Re-Trouvé:懐古と革新が融合するアウトドアファニチャー
Re-Trouvéは、イタリアを代表するアウトドアファニチャーブランドEMUと、国際的に活躍するデザイナー、パトリシア・ウルキオラによって2008年に発表されたコレクションである。1950年代の伝統的な鉄製ガーデンファニチャーの装飾的な曲線美を現代の技術で再解釈し、ノスタルジアとユーモアを織り交ぜた独創的なデザインとして結実させた。ダイヤモンド形のパターンが繰り返される幾何学的なメッシュ構造は、過去への敬意と未来への展望を同時に表現している。
デザインコンセプト:記憶の再発見
Re-Trouvéという名称は、フランス語で「再発見された」を意味する。ウルキオラは、幼少期に目にした庭園の鉄製家具の記憶からインスピレーションを得て、手作業で鉄線を曲げて装飾していた職人技を、最新のCNC(数値制御)技術によって工業生産可能な形態へと昇華させた。複雑に絡み合う鉄線の曲線は、かつての手仕事の温もりを保ちながら、現代の製造技術が可能にする精密さと一貫性を併せ持つ。この二重性こそが、Re-Trouvéの本質的な魅力となっている。
ダイヤモンド形の連続パターンは、単なる装飾的要素にとどまらず、構造的な強度と視覚的な軽やかさを両立させる機能的な解決策でもある。メッシュ構造は光と影の戯れを生み出し、周囲の植物や空間と有機的に調和する。ウルキオラは「アイロニーとオリジナリティ」をキーワードに、ノスタルジックなモチーフを現代的な感性で再構築することで、時代を超越したデザインを実現した。
特徴:伝統技術と先端テクノロジーの融合
Re-Trouvéコレクションは、EMUが70年以上にわたって培ってきた金属加工技術の結晶である。チェア、アームチェア、テーブル、スツール、プランターなど多様なアイテムで構成されるこのコレクションは、すべてプレガルバナイズド処理を施したスチールロッドを使用し、その上にパウダーコーティングを施すことで、優れた耐候性を実現している。この二重の保護層により、屋外での長期使用においても腐食や劣化を最小限に抑えることができる。
Re-Trouvéチェアの寸法は、幅66cm、奥行60cm、高さ78cm、座面高45cmと、人間工学的な快適性を考慮して設計されている。メッシュ構造による適度な弾力性は、長時間の着座においても快適さを維持する。カラーバリエーションは、クラシックなホワイトとブラックを基調としつつ、イエロー、オレンジ、ターコイズ、グリーンなど鮮やかな色彩も展開され、多様な空間演出を可能にしている。
コレクション全体の設計思想は、屋内外の境界を曖昧にすることにある。Re-Trouvéは、ガーデンやテラスといった屋外空間だけでなく、ホテルのロビーやレストランの内装においても、その優雅さと個性を発揮する。実際、ロンドン・ヒースロー空港のノボテルホテルのカフェテリアや、世界各地のハイエンドなホスピタリティ施設において採用され、高い評価を得ている。
デザインエピソード:職人技の現代的復権
Re-Trouvéの開発において、ウルキオラとEMUのエンジニアリングチームは、手仕事の美学を産業生産で再現するという困難な課題に直面した。1950年代の鉄製家具は、熟練した職人が一つひとつ手作業で鉄線を曲げ、溶接していたが、その複雑な曲線と不規則性を機械的に再現することは容易ではなかった。ウルキオラは数ヶ月にわたる試作と調整を重ね、CNC技術のプログラミングを微調整することで、手仕事の温かみを残しながら、製品としての一貫性と耐久性を確保することに成功した。
特筆すべきは、このコレクションがEMUの創業の精神に回帰するプロジェクトでもあったことである。1951年にウンブリア州で創業したEMUは、もともと金属メッシュと構造物の製造を専門としており、Re-Trouvéはその原点である金属加工技術を最も洗練された形で表現したものといえる。ウルキオラは「EMUの歴史的な専門性を尊重しながら、それを詩的で官能的な形態へと昇華させたかった」と語っている。
評価と影響:現代アウトドアデザインの指標
Re-Trouvéコレクションは、発表以来、アウトドアファニチャーデザインにおける重要な転換点として評価されてきた。それまでアウトドア家具は機能性と耐久性を優先し、デザイン的な洗練性は二次的なものと見なされがちであったが、ウルキオラのアプローチは、屋外空間においても高度な美的体験が可能であることを実証した。特に、ノスタルジアを現代的な感性で再解釈するという手法は、その後のアウトドアファニチャーデザインに大きな影響を与えている。
デザイン界からの評価も高く、ウルキオラ自身は「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」や「デザイナー・オブ・ザ・ディケイド」など数多くの国際的な賞を受賞している。Re-Trouvéは、ウルキオラの代表作のひとつとして、MoMA(ニューヨーク近代美術館)、装飾美術館(パリ)、デザイン美術館(ロンドン)など、世界各地の主要な美術館・博物館で常設展示や特別展の対象となってきた。
商業的な成功も顕著であり、Re-Trouvéは世界85カ国以上に展開されるEMUの製品ラインナップの中でも、特に人気の高いコレクションとなっている。その普遍的な美しさと実用性は、住宅の庭園からホテルのテラス、レストランの中庭まで、あらゆる規模と用途の空間に適応し、イタリアンデザインの優雅さを世界中に伝え続けている。
サステナビリティと生産哲学
Re-Trouvéの生産は、EMUの本社工場があるイタリア・ウンブリア州マルシアーノで一貫して行われている。同社は100%イタリア製にこだわり、原材料の選定から最終検査まで、すべての工程を自社で管理している。使用されるスチールとアルミニウムは100%リサイクル可能であり、パウダーコーティングの工程においても環境負荷の低い塗料と方法を採用している。
EMUは製品の長寿命化をサステナビリティの核心と位置づけている。適切なメンテナンスを施せば、Re-Trouvéは数十年にわたって使用可能であり、実際に30年以上使い続けているユーザーからの証言も寄せられている。この耐久性は、資源の効率的な利用という観点からも、現代の持続可能なデザインの模範といえる。また、タイムレスなデザインは、流行に左されることなく長く愛用されることで、廃棄物の削減にも貢献している。
基本情報
| デザイナー | パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola) |
|---|---|
| ブランド | EMU(エミュー) |
| 発表年 | 2008年 |
| 製造国 | イタリア(ウンブリア州マルシアーノ) |
| 素材 | プレガルバナイズド処理スチールロッド、パウダーコーティング仕上げ |
| サイズ(チェア) | 幅66cm × 奥行60cm × 高さ78cm、座面高45cm |
| カラーバリエーション | ホワイト、ブラック、イエロー、オレンジ、ターコイズ、グリーン |
| コレクション構成 | チェア、アームチェア、テーブル(複数サイズ)、スツール、プランター |
| 用途 | 屋外・屋内兼用(ガーデン、テラス、レストラン、ホテル、住宅) |
| 特徴 | 1950年代の鉄製家具からインスピレーションを得たダイヤモンド形メッシュパターン、CNC技術による精密加工、優れた耐候性 |