概要
ハリー・ベルトイア(1915-1978)は、イタリア生まれでアメリカで活動した彫刻家・デザイナーである。1952年にノルのために発表した一連の椅子は、鋼線を溶接した格子で座面と背をつくる。面を線の集合に置き換えることで、向こう側が透ける構成になる。家具の設計は数年に限られ、以後は彫刻の制作を主とした。
バイオグラフィー
1915年3月10日、イタリアのサン・ロレンツォに生まれた。15歳のときにアメリカへ渡り、デトロイトで学んでいる。
1937年からミシガン州のクランブルック美術学院で学び、のちに金工の工房を担当した。チャールズ・イームズ、レイ・イームズ、エーロ・サーリネンと同時期にあたる。
1943年からカリフォルニアでイームズ・オフィスに加わり、成形合板の実験に関わった。1946年に離れている。
1950年、ハンスとフローレンス・ノルの招きでペンシルベニア州へ移り、家具の設計に取り組んだ。1952年に一連の椅子を発表したのち、彫刻の制作を主としている。1978年11月6日に没した。
デザインの思想と方法
ベルトイアは金工の訓練を受けており、金属を扱う技術が設計の前提にある。彼が扱ったのは、面ではなく線で身体を支えられるかという問題である。線材を格子に組めば、面と同じように荷重を受けられる。
線の格子で面を代替する
ダイヤモンドチェアは、鋼線を格子に溶接して座面と背をつくる。線と線の間が空いているため、向こう側が透ける。同じ形を板で作れば体積が生じるが、線材なら空間を塞がない。
格子の密度で強度を配る
荷重の集中する位置では線の間隔を詰め、そうでない位置では広げる。密度の変化が強度の配分になり、同時に見た目の濃淡も生む。
曲面を線材で構成する
平らな格子を三次元の曲面に成形するには、線を一本ずつ曲げて位置を合わせる必要がある。溶接箇所は多数にのぼり、治具を要する。手間はかかるが、詰め物なしで身体に沿う面が得られる。
彫刻と家具を同じ材料で扱う
1952年以降は彫刻の制作を主とした。金属の棒や板を溶接して構成する点は家具と共通し、用途を持たない対象へ移ったことになる。音を発する彫刻も制作している。
ノルの歴史や他の製品について詳しくはノル ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ダイヤモンドチェア(1952年、ノル)
鋼線を格子に溶接して座面と背をつくった椅子である。線と線の間が空いているため向こう側が透ける。荷重の集中する位置では線の間隔を詰め、密度の変化が強度の配分になる。ニューヨーク近代美術館、V&A、メトロポリタン美術館、シカゴ美術館が収蔵している。→ベルトイア ダイヤモンドチェア
サイドチェア(1952年、ノル)
ダイヤモンドチェアより小型で、肘掛けを持たない椅子である。同じ格子の構成をとり、積み重ねもできる。ニューヨーク近代美術館とシカゴ美術館が収蔵している。→ベルトイア サイドチェア
バードチェア&オットマン(1952年、ノル)
背の高い椅子とオットマンの組である。名称は鳥が翼を広げた形に由来する。シカゴ美術館が収蔵している(収蔵番号2017.424a-b)。
屋外用ダイヤモンドチェア
同じ構成に耐候性の被覆を施した仕様である。線材のため水が溜まらず、屋外に適する。→ベルトイア アウトドア ダイヤモンド チェア
彫刻(1950年代〜)
金属の棒や板を溶接して構成した彫刻を制作した。家具と同じ材料と技術を用いながら、用途を持たない対象へ移っている。音を発する彫刻も制作した。
評価と影響
ベルトイアは一般に、線材の格子で面を代替するという構成を家具に持ち込んだ設計者と評価されている。金工の訓練を受けた経歴が、その方法の前提にある。
クランブルック美術学院でチャールズ・イームズらと同時期を過ごし、1943年からはイームズ・オフィスにも加わった。1940年代のアメリカの家具設計の一部に位置づけられる。
家具の設計は1950年から1952年の数年に限られ、以後は彫刻の制作を主とした。1952年の一連の椅子は現在も生産が続いている。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、彫刻と絵画を含めて計30件が確認できた。以下は家具に関するものを中心とした抜粋である。
- MoMA アームチェア(1952年) 収蔵番号 551.1953、268.1958
- MoMA サイドチェア(1952年) 収蔵番号 449.1956.a-b
- MoMA グライダー先端部の習作(1943年) 収蔵番号 103.1989
- V&A ダイヤモンドチェア(1952年) 収蔵番号 CIRC.82-1969
- V&A 椅子(1951年) 収蔵番号 W.47-1983、CIRC.88&A-1969
- Met ダイヤモンドチェア(1952年) 収蔵番号 1984.542.1
- Met アームチェア(1952年) 収蔵番号 1993.294.1
- Met オットマン(1952年) 収蔵番号 1993.294.2
- Met 椅子の試作(1940年頃) 収蔵番号 2016.669
- AIC スモール・ダイヤモンドチェア(1952年) 収蔵番号 1976.400
- AIC サイドチェア(1952年設計) 収蔵番号 1984.1390
- AIC オットマン(1952年設計) 収蔵番号 1977.520
- AIC バードチェア&オットマン(1952年設計) 収蔵番号 2017.424a-b
- AIC アームチェア(1967年) 収蔵番号 1986.38
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1952年 | 椅子 | ベルトイア ダイヤモンドチェア | Knoll |
| 1952年 | 椅子 | ベルトイア サイドチェア | Knoll |
| 1952年 | 椅子 | バードチェア&オットマン | Knoll |
| 1952年〜 | 椅子 | ベルトイア アウトドア ダイヤモンド チェア | Knoll |
| 1940年代 | 絵画 | 抽象絵画 | — |
| 1950年代〜 | 彫刻 | 金属による彫刻、音を発する彫刻 | — |
プロフィール
| 生没年 | 1915年3月10日〜1978年11月6日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・サン・ロレンツォ |
| 国籍 | イタリア(のちアメリカ) |
| 活動拠点 | ペンシルベニア州バーレイヴィル |
| 分野 | 家具、彫刻、金工 |
| 主な協働ブランド | Knoll |
Reference
- Harry Bertoia | Knoll
- https://www.knoll.com/designer/Harry-Bertoia
- Harry Bertoia Foundation
- https://harrybertoia.org/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection