Karl Andersson & Söner(カール・アンデション&サナー)
Karl Andersson & Sönerは、1898年にスウェーデン南部の村ベリエムで指物師Karl Anderssonが始めた工房を起源とする家具メーカーである。現在はイェンシェーピング近郊の町フスクヴァルナに工場・事務所・展示室を置き、創業者の曾孫にあたる4代目が経営する。突板を張ったランバーコアを自社で製造し、それを収納家具と卓に組み上げる体制を保ってきたこと、1955年にBørge Mogensenの設計で始めたØresundシリーズを2019年まで生産し続けたことで知られる。
事業と製造の実体
同社は板材の製造から組立・出荷までを一つの工場で行う自社製造のメーカーである。工場はフスクヴァルナのローセンダーラ通り6番地にあり、2003年の増築以降はすべての製造がこの敷地に集約されている。製品の主材は木で、公式サイトは自社製の突板張りランバーコアと無垢材を主な構成材として挙げる。2000年以降は一部の製品に鋼材とコンパクトラミネートを取り入れ、2012年には鉱物系の人工素材HI-MACSを卓の天板に用い始めた。
木取りから板材の製造まで
製材は認証を受けた木材業者から仕入れ、含水率およそ8%まで乾燥させた状態で受け入れる。板は仕上がり寸法より約30mm長く切り、次に多数の鋸刃を並べた製材機で細い角材(ラメル)に挽き割る。この角材を四面同時に削って正確な寸法に揃え、並べて接着したものが天板や棚板の芯になる。芯材にはアルダーが用いられている。
突板の加工も自社で行う。厚さ約0.6mmの突板を長さと幅に裁ち、木目が左右対称になるよう継いでシート状にする。主にスライス切削の突板を使い、目立たない面にはロータリー切削のものを充てる。芯材の両面に厚さ3mmのMDFと突板を重ね、約100℃の熱と圧力を数分かけて一体に圧着したものが、同社が「突板張りランバーコア」と呼ぶ板材である。突板の裁断、ラメルの製造、板材の製造を外注せず社内に持つ点が、この工場の特徴になっている。
加工・塗装・組立
板材と部材はCNC加工機で切断・穴あけ・溝加工を行い、平面は3段階の番手を持つ幅広ベルト研磨機で、角や曲面は手作業で研磨する。塗装は下塗り、数時間の乾燥、手作業による塗膜の研ぎ、上塗りの順で、水性塗料と酸硬化型塗料を併用する。一晩乾燥させたのち、輸送容積が許す範囲で完成品に近い状態まで組み立て、受注内容との照合を経て梱包・出荷する。塗装前の部材は「白木の中間在庫」として保管され、受注ごとに引き当てられる。
認証と環境設備
木材の仕入先にはPEFC認証またはFSC認証の原材料を扱う業者が含まれると公表している。製品の一部は、スウェーデン環境研究所(IVL)と木材・家具業界団体(TMF)が共同で所有する、品質・環境・社会的責任の認証制度Möbelfaktaの認証を受けている。工場の電力は再生可能エネルギーで、2018年春には屋根に太陽光パネルを設置し、年間使用量の約1割を自家発電で賄う計画とした。
沿革
創業と法人化
創業者Karl Anderssonは、ストックホルムとイェンシェーピングで職人として働いたのち、フスクヴァルナとグレンナの間にある生家の村ベリエムに戻り、1898年に実家の一室を工房にして家具を作り始めた。手道具だけの小さな工房で、チェスト、寝台、長椅子、卓、椅子を注文に応じて作っていたと同社は伝えている。
Karl Anderssonには5人の息子と6人の娘がおり、息子のうち4人が順に事業に加わって、それぞれ担当分野を受け持った。1944年5月に株式会社AB Karl Andersson & Söner Möbelfabrikが設立され、工房から企業への移行が形式のうえでも完了する。同社史を典拠とするスウェーデン語版Wikipediaによれば、1940年代半ばにベリエムの工場が火災に遭い、救い出した機械を近隣の村シリンゲの工場に移す一方、物流を見込んでフスクヴァルナに工場を建てていたという。以後の製造拠点はフスクヴァルナに置かれた。
外部設計者の起用と板材製造の開始
1940年代の末、同社はCarl Malmstenの設計による家具シリーズVisingsöとVapensmedenを製品化した。1950年代にはデンマークの設計者に協働を打診し、Børge Mogensenが収納家具の設計を引き受けた。こうして1955年に生まれたのが卓・収納・椅子からなるØresundシリーズで、同社はこの製品化を機にランバーコアと突板の工業的な生産を始めたと記している。Øresundは2019年まで64年にわたり生産された。
