PP Møbler(PPモブラー)
PP Møblerは、デンマーク・コペンハーゲン北方のアレレズにある家具工房である。1953年4月2日、指物師の資格を得たばかりのEjnar PedersenとLars Peder Pedersenの兄弟が、150平方メートルの工房を自ら建てて始めた。当初は他社の下請けとして張り地家具の枠組みを製作していたが、Hans J. Wegnerとの協働を通じて自社の名で製品を出す工房へ移行した。現在も創業時と同じ敷地で、受注に応じて家具を製作している。
事業と製造の実体
PP Møblerはアレレズの工房ですべての工程を行う。1953年に建てた150平方メートルの建物は増築を重ねて約1,800平方メートルとなったが、所在地は変わっていない。製品は在庫を持たず、注文を受けてから製作される。
扱う素材は無垢の木材である。オーク、アッシュ、チェリー、マホガニーなどを長期間乾燥させたうえで加工に用いる。工程には部材の削り出し、接合、彫刻的な成形、籐やペーパーコードの編み、張り地の仕上げが含まれ、いずれも手作業の比重が高い。
技術の更新も並行して行われてきた。第二世代のSøren Holst Pedersenは数値制御の工作機械と木材加工の技術を導入し、部材の精度を高めた。手作業を機械で置き換えるのではなく、機械で出せる精度と手でしか出せない仕上げを工程ごとに分ける構成が採られている。
この工房が扱ってきた製品には、量産に向かない構造のものが多い。ピーコックチェアの背に並ぶ扁平な棒材、PP501 ザ・チェアの背から肘へ連なる部材の接合はいずれも手の判断を要する工程で、工房の性格を規定してきた。
沿革
創業と下請けの時代
Ejnar PedersenとLars Peder Pedersenの兄弟は、ユトランド半島のVejenで指物師の修業を積んだ。1948年、EjnarはRungstedで別の工房の設立に加わり、この間にJørgen & Nanna DitzelやGunnar Aagaard Andersenと面識を得ている。この工房が1953年に閉じたことを機に、兄弟は自身の工房を持つことにした。
1953年4月2日、アレレズの用地で工房の建設が始まる。8人の職人を集め、昼は建設、夜は借りた工房での製作という時期を経て操業に入った。初期の受注先には、Finn Juhlの家具を扱っていたBovirkeや、張り地家具のA.P. Stolenが含まれる。A.P. Stolenのために製作したHans J. Wegnerのパパベアチェアの下部の枠組みは、張り地に隠れる部分でありながら精度が高く、これがWegnerとの関係の始まりとなった。
Wegnerとの協働
1960年代からWegnerとの協働が本格化する。当初は他社で量産される製品の試作を担っていたが、1969年にWegnerがこの工房のために設計した椅子が発表され、下請けから自社の名で製品を出す工房へ移行した。Wegner自身がPP Møblerの記号を設計し、その後20年にわたって同社の印刷物を手がけている。
1970年代には、生産が途絶えていたWegnerの設計の製造権を順次取得した。Andreas Tuckが廃業した際にはそのWegnerの製品群を引き継いでいる。1974年には日本への輸出を始めた。
1986年にはPP571 アーキテクツデスクと同時期の製品にあたるCircle Chairが発表された。工房にとって技術的に最も難しい製品の一つとされる。1990年代の初めには、Johannes Hansenが製造していた1950年代から1960年代のWegnerの設計の製造を引き継ぎ、PP501 ザ・チェアやピーコックチェアが同社の製品となった。
三世代による経営
1977年、Lars Peder Pedersenが経営から退いて製作に専念し、Ejnarが単独で経営を担うようになった。同じ年にEjnarの子であるSøren Holst Pedersenが入社する。1998年にEjnarが引退してSørenが経営を引き継ぎ、2001年にはSørenの子であるKasper Holst Pedersenが第三世代として加わった。
デザイナーとの協働
PP Møblerの製品開発は、設計者と工房の職人が直接やり取りする形で進む。図面を受け取って製作するのではなく、試作を重ねながら構造と寸法を決める手順が採られてきた。Wegnerはこの工房を頻繁に訪れ、事務所ではなく作業場で職人と直接検討したと同社は説明している。
Wegner以外では、Nanna Ditzelの椅子の試作、Verner Pantonとの協働などが行われた。現在も外部の設計者との新規の開発が続いている。
Hans J. Wegnerの設計思想や経歴について詳しくはHans J. Wegnerプロフィールページをご覧ください。
主な製品群
Hans J. Wegnerの設計が製品の大半を占める。PP501 ザ・チェアと、籐を編んだ座を持つPP503 ザ・チェアは、Johannes Hansenから引き継いだ製品にあたる。ピーコックチェアも同じ経緯で加わった。
張り地の製品ではパパベアチェアがある。もとはA.P. Stolenの製品で、PP Møblerは下部の枠組みを製作していた。机ではPP571 アーキテクツデスクを扱う。
基本情報
| ブランド名 | PP Møbler(PPモブラー) |
|---|---|
| 創業 | 1953年4月2日 |
| 創業者 | Ejnar Pedersen、Lars Peder Pedersen |
| 本社・工房所在地 | デンマーク・アレレズ(創業時と同じ敷地) |
| 企業形態 | 非上場(Pedersen家による同族経営、三世代) |
| 事業内容 | 木製家具の製作および販売(受注生産) |
| 公式サイト | https://pp.dk |
Reference
- PP Møbler - Our Heritage
- https://pp.dk/our-heritage/
- PP Møbler - A family company
- https://pp.dk/a-family-company/
- Architonic - PP Møbler
- https://www.architonic.com/en/b/pp-mobler/3100109/