ピーコックチェア(PP550)は、1947年にハンス・J・ウェグナーがデザインしたラウンジチェアである。扇状に広がる背もたれが孔雀の羽根を思わせることから、デザイナーのフィン・ユールがこの椅子を見て「ピーコックチェア」と名付けたと伝えられている。背もたれの支柱が矢を思わせることから、日本では「アローチェア」とも呼ばれる。

当初はヨハネス・ハンセン社で製造されていたが、PPモブラー社が同社の名作コレクションの製造を引き継ぎ、1992年に生産を再開した。現在は型番PP550として、ウェグナーの原案に基づき製造が続けられている。

特徴・コンセプト

ウィンザーチェアの再解釈

ピーコックチェアは、イギリスの伝統的な家具であるウィンザーチェアを現代的に再解釈した椅子である。ウェグナーは初期の作品においてしばしば伝統的な家具を出発点とし、現代の生活に合わせて造形と機能を更新した。

アーチ状のフレームとスピンドル(支柱)というウィンザーチェアの基本構造を踏まえつつ、北欧の素材選択とモダニズム的な造形を加え、伝統的な様式を現代的な椅子へと再構成している。

背もたれの構造

扇状に広がる背もたれは、装飾的な要素であると同時に機能的な役割を担っている。十四本の支柱には平らに加工された部分があり、これらは着座時に肩甲骨が当たる位置に配置されている。この加工によって背中を支え、座り心地を高めている。

素材と構造

フレームには主にアッシュ材が用いられ、オーク材を選ぶこともできる。アームレストには汚れの目立ちにくいチーク材を採用することも可能で、全体を同一の木材で統一することもできる。

座面には手編みのペーパーコードが用いられる。これは第二次世界大戦後にジュート(黄麻)が不足したことを背景に普及した素材で、軽量で耐久性があり、ウェグナーはウィッシュボーンチェア(Yチェア)など他の作品にも採用している。

評価

ピーコックチェアは、ウェグナーが手がけた多数の椅子の中でも、扇状の背もたれという特徴的な造形で知られる。1947年という早い時期にデザインされながら、現代的な印象を与える造形を備えている。

伝統的な様式の再解釈、背もたれの構造による機能性、そして手作業による製作という要素を併せ持つ椅子として、一般にデンマーク・モダン家具を代表する作品の一つに数えられている。現在もPPモブラー社によって製造が続けられている。

基本情報

デザイナー ハンス・J・ウェグナー
ブランド PPモブラー
デザイン年 1947年
分類 ラウンジチェア
素材 フレーム:アッシュ材またはオーク材
アームレスト:アッシュ材、オーク材、またはチーク材
座面:ペーパーコード
サイズ W760×D760×H1030mm、座面高360mm
仕上げ オイル仕上げ、ソープ仕上げ、またはラッカー仕上げ
製造 当初:ヨハネス・ハンセン社
現在:PPモブラー社(1992年生産再開)
別名 アローチェア