バイオグラフィー
1910年、フィンランドのキヴィヤルヴィ生まれ。著名な建築家エリエル・サーリネンを父に持つ。1923年、13歳の時に家族とともにアメリカへ移住。ミシガン州のクランブルック美術アカデミーで育ち、後にイェール大学で建築を学ぶ。1934年にイェール大学建築学部を卒業後、ヨーロッパへ遊学。1936年に帰国し、父の建築事務所に加わる。第二次世界大戦後の1950年、父の死を機に事務所を継承し、「エーロ・サーリネン・アンド・アソシエイツ」を設立。1961年、脳腫瘍により51歳の若さで急逝するまで、数々の革新的な建築とデザインを世に送り出した。
デザインの思想とアプローチ
サーリネンのデザイン哲学は「それぞれの問題には、それぞれの解決策がある」という信念に基づいている。彼は一つのスタイルに固執することなく、各プロジェクトの本質を追求し、その都度最適な形態を模索した。「彫刻的な建築」と称される彼の作品群は、構造と形態の完璧な融合を追求し、機能性と審美性を高次元で統合することに成功している。家具デザインにおいては、有機的な曲線と革新的な素材使いにより、20世紀モダンデザインの新たな地平を切り開いた。
作品の特徴
エーロ・サーリネンの作品は、以下の特徴によって識別される。第一に、有機的でありながら未来的なフォルム。自然界の形態から着想を得た流れるような曲線は、同時代の幾何学的なモダニズムとは一線を画している。第二に、革新的な素材と技術の探求。グラスファイバーやアルミニウムなど、当時の最新素材を積極的に採用し、従来不可能だった形状を実現した。第三に、空間と家具の調和。建築家としての視点から、家具を独立した存在ではなく、空間全体の一部として捉えた統合的なデザインアプローチ。
主な代表作とその特徴
チューリップチェア(1955-1957年)
一本脚の革命的なデザインは、「テーブルの下の醜い脚の混乱」を解決するという明確な意図から生まれた。グラスファイバー強化プラスチックとアルミニウムベースの組み合わせにより、視覚的な軽やかさと構造的な安定性を両立。ペデスタルシリーズとして、チェア、アームチェア、スツール、テーブルを展開し、統一感のある空間デザインを可能にした。
ウームチェア(1948年)
フローレンス・ノルとの共同デザインによる作品。子宮(ウーム)のように包み込む形状は、究極のリラクゼーションを追求した結果である。グラスファイバー製のシェルにクッションを組み合わせ、有機的なフォルムと快適性を実現。1948年のMoMA国際家具デザインコンペティションで受賞し、サーリネンの名を世界に知らしめた。
TWAフライトセンター(1956-1962年)
ニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港に建設された、飛翔する鳥を思わせる流線形のターミナルビル。コンクリートシェル構造による有機的な内部空間は、「飛行の興奮と冒険」を体現。建築と彫刻の境界を曖昧にし、空港建築の概念を根底から変革した。
ゲートウェイ・アーチ(1947-1965年)
セントルイスに建設された高さ192メートルの巨大なアーチ。アメリカ西部開拓の出発点を記念するモニュメントとして、カテナリー曲線(懸垂線)を用いた優美な形状を実現。ステンレススチールで覆われた外装は、空と大地を結ぶ象徴的な存在として、アメリカの国家的アイコンとなった。
功績・業績
- 1940年、チャールズ・イームズとの共同作品「Organic Chair」でMoMA主催のオーガニック家具デザインコンペティション優勝
- 1948年、ウームチェアでMoMA国際家具デザインコンペティション受賞
- 1955年、アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル受賞
- 1962年、死後にAIA建築事務所賞受賞
- ノル社(現Knoll)との協働により、20世紀を代表する家具コレクションを創出
- クランブルック美術アカデミー、マサチューセッツ工科大学、イェール大学での建築教育への貢献
評価・後世に与えた影響
エーロ・サーリネンは、20世紀中期のアメリカにおけるモダニズムの発展に決定的な役割を果たした。彼の「ネオ・フューチャリズム」と称される建築スタイルは、機能主義の枠を超えて、建築に詩的で感動的な要素をもたらした。特にTWAフライトセンターは、建築が単なる機能的な箱ではなく、体験的で感情的な空間であることを証明した画期的な作品として評価されている。
家具デザインにおいても、チューリップチェアに代表される一本脚の家具は、その後のデザイナーたちに多大な影響を与え、ペデスタル家具という新しいカテゴリーを確立した。有機的なフォルムと最新技術の融合という彼のアプローチは、現代のパラメトリックデザインやデジタルファブリケーションの先駆けとも言える。
サーリネンの遺産は、建築と家具デザインの境界を超越し、総合的な環境デザインという概念を体現している。彼の作品は今日でも生産され続け、ミッドセンチュリーモダンの象徴として、世界中の美術館や個人コレクションで愛され続けている。その革新的な精神と妥協のない美学は、21世紀のデザイナーたちにとって、今なお重要な指針となっている。
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1940年 | 椅子 | Organic Chair | Vitra(復刻) |
| 1946年 | 椅子 | Grasshopper Chair | Knoll |
| 1948年 | 椅子 | Womb Chair | Knoll |
| 1948年 | オットマン | Womb Ottoman | Knoll |
| 1950年 | 椅子 | Executive Armchair (Model 71) | Knoll |
| 1950年 | 椅子 | Executive Side Chair (Model 72) | Knoll |
| 1957年 | 椅子 | Tulip Chair | Knoll |
| 1957年 | 椅子 | Tulip Armchair | Knoll |
| 1957年 | スツール | Tulip Stool | Knoll |
| 1957年 | テーブル | Tulip Table (Round) | Knoll |
| 1957年 | テーブル | Tulip Table (Oval) | Knoll |
| 1957年 | テーブル | Tulip Side Table | Knoll |
| 1957年 | テーブル | Tulip Coffee Table | Knoll |
| 1948-1956年 | 建築 | General Motors Technical Center | - |
| 1956-1962年 | 建築 | TWA Flight Center | - |
| 1958-1964年 | 建築 | Dulles International Airport | - |
| 1947-1965年 | 建築 | Gateway Arch | - |
| 1953-1957年 | 建築 | Miller House | - |
| 1955-1958年 | 建築 | MIT Chapel | - |
| 1953-1955年 | 建築 | Kresge Auditorium | - |
Reference
- Eero Saarinen | Knoll
- https://www.knoll.com/designer/Eero-Saarinen
- Eero Saarinen - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Eero_Saarinen
- Eero Saarinen Collection | Design Within Reach
- https://www.dwr.com/designer-eero-saarinen
- Eero Saarinen: Biography, Works, Awards | Architecture Lab
- https://www.architecturelab.net/architect/famous/eero-saarinen/
- Eero Saarinen | MoMA
- https://www.moma.org/artists/5069
- Cranbrook Art Museum - Eero Saarinen
- https://cranbrookartmuseum.org/learn/eero-saarinen/