創業者の末子Göran Malmvallは、Malmstenのもとで家具製図を学び、1982年まで同社で製品設計を担った。1972年に発表した収納家具シリーズKA72は、同社の製品のなかで現在も生産が続く古い系統にあたる。
技術移転と海外展開
1980年代初頭、スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)との協力で、スワジランド、タンザニア、ボツワナから来た十数名の家具職人にフスクヴァルナで訓練を施した。その数年後にはタンザニア南西部ムベヤの家具工場の立ち上げを支援し、機械の調達から操業開始まで6か月間現地に滞在している。1995年から1997年にかけてはチリ・サンティアゴの工場Muebles Surの職人を受け入れ、この工場はその後数年間、同社の製品シリーズの一部をライセンス生産した。1999年から2001年にはインドの家具業者からも研修生を受け入れている。
1998年の創業100周年には、イェンシェーピング県立博物館で同社の歴史展が開かれ、国王Carl XVI Gustafがフスクヴァルナの工場を訪れた。
素材の拡張と工場の集約
2000年、Ulla Christianssonの設計による卓のシリーズTrippoで、同社は初めて鋼材を製品に取り入れた。同時期にTony AlménとPeter Gestが鋼材の部品を組み込んだ収納2Kを開発している。木のみで構成してきた製品群に金属と積層材が加わったのはこの時期からである。見本市への出展もこの頃に本格化し、ストックホルム家具見本市には2000年から、ミラノサローネには2002年から毎年出展している。
2003年にフスクヴァルナの工場を増築し、それまで分かれていた製造をすべてこの敷地に集めた。2015年3月には組立・梱包・出荷の区画を再び拡張し、新しい積込場を設けている。2009年には壁掛けフックPiniwiniを皮切りに小物の系列「KA Small」を始め、2012年には卓Buffと棚CercoでHI-MACSの使用を開始した。
デザイナーとの協働
同社は社内に専任の設計部門を持たず、外部の設計者が持ち込む案を自社の製造担当者とともに量産可能な工程に落とし込む方式を採る。創業期から1980年代までは創業家のGöran Malmvallが設計の中心にあり、その外側にCarl MalmstenとBørge Mogensenという2人の外部設計者との協働が置かれていた。1990年代以降は、経歴の初期にある若手の設計者を積極的に起用する方針に転じ、公式サイトが掲げる協働相手は現在40名を超える。Anton Björsing、Roger Persson、Louise Hederström、Malin Lundmark、Dan Sunaga、Staffan Holm、Tobias Bernethらがこれにあたる。
Børge Mogensenの設計思想や経歴について詳しくはBørge Mogensenプロフィールページをご覧ください。
主な製品群
製品群の核は、自社製の板材を組み上げる収納家具と卓である。1955年のØresundシリーズはオーレスン棚を中心に卓と椅子を含む構成で、オークやチークを用いた。1972年のKA72はこれに続く収納の系統で、両者が20世紀後半の同社を代表する製品にあたる。
2000年以降の製品は、卓(折りたたみ卓、柱脚卓、伸長卓、ハイテーブル)、収納(チェスト、棚、メディアベンチ、キャビネット)、衣類掛け、雑誌架や掲示板などの展示什器、間仕切り、椅子・ベンチ・スツール・ソファの各系統に広がっている。Trippo(2000年)、Chamfer(2006年)、Thinner、Newton(いずれも2000年代末)といった卓と、Piniwiniに始まる小物の系列KA Smallが、この時期の展開を示す。近年は公共空間や執務空間向けの什器が製品群の中心を占める。
受賞
