概要

パトリシア・ウルキオラ(1961年生まれ)は、スペイン出身でミラノを拠点とする建築家・デザイナーである。ミラノ工科大学でアキッレ・カスティリオーニに学び、デ・パドヴァではヴィコ・マジストレッティと働いた。2001年に自身のスタジオを設立し、家具、照明、タイル、テキスタイル、ホテルの内装までを手がけている。編み・キルティング・タイルといった既存の技法を、その工程ごと設計に取り込む進め方に特徴がある。2015年からカッシーナのアートディレクターを務める。

バイオグラフィー

1961年9月26日、スペイン北部アストゥリアス州オビエドに生まれた。マドリード工科大学で建築を学んだのちミラノへ移り、ミラノ工科大学でアキッレ・カスティリオーニのもとで学んで1989年に修了した。1990年から1992年にかけては、ミラノ工科大学とパリのENSCIでカスティリオーニとエウジェニオ・ベッティネッリの助手を務めている。

1990年から1996年まで、家具メーカーのデ・パドヴァの製品開発部門に勤め、ヴィコ・マジストレッティと組んで製品を設計した。1996年からはピエロ・リッソーニの事務所でデザイン部門を率い、建築、内装、ショールームの仕事に関わっている。

2001年、ミラノに自身のスタジオを設立。家具・照明・タイル・テキスタイルの設計に加え、ホテルや店舗の内装、展示の構成を手がけている。2015年9月、カッシーナのアートディレクターに就任し、自身の設計に加えて他の設計者を招く製品構成の立案にもあたっている。

デザインの思想と方法

ウルキオラの設計は、材料そのものより、その材料を扱う既存の技法から出発する。編む、縫う、キルティングする、タイルを焼くといった工程は、それぞれ可能な形と寸法の範囲を持っている。彼女はその範囲を調べたうえで、工程を変えずに新しい製品を成立させる方法をとる。

張り地を構造として使う

通常の張り家具では、骨組みが荷重を受け、張り地は表面を覆う。ウルキオラはこの関係を入れ替える設計を試みている。アンティボディでは、三角形に縫い合わせた花弁状の部材を連ねること自体で面をつくり、それが身体を支える。縫製という工程が、装飾ではなく構造を担う位置に置かれている。

外殻と内部を分ける

ハスクでは、硬い外殻とその内側の柔らかいクッションという二層の構成をとる。外殻は形を決め、内側は座り心地を担う。役割が層ごとに分かれているため、それぞれを別の材料と工程で作ることができ、後から張り替えることもできる。

産地の技法を工程ごと使う

ムティーナのためのタイルでは、イベリア半島の装飾タイルの製法と割付を前提に、図柄の側だけを設計した。窯と型は既存のものを用いるため、産地の側は工程を変えずに新しい製品を作れる。テキスタイルでも、既存の織機と加工の範囲内で組織を設計する進め方をとっている。

単位を反復して形にする

カボシェは、小さな球体を多数連ねて一つの照明とする構成をとる。個々の球体は同一で、配置の密度と層の重なりだけで全体の形が決まる。同じ部品を反復して大きな形をつくるという方法は、タイルや編みの仕事とも共通している。

代表作にみる方法

フィヨルド アームチェア(2001年)

スタジオ設立の年にモローゾのために設計した椅子で、座面・背もたれ・肘掛けをそれぞれ独立した曲面として扱い、支柱の上で組み合わせる。背もたれが左右非対称に伸びるため、座る向きによって支えられる部位が変わる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号186.2006.1-2)。→フィヨルド アームチェア

タフティータイム(2005年)

B&Bイタリアのために設計したソファで、キルティングを施した正方形のクッションを基本単位とする。角の要素、端部の要素、高さの異なる肘掛けを組み合わせることで構成を変えられる。伝統的な張り家具のキルティングという工程を、モジュール式の構成に組み込んだ例にあたる。→タフティータイム

アンティボディ(2006年)

