概要

ルイーザは、フランコ・アルビーニが設計した木製の小型アームチェアである。1930年代末の試作から数えて五つの版があり、1955年にポッジ(Figli di Carlo Poggi)が生産した最終版が、同年のコンパッソ・ドーロを受けた。細い無垢材の枠に座面と背を載せ、力の集まる接合部だけ断面を太らせる構成をとる。ポッジでの型番はPT1。2008年にカッシーナが最終版を復刻し、型番832として生産を続けている。

特徴・コンセプト

架台状の側面と横材だけで組む

左右の側面は、脚と肘掛けが一枚の枠をつくる架台の形をとる。この二枚の枠を貫でつなぎ、上の一本が背を受け、中央に渡した二本が座を受ける。肘掛けにあたる上端の部材は後方へ片持ちで張り出し、背を受ける貫を介して反対側の枠と結ばれる。脚・肘掛け・背をそれぞれ別の部品として足していくのではなく、二枚の枠と数本の横材で全体を受けきる組み方である。

1955年のコンパッソ・ドーロの審査評は、脚と肘掛けと背もたれをつなぐ解き方の単純さ、材を接いだ部分の造形的なまとまり、そして仕口を見せたままにしている点を、受賞の理由として挙げている。

固定しない座

座を受ける二本の貫のうち、後ろの一本は座板の固定点になり、前の一本は固定されない。座は前の貫の上に載っているだけなので、体重がかかるとたわみ、荷重に応じてわずかに前後へ動く。ばねも厚い詰め物も持たない薄い座で、身体の動きに追従させるための納まりである。座面と背が枠から浮いて見える見え方も、この固定のしかたから生じている。

接合部に向かって太る断面

部材の断面は一定ではなく、接合部に近づくにつれて厚みを増す。力の集まるところにだけ材料を置き、それ以外は細く保つという考え方で、カッシーナはこれをアルビーニの「形における実質(substance in form)」として説明している。仕口を化粧材で覆わないため、どこで力を受け渡しているかが外から読み取れる。

枠と座で異なる素材

枠は無垢材である。ポッジが生産した版では、座と背に合板の板を用い、詰め物をして布を張った。枠が構造を受け持ち、座と背はその上に載る面として扱われるため、両者に別の素材をあてられる。

現行のカッシーナ製は、枠がアッシュ材(ナチュラル塗装またはブラック染色塗装)かアメリカンウォールナット材で、座と背はスティールフレームを内蔵したポリウレタンフォームの成形品に置き換わっている。張り地は布と革から選べる。カッシーナは、肘掛け前面の組み手継ぎと接合部に向かって厚みを増す部分の組み合わせが、同社の木工技術によって実現したものだと説明している。

エピソード

アルビーニがこの椅子に取りかかったのは1930年代末である。フランコ・アルビーニ財団の記録では、1939年の第一版に続いて1942年、1949年、1950年の版があり、1954年4月と1955年1月の図面による第五版で現在の形に至っている。1949年の版はノルが、1950年の版はレッコのスリカ(Slica)が生産した。同じ椅子を十五年にわたって描き直しながら、部材の断面と接合の納まりを詰めていったことになる。

ポッジとの協業は、それ以前に構想されていた設計を量産に載せるところから始まった。同社の記録によれば、この協業から生まれた最初の製品群は、1954年の第10回ミラノ・トリエンナーレの単体家具展で発表されている。ルイーザはPT1の型番で生産された。アルビーニは開発の経緯を記したノートに、素材の特性や技術的な解決が構成の表現力を高めるように努めた、と書き残している(ポッジ社の社史ページによる)。

1955年、この椅子は「ラ・リナシェンテ コンパッソ・ドーロ」を受けた。審査評は受賞の意図として、この椅子が提起する問題をイタリアの生産者と一般に示すことも挙げている。2008年、カッシーナが最終版を自社の製品として生産に戻した。

評価と影響

戦後イタリアの木製椅子のなかで、組み方をそのまま外観にした例として参照されてきた。コンパッソ・ドーロの審査評が、仕上がった形だけでなく、構造全体の構想にともなう生産上の問題を取り上げている点は、この椅子が当時どう受け止められたかを示している。1955年の版はポッジでの生産のあとカッシーナの復刻に引き継がれ、現在も同じ構成のまま流通している。

アルビーニの他の設計では、インフィニートやヴェリエーロ ブックケースにも構造を見せる姿勢が共通する。

受賞歴・収蔵

  • 1955年 ラ・リナシェンテ コンパッソ・ドーロ受賞。ADIの記録では、製造者はFigli di Carlo Poggi、部門は事務用の家具・付属品
  • ニューヨーク近代美術館(MoMA)収蔵。オブジェクト番号 195.1998。同館の記録では制作年1951年、素材は木と布、製造はポッジ、製造者からの寄贈

基本情報

名称 ルイーザ / Luisa(832 Luisa)
デザイナー フランコ・アルビーニ(Franco Albini)
ブランド ポッジ(Figli di Carlo Poggi)/カッシーナ(Cassina、2008年〜)
発表年 1955年(最終版)
デザインの成立国 イタリア
分類 アームチェア
型番 PT1(ポッジ)/832(カッシーナ)
主要素材 無垢材(アッシュ、アメリカンウォールナット)、ポリウレタンフォーム、張り地(現行生産)
サイズ 幅555 × 奥行555 × 高さ770 mm(現行生産)
座面高 460 mm
肘掛け高 635 mm
受賞 コンパッソ・ドーロ(1955年)

Reference

Luisa Chair with armrests by Franco Albini | Cassina
https://www.cassina.com/ww/en/products/luisa.html
Poltroncina「Luisa」| ADI Design Museum
https://www.adidesignmuseum.org/i-premiati/poltroncina-luisa/
STORIA | fabbricapoggi
https://www.fabbricapoggi.com/storia
Franco Albini. Luisa Armchair. 1951 | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/2484
Poltroncina Luisa | Fondazione Franco Albini
https://artsupp.com/it/artisti/franco-albini/poltroncinauisa
832 LUISA(ルイーザ アームチェア)| カッシーナ・イクスシー
https://www.cassina-ixc.jp/shop/g/gluisa/