概要
チューリップテーブルは、フィンランド系アメリカ人建築家エーロ・サーリネンが1955年から1957年にかけてデザインし、1957年にノールから発表されたダイニングテーブルである。ペデスタルコレクションの一部にあたる。中央から立ち上がる一本の脚が天板を支える。
デザインの背景
脚の本数という課題
4本脚のテーブルに4脚の椅子を寄せると、床には最大20本の脚が並ぶ。テーブル下では脚どうしが干渉し、椅子を寄せる位置も限られる。サーリネンはこの状態を解消することを課題とした。
開発には約5年を要した。図面では脚の断面は決まるが、床から見上げたときの見え方は確かめられない。縮尺模型を室内に配置して検証し、その後に実物大の模型を粘土で修正した。
ノールとの協働
ノールのデザイン開発グループとの協働により、生産上の問題が解決された。実物大の模型は実際の家具として使用され、検証が重ねられた。1957年にペデスタルコレクションとして発表されている。
特徴とデザインコンセプト
彫刻的な一本脚構造
脚は鋳造アルミニウムによる。一本脚では接地点が中央の一箇所になるため、天板の端に荷重がかかると倒れる方向に力が働く。脚の下部を円形に広げれば接地の範囲が確保され、この力に抵抗できる。鋳造のため密度が高く、重量そのものも安定に寄与する。
サーリネンは当初、全体をファイバーグラスで製作することを望んだ。当時の樹脂では細い一本脚で天板を支える強度が得られなかったため、脚にはアルミニウムを用い、表面処理を揃えることで素材の違いを目立たせない構成をとった。
多様な天板のバリエーション
天板は円形とオーバル形の二つの基本形状があり、サイズは直径91センチメートルから152センチメートルまで、さまざまな展開が用意されている。素材も多岐にわたり、ラミネート、木製ベニヤ、大理石(カッラーラ、アラベスカートなど)、アクリルストーンなどから選択できる。特に大理石の天板は、その重厚な存在感と優美なペデスタル脚の対比が印象的で、高級感溢れる空間演出を可能にしている。
天板の縁には面取りが施される。断面に斜めの面が生じることで、正面から見た厚みが実際より薄く読める。
空間に開放感をもたらす機能性
脚が中央に一本のみのため、天板の周囲どこにでも椅子を寄せられる。円形の天板では席の数も固定されない。
エピソード
建築との相関性
設計時期は、サーリネンが手がけたTWAフライトセンターの設計と重なる。曲面のシェルで空間を覆う構成と、一本の脚から天板へ広がる構成には、荷重を一点から分散させるという共通の課題がある。
影響と評価
1957年の発表以来、ノールが生産を続けている。同じペデスタルコレクションのチューリップチェアと組み合わせるほか、ベルトイア サイドチェアなど他の設計者の椅子と併用されることも多い。脚が中央に一本のみのため、組み合わせる椅子の脚の形を選ばない。
脚の本数を減らして床面を空ける扱いは、フローレンス・ノル ダイニングテーブルが直線の脚で四隅を占める構成とは対照的にあたる。チューリップテーブルの美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。
コレクションの展開
ペデスタルコレクションには、ダイニングテーブルのほか、コーヒーテーブル、サイドテーブル、チェア、アームチェア、スツールが含まれる。いずれも同じ一本脚の構成をとる。
ダイニングテーブルは円形のほかオーバル形もあり、長さ198cmと244cmの2種が用意される。オーバル形では脚が2本になるが、天板の中央寄りに配されるため端の席にも脚が干渉しない。
エーロ・サーリネンの設計思想や経歴について詳しくはエーロ・サーリネンプロフィールページをご覧ください。
ノルの歴史や他の製品について詳しくはノルブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | エーロ・サーリネン(Eero Saarinen) |
|---|---|
| ブランド | ノール(Knoll) |
| デザイン年 | 1955-1957年 |
| 発表年 | 1957年 |
| コレクション名 | ペデスタルコレクション(Pedestal Collection) |
| 別名 | チューリップテーブル、ペデスタルテーブル、サーリネンテーブル |
| 構造 | 鋳造アルミニウム製一本脚ベース(リルサンコーティング仕上げ) |
| 天板素材 | ラミネート、木製ベニヤ、大理石、アクリルストーン |
| 天板形状 | 円形(直径91cm、107cm、120cm、137cm、152cm)、オーバル(198cm×121cm、244cm×137cm) |
| カラー | ホワイト、ブラック(ベース)/天板は素材により多様 |
| 生産 | 1957年より現在までノール社が継続生産 |