のバースツールとしても採用された。しかし、同時期のアントチェアの人気に押され、商業的な量産は1980年代後半に短期間行われたのみで、長らく入手困難な状態にあった。2013年、HOWEがこの名作を現代の製造技術を用いて復刻。強度と耐久性を向上させつつ、オリジナルの彫刻的なフォルムを忠実に再現した。ビーチ、オーク、ウォルナットの突板仕上げのほか、ファブリックおよびレザーのフルアップホルスタリーでも展開されている。

ムンケゴーチェア(1955年設計 / 2014年復刻)― アルネ・ヤコブセン

ムンケゴーチェア(Munkegaard chair)は、タンチェアと同じく、ヤコブセンがムンケゴー・スクールのためにデザインしたチェアである。アントチェアと同様の成型合板によるワンピースシェルを特徴とし、軽量ながら優れた機能性を持つ。1955年の発表以来、デザインの独創性で注目を集め続けている。

HOWEは2014年、オルガテック見本市にてこの名作の復刻を発表した。FSC認証木材を使用し、座面と脚部を分離可能な構造とすることでリサイクル性を向上させるなど、環境に配慮した21世紀のアップデートを施している。突板仕上げ、フルアップホルスタリー、座面のみアップホルスタリーなど複数の仕様を展開し、リンキングシステムにも対応。レストラン、企業カンティーン、教育施設、ホスピタリティなど幅広い用途で採用されている。

ASシリーズ(2020年代〜)― アンドレアス・シュテーリコ

ASシリーズは、ドイツ人建築家・デザイナーのアンドレアス・シュテーリコがHOWEのために手がけたネスティングチェアとテーブルのファミリーである。シュテーリコはシュトゥットガルト芸術デザインアカデミーで学び、クランブルック・アカデミー・オブ・アートへの留学経験を持ち、リチャード・サッパーとの協働やヴィルクハーンとのプロジェクトで国際的な実績を積んだデザイナーである。

AS100チェアは、特許取得済みの水平スタッキング(ネスティング)機能とキャスターベースにより、無制限の数を連結して収納でき、一人で容易に移動・配置換えが可能。AS400およびAS500テーブルと組み合わせることで、ワークスペースからカンファレンスルーム、ダイニングルームへの瞬時の空間転換を実現する。FSC認証を取得し、フレームにはリサイクル素材を46%以上含有、アルミニウム部品には90%のリサイクル素材を使用するなど、サステナビリティにおいても最先端の水準を達成している。

MN1チェア ― モーテン・ニコライセン

MN1は、デンマーク人家具デザイナー、モーテン・ニコライセンが手がけたミーティング&カンファレンスチェアである。突板の背面フレームを見せるという誠実なデザイン手法により、テーブルトップとの素材的調和を実現し、会議室や講堂に洗練された統一感をもたらす。エレガントにツイストされたアームレスト、X脚・カンチレバー・5スターベースの3種の脚部、2段階の背もたれ高さなど、幅広いカスタマイズに対応するファミリーコンセプトを展開している。FSC認証のオーク、ブラックステインドオーク、ウォルナットステインドオークの突板が用意されている。ニコライセンはオーデンセを拠点にMohoni Studioを主宰し、2017年にはMN1シリーズがBest of Neoconにてシルバーアワードを受賞した。

主なデザイナー

デヴィッド・ローランド(David Rowland, 1924–2023)
クランブルック・アカデミー・オブ・アート出身のアメリカ人デザイナー。第二次世界大戦では爆撃機パイロットとして従軍。ラースロー・モホイ=ナジ、ノーマン・ベル・ゲデスに師事し、1964年に40/4スタッキングチェアを発表。ミラノ・トリエンナーレのグランプリをはじめ数多くの受賞歴を持ち、世界各地の美術館にコレクションされている。2004年以降、HOWEとの協働により40/4ファミリーを拡充した。
ピアソン・ロイド(Pearson Lloyd)
ルーク・ピアソンとトム・ロイドが1997年にロンドンで設立したデザインスタジオ。両者はロイヤル・カレッジ・オブ・アート在学中に出会い、家具とプロダクトデザインの領域を横断する活動を展開。HOWE向けにはSixEチェアコレクションをデザインし、人間工学と環境配慮を高次元で両立させた。
アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen, 1902–1971)
デンマーク近代建築・デザインの巨匠。アントチェア、セブンチェア、エッグチェア、スワンチェアなど不朽の名作を生み出した。HOWEはヤコブセンがムンケゴー・スクールのためにデザインしたタンチェア(2013年復刻)およびムンケゴーチェア(2014年復刻)を製造している。
コンプロット・デザイン(Komplot Design)
ボリス・ベルリンとポール・クリスチャンセンによるデンマークのデザインユニット。スカンディナヴィアン家具の伝統と最新のグローバルトレンドおよび生産技術を融合させた明快なデザインを特徴とする。HOWEのTempestテーブルの脚部・メカニズムの第2世代をデザインした。
アンドレアス・シュテーリコ(Andreas Störiko)
ドイツ人建築家・デザイナー。シュトゥットガルト芸術デザインアカデミーおよびクランブルック・アカデミー・オブ・アートで学ぶ。リチャード・サッパーやヴィルクハーンとの協働で知られ、1990年代以来ベストセラーを送り出してきた。HOWE向けにはASシリーズ(AS100チェア、AS400テーブル、AS500テーブル)をデザインしている。
モーテン・ニコライセン(Morten Nikolajsen)
デンマーク・オーデンセを拠点とする家具デザイナー。テクニカルエンジニアリングの素養を持ち、機能性と遊び心を融合させたデザイン哲学で知られる。Mohoni Studio主宰。HOWE向けにはMN1コンファレンスチェアおよびManhattanソフトシーティングラインをデザインし、2017年にBest of Neoconシルバーアワードを受賞した。

基本情報

ブランド正式名 HOWE a/s(ハウ)
設立 1928年
創業者 ハロルド・ハウ(Harold Howe)
創業地 コネチカット州トランブル、アメリカ合衆国
本社所在地 デンマーク・オーデンセ
子会社 アメリカ、イギリス、ポーランド、フランス
親会社 CF Group
主要製品カテゴリ チェア、テーブル(コントラクト家具)
ブランドコンセプト Moving Design
サステナビリティ ISO 9001 / ISO 14001認証、EPD・HPD対応、テイクバック・オプション(2011年〜)
公式サイト https://www.howe.com/