概要

ガムフラテージは、2006年にスティーネ・ガムエンリコ・フラテージがコペンハーゲンで設立した設計事務所である。デンマークの家具・工芸の伝統とイタリアの概念的な設計態度という2つの出自を接続する。形が、それを作った技術と工程を示すものであることを条件とし、家具、照明、製品を手がけている。

スタジオの概要

ガムフラテージ(GamFratesi)は、デンマークの建築家スティーネ・ガム(1975年生まれ)とイタリアの建築家エンリコ・フラテージ(1978年生まれ)が2006年にコペンハーゲンで設立したデザインスタジオである。名称は二人の姓を接合したもの。

二人が出会ったのは、ガムがイタリアへ交換留学していた学生時代にさかのぼる。ガムはコペンハーゲン生まれで建築を学び家具デザインで修士号を取得、フラテージはイタリア中部のペーザロ生まれで建築を学びインダストリアルデザインで修士号を取得した。設立前は日本と北欧の複数の建築設計事務所で実務を経験している。

拠点はコペンハーゲンだが、開発と調査のためにデンマークとイタリアを往復する体制をとる。二人は公私ともに組んでおり、コペンハーゲン北部の1932年築の住宅に暮らしている。

デザインの思想とアプローチ

ガムフラテージの設計は、デンマークの家具・工芸の伝統と、イタリアの概念的・知的な設計態度という二つの出自を接続することから出発する。どちらか一方に寄せるのではなく、両者の差そのものを設計の材料として扱う。

伝統と意外性のあいだ

二人は自身の仕事を、伝統的なものと意外なものの均衡の上に置くと説明している。表現を成立させるか壊すかは、しばしば小さなディテール一つで決まる。その境目に関心があるという姿勢が、製品ごとの決定に現れている。

過程を見せる

製品の形が、それをつくった技術と工程を示すものであることを重視する。ルイスポールセンのユー(Yuh)では、シェードの形状が支柱上での可動の軌跡から幾何学的に決定されており、機構が造形の理由になっている。フリッツ・ハンセンのサスペンスでは、シェード頂部の小さな突起が、コードを引き上げたことでできた形のように見える。

自然の構造から出発する

GUBIのビートル チェアは甲虫の身体構造を出発点としている。硬く湾曲した殻と、細く昆虫を思わせる脚という対比が、そのまま椅子の構成に移されている。自然の形を写すのではなく、構造の関係を取り出して家具の問題に置き換える方法である。

作品の特徴

家具と照明を中心に、インテリア設計、展覧会の企画、アートプロジェクトまで扱う範囲は広い。共通するのは、形の説明が可能であることと、生産技術に対する具体性である。

対比の構成
硬いシェルと細い脚、直線と曲線、重い量塊と薄い面など、性質の異なる要素を一つの製品に同居させる
可動と幾何学の結合
照明では、可動域そのものから形状を導く手法をとる。ユーのシェードは下部の円形から上部の直線的な開口へ移行する形をとり、回転と昇降の軌跡に対応している
展開を前提とした設計
ビートルは2013年の発表以降、ダイニング、ラウンジ、会議用、スイベル、ソフトタイプへと継続して展開されている
二つの生産文化の橋渡し
デンマークの木工と張りの技術、イタリアの成形と表面処理の技術を、案件ごとに使い分ける
幅広いクライアント
GUBI、ルイスポールセン、ヘイ、フリッツ・ハンセン、カッペリーニ、ポッロ、ポルトローナ・フラウ、リーン・ロゼ、デドン、スクルツナ、バング&オルフセンなど

主な代表作とその特徴

家具

ビートル チェア(2013年/GUBI

甲虫の身体構造から着想した椅子。丸みを帯びた殻状のシェルと、細く絞った脚の対比が造形を決めている。円錐形の脚部を用いた仕様は、格式のある場にも日常の場にも収まる。発表後は張り地、色、脚部、用途の異なる多数の派生が加えられ、GUBIの主力製品となった。

