概要

EMテーブルは、ジャン・プルーヴェが1950年に設計したテーブルである。名称は「Entretoise Métallique(金属製スペーサー)」に由来する。傾斜した脚を金属製のクロスバーで連結する構成をとる。プレハブ住宅メゾン・トロピカルのために開発された。

2002年よりヴィトラが復刻製造している。

脚とクロスバー

脚は斜めに傾く。垂直に立てれば接地点が天板の真下に来るが、外へ開けば接地の間隔が広がり、横からの力に対して倒れにくくなる。天板の荷重は脚を伝って斜めに床へ流れる。

脚を連結するクロスバーは、左右の脚が開く方向への変形を止める。斜めの脚だけでは荷重で開きが進むが、水平材で結べば三角形が成立して形が保たれる。この部材が製品名の由来にあたる。

メゾン・トロピカルとの関係

メゾン・トロピカルは、1949年から1951年にかけて開発されたプレハブ住宅である。折り曲げ加工したアルミニウムとスチールで構成され、航空機で現地へ輸送して組み立てることを前提とした。輸送の重量と体積が制約になるため、部材は薄く平たいことが求められる。

住宅には二重屋根による換気、可動式のサンスクリーン、青いガラスの開口が用いられた。EMテーブルはこの住宅の家具として開発され、同じ条件——軽量であること、平たく梱包できること、現地で組み立てられること——を満たしている。

メゾン・トロピカルは3棟の試作のみで、量産には至らなかった。現地で建設する建築と比べて費用面の優位がなかったことが理由とされる。2000年代に現存する建物が修復され、複数の美術館で展示された。

折り曲げによる強度

薄い金属板は単体では容易に撓むが、折り曲げて断面に角度をつければ、その方向への抵抗が大きくなる。板厚を増やさずに強度を得られるため、重量が抑えられる。プルーヴェはこの手法を家具と建築の双方に用いた。

ベースは曲げ加工したスチール板とチューブスチールで構成され、粉体塗装で仕上げられる。天板は厚さ34mmの無垢材オーク、ウォルナット)、単板、厚さ40mmの高圧ラミネートから選べる。

Vitraによる復刻製造

2002年、ヴィトラがプルーヴェの家具の復刻製造を開始した。細部・素材・色彩の判断は遺族との協議を経ている。

復刻版ではベースの高さが見直されている。ベースの色はスタンダードチェアと共通の系統から選ばれ、組み合わせたときに色が揃う。

180cmから260cmまで5つのサイズが展開される。脚の位置は天板の端から一定の距離に置かれるため、長さが変わっても端の席に脚が干渉しない。

評価と影響

板を折り曲げて断面をつくる手法は、同じプルーヴェによるスタンダードチェアの後脚やビューロー・プレジダンスにも用いられる。いずれも荷重の大きい箇所の断面を厚くし、小さい箇所を細く保つ。

脚を斜めに配して床で間隔を広げる扱いはアントニーチェアとも共通する。中央の一本脚で床を空けるチューリップテーブルとは、逆の方向にあたる。EMテーブルの美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。

基本情報

デザイナー ジャン・プルーヴェ
デザイン年 1950年
ブランド Vitra(2002年より復刻製造)
分類 ダイニングテーブル
サイズ展開 180 × 90 × 74 cm
200 × 90 × 74 cm
220 × 90 × 74 cm
240 × 90 × 74 cm
260 × 90 × 74 cm
天板素材 無垢材(34mm厚:ナチュラルオーク、ダークオーク、アメリカンウォルナット、オイル仕上げ)
単板(39mm厚:ナチュラルまたはダークオーク、保護ワニス仕上げ。200・240cmサイズのみ)
HPL高圧ラミネート(40mm厚)
ベース素材 曲げ加工スチール板とチューバースチール、粉体塗装仕上げ
ベースカラー ディープブラック、エクリュ、ジャパニーズレッド、チョコレート、コーヒー
開発背景 メゾン・トロピカル(熱帯住宅)プロジェクト
製造国 ドイツ