タフティータイムは、スペイン出身のデザイナー、パトリシア・ウルキオラが2005年にB&B Italiaのために創出したモジュラーソファシステムである。19世紀英国の伝統的なチェスターフィールドソファと、ヨーロッパの装飾技法であるキャピトネ(capitonné)の美学を現代の生活様式に調和させた本作は、発表以来20年にわたり、B&B Italia社の最も成功した製品のひとつとして世界中の住空間に迎え入れられてきた。
ウルキオラは本作について「私は、1960年代と1970年代の解釈に特別な敬意を払いながら、キャピトネとチェスターフィールドの形式を見直したかった」と述べている。この言葉が示すとおり、タフティータイムは単なる復古主義ではなく、ミッドセンチュリーのモダニズムが提示した自由で気取らないライフスタイルを、21世紀の都市生活者に向けて再解釈した作品である。
特徴・コンセプト
モジュラーシステムの革新性
タフティータイムの最大の特徴は、その徹底したモジュラー性にある。基本単位となるオットマンを起点として、中央モジュール、コーナーモジュール、そして高低二種類のアームレストを備えた端部モジュールを自在に組み合わせることで、使用者は空間と用途に応じた理想的な座席配置を構築できる。直線的なソファ、L字型のコーナーソファ、シェーズロング付きの構成、あるいは360度全方向から座ることのできるアイランド型の配置まで、その可能性は多岐にわたる。
このモジュラーシステムは、現代の住空間が持つ流動性と多様性に応答している。家族構成の変化、在宅勤務の普及、友人との交流スタイルの変容といった社会的要因に対し、タフティータイムは柔軟に適応する家具の姿を示している。
伝統と革新の融合
表層のデザイン言語において、タフティータイムはチェスターフィールドの深いボタン留め(タフティング)とキャピトネの優雅な襞を継承している。しかし、その実現方法は極めて現代的である。張地は大きな正方形のセクションに分割され、ファブリック版では襞によって、レザー版では規則的なパンチング加工によって接合される。この手法により、伝統的な職人技の視覚的効果を保持しながら、工業生産に適した構造が実現されている。
また、着脱可能なカバーという機能は、美観の維持と持続可能性の両面から重要な意味を持つ。使用者は張地を洗浄したり、季節や気分に応じて色や素材を変更したりすることができ、ソファ本体の寿命を大幅に延長できる。
包摂的な座り心地
タフティータイムは、通常のソファと比較して奥行きが深く設計されている。この特徴により、身体を深く沈め、さまざまな姿勢でくつろぐことが可能となる。ウルキオラは「包み込むような奥行きを持つタフティータイムは、人々が出会う場所であり、安らぎの避難所となる」と表現している。この包摂性は、現代人が求める親密さと安心感を空間に与える重要な要素である。
エピソード
20年の進化と継承
2005年の初登場以来、タフティータイムは時代の要請に応じて進化を続けてきた。2015年には10周年を記念してタフティータイム'15が発表され、ファブリック版のデザインが刷新された。そして2025年、20周年を祝うタフティータイム20では、新たにカーブモジュールが追加され、直線的な構成に加えて有機的な曲線を描く配置が可能となった。
この20周年版について、ウルキオラは「私にとって特別な存在であるタフティータイムの20周年を記念した新バージョンは、未来志向のアプローチで長く愛されることを考えたデザインです」と語っている。内部パディングには再生ポリエステル層が追加され、座面高も見直されることで、快適性が一層向上している。加えて、オーク材やアノダイズドアルミニウム天板のコーヒーテーブルが同時に発表され、システムとしての完成度が高められた。
循環型デザインへの取り組み
B&B Italiaは、タフティータイム20の開発において、循環型生産への強いコミットメントを示している。すべての製品は容易に分解できる構造を採用し、部品の交換や修理、最終的なリサイクルを容易にしている。これは、長期使用を前提とした家具づくりという同社の理念を具現化するものであり、持続可能な消費社会への貢献を意図している。
評価
タフティータイムは、発表以来、デザイン界と市場の両面から高い評価を受けてきた。B&B Italiaにとって「最も確固たる成功を収めた製品のひとつ」として位置づけられており、世界中のショールーム、高級住宅、ホテルラウンジ、企業のレセプションエリアなど、多様な空間で採用されている。
デザイン批評家からは、伝統的な家具の語彙を現代の文脈に翻訳する手法の巧みさ、モジュラーシステムの実用性と美的完成度の両立、そして20年にわたる持続的な進化が評価されている。特に、時代の変化に応じて製品を更新しながらも、核となるデザイン哲学を維持する姿勢は、真に優れたデザインの証として認識されている。
また、パトリシア・ウルキオラの代表作として、彼女のデザイン観を象徴する作品とも見なされている。伝統への敬意、現代生活への深い理解、そして使用者の身体的・心理的快適性への配慮という、ウルキオラのデザイン原則がここに結実している。
基本情報
| 名称 | タフティータイム |
|---|---|
| 英語名称 | Tufty-Time |
| 分類 | モジュラーソファシステム |
| デザイナー | パトリシア・ウルキオラ |
| ブランド | B&B Italia |
| デザイン年 | 2005年 |
| 主な素材 | スチールフレーム、ポリウレタンフォーム、ファブリックまたはレザー張地 |
| 主な仕様 | 着脱可能カバー、モジュラー構成 |
| バリエーション | Tufty-Time、Tufty-Too(レザー)、Tufty-Time '15、Tufty-Time 20 |
| 生産国 | イタリア |