モローゾのために設計したシェーズロングである。通常は内側に隠れる張り地を外側に出し、三角形に縫い合わせた花弁状の部材を連ねることで支持面をつくる。表裏で異なる素材を用いており、花弁を上に向けるか下に向けるかで見え方が変わる。縫製の工程そのものを構造として使った仕事にあたる。→アンティボディ

カボシェ(2005年)

エリアナ・ジェロットとの共同で、フォスカリーニのために設計した照明である。内側のガラスの拡散板の周囲に、多数のアクリル球を留めて配する。個々の球が光を透過・反射するため、光源は一つでありながら発光点が多数に分かれる。同一の単位を反復して全体をつくるという方法が、照明で用いられた例にあたる。→カボシェ。ニューヨーク近代美術館は関連するバーグ テーブルランプを収蔵している(収蔵番号844.2005)。

ハスク(2011年)

B&Bイタリアのために設計した椅子で、硬い外殻とその内側のクッションを分けた構成をとる。外殻が形と支持を担い、クッションは座り心地だけを負う。二層に分けることで、それぞれを異なる工程で作り、後から交換することが可能になる。→ハスクチェア

評価と影響

ウルキオラは一般に、2000年代以降のイタリアの家具において、繊維や陶といった工芸的な工程を工業製品の設計に組み込んだ設計者と評価されている。産地の技法を素材の見た目として引用するのではなく、工程の条件を設計の前提として扱う点が特徴として挙げられる。

2015年からのカッシーナでのアートディレクションでは、自身の設計と外部の設計者の起用を並行して進めている。2017年にはフィラデルフィア美術館で「Patricia Urquiola: Between Craft and Industry」と題した展覧会が開かれ、工芸と工業の二つの側面が主題として扱われた。

近年は再生素材の採用を継続的に進めており、詰め物への回収繊維の使用、海洋由来の再生ポリエステルによる張り地の開発などを行っている。

受賞・収蔵

受賞

  • 2010年 美術功労金章(スペイン、Medalla de Oro al Mérito en las Bellas Artes)
  • 2010年 イサベル・カトリカ勲章(スペイン)
  • 2024年 サン・フェルナンド王立美術アカデミー 会員

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、AIC=シカゴ美術館)。

  • MoMA バーグ テーブルランプ(2003年、エリアナ・ジェロットと共同) 収蔵番号 844.2005
  • MoMA フィヨルド アームチェア&フットスツール(2002年) 収蔵番号 186.2006.1-2
  • MoMA フロ チェア(2004年) 収蔵番号 1089.2009
  • AIC アンティボディ シェーズ(2006年) 収蔵番号 2007.398

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
2001年 椅子 フィヨルド アームチェア Moroso
2005年 ソファ タフティータイム B&B Italia
2005年 ベッド タフティー ベッド B&B Italia
2005年 照明 カボシェ(エリアナ・ジェロットと共同) Foscarini
2006年 シェーズロング アンティボディ Moroso
2007年 ラグ マンガス GAN
2008年 水栓金具 AXOR Urquiola Axor-Hansgrohe
2008年 ソファ ファットソファ アウトドア B&B Italia
2010年 椅子 カムバック Kartell
2011年 椅子 ハスクチェア B&B Italia
2011年 ベッド ハスク・ベッド B&B Italia
2012年 タイル アズレイ Mutina
2013年 椅子 リ・トゥルーヴェ Emu
2014年 タイル ティエラス Mutina
2014年 キッチン サリナス Boffi
2014年 椅子 メッシュラウンジ Kettal
2016年 ソファ ビーム Cassina
2017年 椅子 ヌブ Andreu World
2018年 ソファ ボウイ ソファ Cassina
2019年 ソファ ベンド・ソファ B&B Italia

プロフィール

生年 1961年9月26日
出身地 スペイン・オビエド
国籍 スペイン
活動拠点 ミラノ
分野 家具、照明、タイル、テキスタイル、インテリア
主な協働ブランド Cassina、B&B Italia、Moroso、Kartell、Flos、Mutina、Foscarini

Reference