バット チェア(GUBI)

ビートルに続いて発表された、肘掛け付きの小ぶりな椅子。素材の選択肢が広く、住宅から業務用まで用途の幅が大きい。

トゥル コーヒーテーブル(ヘイ

円形の天板に短い脚を組み合わせた低いテーブル。複数のサイズを重ねて使う構成をとる。

照明

ユー(ルイスポールセン

支柱に沿ってシェードが回転・昇降するランプ。シェードの形は、その可動によって描かれる軌跡から幾何学的に導かれている。名称のYuhは英語の「you」の音を表記したもので、使い手に向けた個人的な照明という位置づけを示す。当初は黒と白で発表され、のちに真鍮大理石の仕様が加わった。テーブル、フロア、ウォールの各形式がある。

サスペンス(フリッツ・ハンセン

アルミニウムのシェードを持つペンダントランプ。頂部の小さな突起が、コードを引いたことで生じた形のように見える構成をとる。物理的な動作を形の説明に用いる手法が、ここでも使われている。

プロダクト

ベオサウンド A5(2023年/バング&オルフセン)

アルミニウムの本体に紙繊維を編んだグリルを組み合わせ、オーク材のハンドルを渡したポータブルスピーカー。持ち運べる機器でありながら、外観は籠や手提げに近い。屋内では家具に混ざり、屋外へ持ち出せば道具として成立するという両義性が、この製品の性格を決めている。

功績・業績

  • 2006年 コペンハーゲンにスタジオを設立
  • 2014年 ICON Award(英国)ベストデザイナー部門にノミネート
  • 2015年 フィン・ユール賞受賞
  • 2015年 ミラノ・デザイン・アワード スペシャルメンション(Mindcraft15)
  • 2017年 iFアワード受賞
  • 2018年 ブルーノ・マットソン賞受賞

評価・後世に与えた影響

ガムフラテージは、デンマークの家具設計が世代交代を迎えた2010年代に、その中心的な存在の一つとして扱われてきた。デンマーク・モダンの語法を継承しつつ、イタリアの概念的な設計態度を持ち込むという構図が、過去の様式の再現とは異なる位置を与えている。

受賞歴では、2015年のフィン・ユール賞と2018年のブルーノ・マットソン賞という、北欧の家具設計に対する二つの主要な賞を10年たらずのあいだに受けている点が目立つ。デンマークとスウェーデンの双方から評価されたことになる。

製品面では、GUBIのビートルが2013年の発表以降、椅子の一系統として継続的に展開されてきたことが実績として大きい。単一のモデルではなく、用途と素材の異なる製品群を長期にわたって育てる設計は、現在の家具メーカーが求める形式に合致している。バング&オルフセンのベオサウンド A5のように、家具と電子機器の境界にある製品を手がけている点も、この世代の設計者の特徴を示している。

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。デンマーク・イタリア国内の館については照合手段がない。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
2013年 椅子 ビートル チェア(Beetle) GUBI
2010年代 椅子 バット チェア(Bat) GUBI
2010年代 椅子 マスキュロ(Masculo) GUBI
2010年代 テーブル トゥル コーヒーテーブル(Tulou) HAY
2010年代 照明 サスペンス ペンダント(Suspence) Fritz Hansen
2017年 照明 ユー(Yuh/テーブル・フロア・ウォール) Louis Poulsen
2023年 オーディオ ベオサウンド A5(Beosound A5) Bang & Olufsen
2025年 椅子 ビートル ソフト(Beetle Soft) GUBI

スタジオ情報

設立 2006年
創設者 スティーネ・ガム、エンリコ・フラテージ
拠点 デンマーク・コペンハーゲン
分野 家具、照明、製品、インテリア、展示
主な協働ブランド GUBI、Louis Poulsen、Fritz Hansen、HAY、Bang & Olufsen

Reference