同社が公表する記録によれば、スウェーデン工芸デザイン協会の旧賞Utmärkt Svensk Formを、収納家具Hommage Josef Frank(1986年)、卓TemaとKvadrat i Kvadrat(1987年)、Prima Vista(1988年)、Kaskad(1993年)、Kazetti Office(1997年)、Trio(1999年)および座具シリーズKatell(1997年)で受けている。同協会の後継賞Design Sは2009年に卓Thinnerが受け、卓Newtonは2009年にNordiskt Designprisを受けた。Elle Interiör誌の「今年の家具」には、Brygga(2005年)、Chamfer(2006年)、Newton(2010年)が選ばれている。
現在の展開
現在の経営はKarl Anderssonの曾孫にあたるMaria Wadskog、Sara Wadskog、Andreas Wadskogが担う。製造会社AB Karl Andersson & Söner Möbelfabrikは、販売会社AB Karl Andersson & Söner Försäljningを親会社とする体制で、いずれもフスクヴァルナに置かれている。事業の重心は公共空間と執務空間向けのコントラクト家具にあり、住宅向けの製品も同じ工場で作られる。
自社の展示室はフスクヴァルナの工場に併設され、ストックホルム、ヨーテボリ、オスロ、パリの提携ショールームにも製品を置く。見本市の出展ブースは床や壁を自社で製作して再利用し、工場の従業員が設営と撤収を行う。製造から数十年を経た自社製品の再研磨・再塗装・張り替えを工場で引き受けており、廃棄ではなく修理に回すことを公式サイトで案内している。
基本情報
| 創業 | 1898年(株式会社設立は1944年) |
|---|---|
| 創業者 | Karl Andersson |
| 創業地 | スウェーデン・ベリエム(フスクヴァルナ近郊) |
| 本社・工場所在地 | スウェーデン・フスクヴァルナ |
| 法人名 | AB Karl Andersson & Söner Möbelfabrik |
| 事業内容 | 木製家具の設計・製造・販売 |
| 公式サイト | https://www.karl-andersson.se/ |
Reference
- Karl Andersson & Söner – Historia(公式サイト)
- https://www.karl-andersson.se/a.1667/om-ka/karl-andersson--soner/historia
- Karl Andersson & Söner – Tillverkning hos oss(公式サイト・製造工程)
- https://www.karl-andersson.se/a.1682/om-ka/karl-andersson--soner/tillverkning-hos-oss
- Karl Andersson & Söner – KA idag(公式サイト)
- https://www.karl-andersson.se/a.1668/om-ka/karl-andersson--soner/ka-idag
- Karl Andersson & Söner – Våra designers(公式サイト)
- https://www.karl-andersson.se/a.1671/om-ka/designer/vara-designers
- Karl Andersson & Söner – Möbelfakta / Solceller(公式サイト)
- https://www.karl-andersson.se/a.1854/om-ka/miljo-och-kvalitet/mobelfakta
- Historik(Möbelfakta)
- https://mobelfakta.se/om-mobelfakta/historik/
- Aktiebolaget Karl Andersson & Söner Möbelfabrik – 法人登記情報(allabolag.se)
- https://www.allabolag.se/foretag/aktiebolaget-karl-andersson-söner-möbelfabrik/huskvarna/möbler-produktion/2JYJHNYI63IJF
- Karl Andersson & Söner – スウェーデン語版Wikipedia
- https://sv.wikipedia.org/wiki/Karl_Andersson_&_Söner