チェアワン パブリック — 公共空間のための幾何学的シーティング
チェアワン パブリック(Chair_One Public Seating System)は、ドイツのインダストリアルデザイナー、コンスタンチン・グルチッチが手がけた公共空間向けシーティングシステムである。2004年に発表され世界的な反響を呼んだチェアワン(Chair_One)の造形を土台に、空港、美術館、駅舎、商業施設といったパブリックスペースでの使用に向けて展開されたバリエーションにあたる。三角形のフラットバーが交差するダイキャストアルミニウムの座面シェルは、単体のチェアワンと同一の造形を保ちながら、コンクリート製ベースとアルミニウム製コネクターバーによって連結されることで、堅牢なベンチシステムとして機能する。チェアワンの造形は発表から20年を経た現在も生産が続き、世界各地の公共施設で用いられている。
特徴・コンセプト
ダイキャストアルミニウムによる座面シェルは、サッカーボールを想起させる三次元的な幾何学構造を有し、強度が必要な箇所では格子が密に、荷重が少ない箇所では開放的に配置されている。この合理的かつ美的な構造原理は、グルチッチが4年に及ぶ開発期間において、紙模型、デジタルレンダリング、コンピュータシミュレーションを駆使して到達したものである。
システムとしては、System 1とSystem 2の二つのバリエーションが存在する。System 1はコンクリート製ベースを採用し、重量感と安定性をもって屋外設置にも対応する。System 2はダイキャストアルミニウム製ベースを採用し、床面への固定が可能である。いずれも3席、4席、5席の構成が選択でき、コンクリート製またはHPL製のミニテーブルをオプションとして組み込むことができる。座面カラーはホワイト、ブラックを基本とし、Kvadrat社ファブリックやレザーによるクッションも用意されている。
構造と素材の革新性
座面シェルには、フッ素化チタンのスパッタリング処理が施された後、ポリエステルパウダーによる塗装が行われる。この二重の表面処理により、アルミニウム合金の耐食性と耐候性が飛躍的に向上し、屋外での長期使用にも十分耐えうる品質が実現されている。コネクターバーには光沢仕上げの陽極酸化処理アルミニウムが用いられ、座面シェルとの質感の対比を生んでいる。さらに、難燃性能を備えており、公共空間に求められる安全基準にも適合する設計となっている。
エピソード
チェアワンの設計における最大の技術的挑戦は、座面シェルを単一のダイキャストアルミニウムとして成形する点にあった。家具製造においてダイキャスト自体は新しい技術ではないものの、これほどの規模と構造的な意図をもって用いられた例は稀であった。液状のアルミニウムを金型に注入するダイキャスト工程から着想を得て、三角形の要素を辺で接合し、空隙によって特徴づけられる幾何学的なシェルが生まれた。
単体チェアの発表後、グルチッチはその造形言語をさらに展開し、コンクリートの円錐ベースを持つアウトドアバージョン、そしてビーム上に連結されたパブリックシーティングシステムを開発した。コンクリートベースを備えたパブリックバージョンは、公共空間向けシーティングの新たな選択肢として注目を集め、世界各地の公共交通機関や文化施設で採用されている。
評価
チェアワンは、2000年代初頭のデザインにおいて、椅子に必要な構造を論理的に検証し、最小限の要素へと還元した作品として評価されている。シカゴ美術館は、1950〜60年代のハリー・ベルトイアやチャールズ&レイ・イームズによるワイヤーロッドチェアを想起させつつ、ダイキャストアルミニウムの原理を活用することで独自の質を獲得した作品と位置づけている。
パブリックシーティングシステムとしての評価も確固たるものであり、公共空間におけるデザインの可能性を拡張した先駆的事例として、世界中のランドスケープアーキテクトやインテリアデザイナーから支持を受けている。グルチッチ自身が述べるように、5分から20分程度の短時間着座を前提に設計されたその機能性は、空港のウェイティングエリアやミュージアムのロビーといった用途に適している。
基本情報
| 商品名(日本語) | チェアワン パブリック シーティングシステム 1 |
|---|---|
| 商品名(英語) | Chair_One Public Seating System 1 |
| デザイナー | Konstantin Grcic(コンスタンチン・グルチッチ / 1965年– / ドイツ) |
| デザイン年 | チェアワン(Chair_One): 2003年設計・2004年発表。パブリックシーティングシステムはその後の展開。 |
| ブランド | Magis S.p.A.(マジス / イタリア) |
| 製造国 | イタリア |
| カテゴリ | パブリックシーティングシステム / ガーデンファニチャー |
| 素材(座面) | ダイキャストアルミニウム(フッ素化チタン・スパッタリング処理+ポリエステルパウダー塗装) |
| 素材(コネクターバー) | 陽極酸化処理アルミニウム(光沢仕上げ) |
| 素材(ベース / System 1) | コンクリート(透明クリア塗装 / 床面固定対応) |
| 素材(ベース / System 2) | ダイキャストアルミニウム(ポリエステルパウダー塗装 / 床面固定対応) |
| サイズ(3席 / System 1) | L 190cm × H 80cm / 座面高 46.5cm / ベース直径 35cm |
| サイズ(4席 / System 1) | L 約265cm × H 80cm / 座面高 46.5cm |
| サイズ(5席 / System 1) | L 約335cm × H 80cm / 座面高 46.5cm |
| 構成バリエーション | 3席 / 4席 / 5席(各構成にミニテーブル追加可能) |
| 屋外使用 | 可 |
| 難燃性 | 難燃仕様 |
| オプション | クッション(屋内用:Kvadrat Tempo / Gloss 2 / レザー)、ミニテーブル(コンクリート製 / HPL製) |
| 参考価格(税込目安) | 3席+ミニテーブル+4席ベース構成:約442,200円〜(構成・仕様により異なる) |