概要
LEMは、ロンドンを拠点としたデザインユニットAZUMI(安積伸・安積朋子)が1999年に設計し、イタリアのラパルマが2000年に発表したカウンタースツールである。座を縁取る一本のスチールのバンドが、そのまま前方の低い位置へ回り込んでフットレストになる。支柱にはガススプリングが仕込まれ、昇降と回転ができる。名称は1969年の月着陸に使われた月着陸船(Lunar Excursion Module)の略称からとられた。発売以来生産が続いており、のちに屋外用の仕様も加わった。
特徴・コンセプト
座とフットレストを一本のバンドでつなぐ
高さを変えられるカウンタースツールでは、フットレストを支柱側に固定するのが通例だった。この方式では昇降するのが座だけなので、座面を上げるほど足を置く位置が相対的に低くなり、高さによって座り方が変わってしまう。LEMは、座を受けるスチールのバンドを座面の左右から前方へ下ろし、その部分をそのままフットレストとした。足をかける位置が座と一体で動くため、どの高さに合わせても両者の距離が保たれる。2001年度グッドデザイン賞の受賞記録にも、脚のせの取り付け位置に関わる問題を解消した点が記されている。
この構成は、支柱まわりの部品を減らす方法でもある。フットレストを別部材として付ければ支柱に受け金具が必要になり、内部の昇降機構との干渉も設計しなければならない。座の枠がその役目を引き受けたことで、支柱は昇降と回転だけを担う一本の管になった。
鋼のバンドに沿わせた成形合板の座
座は成形合板で、鋼のバンドの内側に収まる。無垢材の削り出しではなく薄板を型で圧着する方法をとったのは、浅く湾曲した座面と、バンドの曲線に沿う縁を、一定の厚みのまま連続させるためである。表面は突板のオークやウォールナットのほか、ラミネート、レザー張り、ステンレスなどから選べる。
細い支柱を支えるベース
フレームはサテン仕上げのクロームめっき、または白と黒の粉体塗装で仕上げられる。ベースはスチール板の上にステンレス板を重ねてプレスし、下側からボルトで締め付ける構造をとる。密度の高い材を床に近い位置へ集めることで、細いスチールパイプの支柱でも据わりが崩れない。表面は「リネン地」と呼ばれる織目状の仕上げを施したAISI 304のステンレス鋼で覆われる。イタリアの家具試験機関CATASによる試験では、120kgの荷重で8万回の繰り返しに耐えている。
使われる場所に合わせた仕様
屋外用では、フレーム・支柱・ベースをAISI 316Lのステンレス鋼に変え、座はイロコ材の曲げ合板か一体成形のポリウレタンとする。雨や塩分にさらされる場所では、屋内用の合板と鋼の組み合わせでは保たないためである。ベースの裏には、屋内用にはフェルト、屋外用にはゴムが入る。
人の出入りが多い飲食店向けには、離席後に座が元の向きへ戻る機構と、直径20cmの床固定用ベースが用意されている。座面の高さが固定された仕様もあり、昇降機構を省いた分だけ構成が単純になる。
エピソード
設計は1999年、ロンドンで行われた。安積伸と安積朋子は1995年から共同でAZUMIとして活動しており、LEMはその時期の仕事にあたる。ラパルマは2000年4月のミラノサローネでこれを発表し、販売は2001年の初めに始まった。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、装飾にあたる要素を持たず、必要な機能だけを残した構成が宇宙船を思わせるとして、この名称と形の関係を説明している。
2008年、安積伸から同館へ初期生産分の一脚が寄贈され、あわせて開発中のスケッチ類も収められた。寸法を書き込んだ検討図やスケッチブックが残っており、量産家具としては設計の推移をたどれる資料が揃っている例といえる。同館の記録によれば、2000年の発売から2008年までの製造数は約20万脚、月あたり約3,000脚であった。
評価と影響
発表から現在まで生産が続き、屋内用に加えて屋外用、座が戻る機構、床固定のベースといった選択肢が用意されてきた。当初の構成を変えずに仕様を広げる形で扱われている製品である。一般的には、高さの調節と足のかけやすさを両立させたカウンタースツールとして評価されている。
受賞歴・収蔵
受賞
- 2000年 FX International Interior Design Awards「Product of the Year」
- 2001年度 グッドデザイン賞(受賞番号 01A20671/対象名「LEM・A, LEM・B」、デザイナー 安積伸+安積朋子)
収蔵
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)が、2000年に製造された一脚を収蔵番号W.37-2008で登録している。同館はあわせて、開発時の検討図とスケッチをE.754-2008、E.755-2008、E.756-2008、E.758-2008として収蔵している。
ラパルマの歴史や他の製品について詳しくはラパルマブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | レム / LEM |
|---|---|
| デザイナー | 安積伸+安積朋子(Shin Azumi + Tomoko Azumi/AZUMI) |
| ブランド | ラパルマ(lapalma) |
| 発表年 | 2000年(設計1999年) |
| デザインの成立国 | イギリス |
| 製造国 | イタリア |
| 分類 | カウンタースツール |
| 主要素材 | 成形合板、スチール、ステンレス鋼(座は突板・レザー・ラミネート・ステンレス等から選択) |
| 機構 | ガススプリングによる昇降と回転(座面高固定の仕様もあり) |
| 受賞 | 2000年 FX International Interior Design Awards Product of the Year/2001年度 グッドデザイン賞 |
| 収蔵 | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(W.37-2008) |
Reference
- LEM Bar Stool | Victoria and Albert Museum(収蔵番号 W.37-2008)
- https://collections.vam.ac.uk/item/O165200/
- LEM・A, LEM・B|受賞対象一覧 | GOOD DESIGN AWARD(2001年度・01A20671)
- https://www.g-mark.org/gallery/winners/9c3efb7f-803d-11ed-862b-0242ac130002
- LEM | Lapalma(製品ファミリー公式ページ)
- https://www.lapalma.it/it/famiglie/lem
- Sedute LEM Lapalma | Salone del Mobile.Milano(製造仕様)
- https://www.salonemilano.it/it/prodotti/lapalma/lem