ベルトイア ダイヤモンドチェアは、イタリア系アメリカ人の彫刻家ハリー・ベルトイアが1950年から1952年にかけてデザインした、ミッドセンチュリーモダンを代表する傑作ラウンジチェアである。スチールロッドを溶接して構成されたこの椅子は、家具というより彫刻作品としての性格を強く持ち、ベルトイア自身が「主に空気によって作られている」と表現したように、透明性と軽やかさを兼ね備えた革新的なデザインとして知られている。
1952年にKnoll(ノル)社から発表されたこのチェアは、即座に商業的成功を収め、以来70年以上にわたり世界中で愛され続けている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、クーパーヒューイット・スミソニアン・デザイン博物館など、世界の主要な美術館に収蔵されており、20世紀デザイン史における金字塔として確固たる地位を占めている。
特徴・コンセプト
ベルトイア ダイヤモンドチェアの最大の特徴は、その彫刻的な造形美にある。異なる長さのスチールロッドを三次元的に曲げ、ダイヤモンド型に溶接固定した構造は、金属造形と溶接技術に卓越した才能を持つベルトイアならではの造形である。座面と背もたれが一体となった格子状のフレームは、空間を透過させながら優雅な曲線を描き、周囲の環境と調和する。
ベルトイア自身は椅子について次のように語っている。「椅子においては、多くの機能的問題をまず満たさなければならない。しかし突き詰めれば、これらの椅子も空間、形態、金属の研究なのだ」。この言葉が示すように、ダイヤモンドチェアは実用性と芸術性の完璧な融合を実現している。
仕上げは磨かれたクローム、サテンクローム、あるいは耐久性に優れたリルサン(ビニールコーティング)が施されており、シートパッドのみのバージョンとフルカバーのバージョンが用意されている。リルサン仕上げとビニール製シートパッドの組み合わせは、屋外使用にも適している。ベルトイアが追求した「空気と金属の彫刻」というコンセプトは、軽量でありながら強固な構造を実現し、見る角度によって表情を変える流動的なフォルムとして結実した。
エピソード
ベルトイアとKnollの関係は、創造的な自由を尊重する理想的なコラボレーションとして知られている。1950年、ハンス・ノルとフローレンス・ノルはベルトイアをペンシルベニアに招き、Knollの工場内に専用の工房を設けた。重要なのは、彼らがベルトイアに家具のデザインを強要せず、自由に探求することを奨励したことである。「何か面白いものができたら見せてほしい」という姿勢が、ベルトイアの創造性を最大限に引き出した。
ベルトイアは後にこのプロセスを振り返り、次のように述べている。「すぐに気づいたのは、私はリサーチをする人間ではないということだった。私の感覚では、それは内側から来なければならなかった。自分自身の身体に再び頼ることにした。ロッドやワイヤー、曲げたものでも真っ直ぐなものでも、それに触れると我が家にいるような気がした」。
興味深いことに、ダイヤモンドチェアの開発には特許をめぐる紆余曲折があった。当初のデザインでは、座面の縁に2本の細いワイヤーを溶接する構造だったが、これがイームズ夫妻がハーマンミラー社のために開発したワイヤーチェアの特許と抵触した。訴訟の結果、ベルトイアとKnollはデザインを変更し、より太い1本のワイヤーを使用し、座面のワイヤーの端を滑らかな角度で研磨する方法を採用した。この変更により生まれた仕様が、現在まで継続して生産されているダイヤモンドチェアの姿である。
ベルトイアのダイヤモンドチェアは商業的に大成功を収め、それによって得た収入により、彼は1950年代半ば以降、本来の情熱であった彫刻制作に専念することができた。Knollのための家具デザインは一つのコレクションに留まったが、その後25年間にわたり、光、音、空間を探求する50以上の彫刻作品を制作し、サウンドアーティストとしても高い評価を得た。
評価
ベルトイア ダイヤモンドチェアは、発表以来一貫して20世紀デザインの最高傑作の一つとして評価されている。エーロ・サーリネンやミース・ファン・デル・ローエと同様に、ベルトイアは工業用素材に崇高な優美さを見出し、通常の実用性を超えて芸術作品の域に昇華させた。
このチェアは、ミッドセンチュリーモダンデザインにおける金属の革新的使用の象徴として、デザイン史に重要な足跡を残した。特に、構造材料としての金属ロッドの可能性を極限まで追求した点で、後続のデザイナーに多大な影響を与えた。実際、ウォーレン・プラットナーは、ベルトイアのダイヤモンドチェアの三次元曲面デザインから着想を得て、自身のプラットナーチェアを開発したことを公言している。
Knollの歴史家ブライアン・ラッツは、ベルトイアについて次のように評している。「ベルトイアの絵画は彼の彫刻よりも優れていた。そして彼の彫刻は彼の家具よりも優れていた。そして彼の家具は絶対的に素晴らしかった」。この言葉は、多才な芸術家としてのベルトイアの卓越性と、その中でもダイヤモンドチェアが持つ特別な価値を端的に表している。
2015年には、ベルトイア生誕100周年を記念して、Knollは18金メッキ仕上げのダイヤモンドチェアを限定発表し、このデザインの永続的な魅力を再確認した。1952年の発表以来、世界中で途切れることなく生産され続けているという事実こそが、このチェアの普遍的な価値を何よりも雄弁に物語っている。
受賞歴
- Designer of the Year, USA(1955年)
- Certificate of Merit, American Institute of Architects(アメリカ建築家協会功労証)
- Design Center Stuttgart Award, Germany(1962年)
- AIA Gold Medal(アメリカ建築家協会金メダル)
基本情報
| デザイナー | ハリー・ベルトイア(Harry Bertoia) |
|---|---|
| ブランド | Knoll(ノル) |
| デザイン年 | 1950-1952年 |
| 製造開始年 | 1952年(生産は1953年) |
| 分類 | ラウンジチェア |
| 素材 | 溶接スチールロッド、ウレタンフォーム、ファブリックまたはレザー張地 |
| 仕上げ | ポリッシュクローム、サテンクローム、18金メッキ、リルサン(ブラック、ホワイト) |
| 寸法(スモールダイヤモンドチェア) | 幅85cm × 奥行75cm × 高さ75cm(座面高46cm) |
| 寸法(ラージダイヤモンドチェア) | 幅114cm × 奥行82cm × 高さ71cm(座面高41cm) |
| 所蔵機関 | ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館、クーパーヒューイット・スミソニアン・デザイン博物館、RISD Museum、他多数 |
| 生産状況 | 1952年より現在まで継続生産 |