概要

HAL RE ウッド(HAL RE Wood)は、ジャスパー・モリソンがヴィトラのために設計したシェルチェア「HAL」のうち、再生ポリプロピレンのシェルと無垢オークの脚を組み合わせた構成である。

形状はHALの木脚仕様と共通し、違いはシェルの原料にある。バージン樹脂ではなく、家庭から回収されたプラスチック廃棄物を再生した材料を用いる。ヴィトラは現行のファミリー構成において、木脚に樹脂シェルを組み合わせるモデルをこのHAL REウッドとして案内している。

特徴・コンセプト

再生ポリプロピレンという選択

シェルの原料は、ドイツの分別回収制度「イエローバッグ(Gelber Sack)」で集められた家庭由来のプラスチック廃棄物である。回収物の大半は使用済みの包装材が占める。工業工程から出る端材ではなく、一度消費者の手に渡った材料を選んでいる点に、この仕様の設計上の判断がある。回収されなければ焼却されていた材料を製品へ戻すという経路を選ぶためである。

再生材の使用により、通常の樹脂を用いる場合と比べて温室効果ガスの排出とエネルギー消費が抑えられる。シェルは製品寿命を終えた後、再び全量を再生できる。

再生材は組成が均一でないため、成形後の表面に細かな色の斑が現れる。これは製造上の欠点ではなく、原料の由来がそのまま外観に出た結果である。ホワイトは現時点で再生材では再現されておらず、技術的に可能になり次第の追加が予定されている。

シェルと脚をつなぐ接続部材

樹脂のシェルに木の丸脚を留めるには、両者の間に一枚の部材が要る。樹脂は木ねじの保持力に乏しく、木は成形品の曲面に沿わないためである。HALではこの部分をダイキャストアルミニウムの接続部材で処理し、シェル側は面で受け、脚側は差し込みで受ける。木脚仕様の接続部材はディムグレーのパウダーコートで仕上げられ、木部と樹脂のどちらとも競合しない色に収められている。

この構造により、シェルの側に木脚固有の造形を持たせずに済む。同じシェルをパイプ脚やキャスター付きの支柱へ載せ替えられるのは、境界がこの部材で規格化されているからである。

姿勢を固定しないシェル

シェルは背と座を継ぎ目なくつなぐ一体成形で、荷重に応じてわずかにしなる。ヴィトラはこの柔軟性について、正面を向いて座るだけでなく、横向きや背もたれをまたぐ姿勢にも対応すると説明している。食卓で隣を向いて話す、作業中に体の向きを変えるといった動作を、座り直しとして許容する設定である。

着色は原液着色で、表面塗装ではない。傷がついても地の色が現れないため、使用頻度の高い環境でも外観が保たれる。

木脚と付属部品

脚に用いるオークは、西ヨーロッパおよびポーランド産のヨーロッパナラ(Quercus robur)である。仕上げはナチュラルとダークの2種で、いずれもラッカー塗装が施される。脚は垂直ではなく外側へわずかに傾けて取り付けられ、接地点を座面の外周より広くとることで荷重が片側へ寄ったときの安定を確保する。

木脚仕様は積み重ねができない。丸脚が入れ子にならないためで、多数を収納する用途ではスタッキングに対応するパイプ脚やそり脚のモデルが選択肢になる。

グライドはシェル側の小部品と色を合わせる方式をとるが、木脚仕様では白の選択ができず、ベーシックダークのみとなる。標準はカーペット用で、硬質床にはフェルトグライドをオプションで選ぶ。座面には、再生可能なポリウレタンフォーム「V-Foam」を用いたクッションをねじ留めで追加できる。

エピソード

HALは2010年に発表された。共通のシェルに複数のベースを組み合わせるという構成そのものは、1950年代のチャールズ&レイ・イームズによるシェルチェアに由来する。ヴィトラはHALをその系譜に連なるモリソンの解釈として位置づけており、モリソンの側も目新しさを目指すのではなく、すでに機能している解決を実用の要求に沿って引き直すという姿勢をとってきた。ヴィトラの木脚仕様の製品ページには2010年と2014年が併記されており、木脚の構成は発表後の展開のなかで加わったものにあたる。

再生樹脂への移行は、ヴィトラが樹脂製品全体で進めてきた材料の切り替えの一環である。同社ではイームズ プラスチックチェアの生産が2024年1月に再生ポリプロピレンへ切り替わり、製品名にもREが加えられた。HALについても同じ経路をたどり、樹脂シェルの中心が再生材の仕様へ移っている。

大量に並べる用途への配慮も並行して進んだ。講堂や多目的室、研修室での使用を想定した構成では、スタッキング対応のベース、列連結金具、座席番号表示、収納用の台車が選べる。木脚仕様はこの系統には含まれず、住宅や少人数の会議室を受け持つ位置にある。

評価と影響

実務では、同一のシェルで脚だけを替えられる点が選定の理由になる。食卓には木脚、事務室にはキャスター付き、屋外にはパウダーコート仕様と選び分けながら、建物全体で椅子の見え方を揃えられる。

木脚仕様に限ると、積み重ねができない点が制約になる。来客時だけ使う椅子として収納する運用には向かない。一方で座面下に金属が見えないため、木の家具でまとめた室内では他の要素と衝突しにくい。

再生材の色斑は、均質な発色を求める用途では検討事項になる。複数脚を並べたときの見え方は事前に確認しておきたい。均質な発色とホワイトを要する場合は、バージン樹脂のシェルを用いるHAL ウッドが対応する。シリーズ全体の構成についてはHAL ファミリーを参照。

基本情報

商品名(日本語) HAL RE ウッド
商品名(英語) HAL RE Wood
デザイナー ジャスパー・モリソン / Jasper Morrison
設計年 2010年(HALシリーズ)
ブランド ヴィトラ / Vitra
カテゴリー チェア / ダイニングチェア
シートシェル 原液着色の再生ポリプロピレン(使用後100%再生可能)
再生材の由来 ドイツの分別回収制度「イエローバッグ」による家庭系プラスチック廃棄物
ベース 無垢オーク4本脚(ナチュラル / ダーク、ラッカー塗装)
接続部 ダイキャストアルミニウム(ディムグレーのパウダーコート)
木材の産地 ヨーロッパナラ(Quercus robur)/西ヨーロッパおよびポーランド
サイズ 幅 約475mm × 奥行 約510mm × 高さ 約795mm
座面高 約430mm
スタッキング 不可
グライド ベーシックダーク(木脚仕様では白の選択不可)。標準はカーペット用、硬質床用フェルトはオプション
オプション シートクッション(V-Foam、シェルにねじ留め)
色の制約 ホワイトは再生材では未対応
シリーズ HAL ファミリー

Reference