概要

ウームチェアは、エーロ・サーリネンが設計し、ノルが1948年に発表したラウンジチェアである。ファイバーグラスで強化したプラスチックのシェルが座面・背・肘掛けを一続きにつくり、細いスチールロッドの脚がこれを支える。当初はモデル70として登録された。

特徴・コンセプト

シェルの形で座り心地をつくる

クッションを厚くすれば柔らかくなるが、身体の位置は詰め物の沈み方で決まるため、座る姿勢は定まらない。ウームチェアは硬いシェルの側で曲面をつくり、その上に薄いフォームを載せる。姿勢を決めるのはシェルの形であり、クッションは当たりを和らげる役に回る。

シェルは円錐を深く切り取ったような形で、座面から背、肘掛けまで途切れない。正面に座る、横向きに丸くなる、脚を上げるといった複数の姿勢を、同じ面が受け止める。

肘掛けを窪ませる

肘掛けは床とほぼ平行に窪んでいる。腕を置くだけでなく、脚を預けることもできる。座面の幅と奥行が広く取られているため、脚を折り畳んで座ることもできる。

厚いシェルと細い脚

厚みのあるシェルを、細いスチールロッドの脚が支える。接地部が細いため、シェルの塊が床から浮いて見える。脚部の仕上げはクロムめっきとブラック塗装が用意される。オットマンを組み合わせる使い方も、発表当初から想定されていた。

エピソード

設計の発端は、ノルのフローレンス・ノルがサーリネンに出した注文にある。当時のラウンジチェアは細長く、一通りの座り方しか許さないものが多かった。丸くなってくつろげる椅子が欲しいという要望が、この形の出発点になった。

サーリネンは当初、成形合板でこの曲面をつくろうとしたが、必要な大きさでは強度が足りなかった。代わりに用いたのが、第二次世界大戦中に艇体用として開発が進んだファイバーグラス強化ポリエステル樹脂である。家具の量産に使った前例はなく、サーリネンとフローレンス・ノルはニュージャージー州で船体を扱う業者に製造を依頼した。フローレンス・ノルは後年、相手が当初きわめて懐疑的だったこと、満足のいくシェルができるまで多くの失敗を重ねたことを回想している。

評価と影響

シェルの形で姿勢を決めるという方法は、サーリネンがその後手がけたチューリップチェアにも引き継がれた。直線と直角で構成される同時代の家具に対し、身体の輪郭に沿う曲面を主題とした例として扱われる。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、1951年ミラノ・トリエンナーレのアメリカ館に出品された1946年制作の個体を収蔵番号447.1956.a-cで登録している(製造元からの寄贈。ファイバーグラス強化プラスチックのシェルにラテックスフォームを張り、クロムめっきのスチールロッドを脚とする。寸法92.7×101.6×86.4cm)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は本体をW.35-2008、オットマンをW.36-2008で登録している。シカゴ美術館も収蔵番号1973.356で登録している。

基本情報

名称 ウームチェア / Womb Chair
デザイナー エーロ・サーリネン(Eero Saarinen)
ブランド ノル(Knoll)
発表年 1948年(設計は1946年)
デザインの成立国 アメリカ
分類 ラウンジチェア
モデル番号 Model No. 70
主要素材 シェル:ファイバーグラス強化プラスチック/フォーム+ポリエステル繊維/張地:ファブリックまたはレザー/ベース:スチールロッド
構造 シェルの曲面で姿勢を決め、クッションは当たりを和らげる
脚部仕上げ クロムめっき/ブラック塗装
付属 オットマン
収蔵 ニューヨーク近代美術館(447.1956.a-c)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(W.35-2008、オットマン W.36-2008)、シカゴ美術館(1973.356)

Reference

Womb Chair | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/3639
Womb chair | Victoria and Albert Museum
https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=W.35-2008
Womb Chair | The Art Institute of Chicago
https://www.artic.edu/artworks/1973.356