ベルトイア サイドチェアは、イタリア出身の彫刻家であり家具デザイナーであるハリー・ベルトイアが1952年にデザインした、ミッドセンチュリーモダンデザインを代表する椅子である。溶接されたスチールロッドによって構成された格子状の構造は、工業素材に崇高な優雅さを見出したベルトイアの卓越した美学を体現している。この椅子は、その繊細な外観とは裏腹に高い強度と耐久性を備え、彫刻作品としての芸術性と実用的な家具としての機能性を高次元で融合させた傑作として、今日まで世界中で高い評価を受け続けている。

特徴・コンセプト

ベルトイア サイドチェアの最大の特徴は、曲げ加工されたスチールロッドを溶接して形成された格子状のシェル構造にある。ベルトイアは彫刻家としての視点から、「椅子は主に空気でできている。空間がそのまま通り抜けていく」と述べており、この言葉は椅子の軽やかで透明感のある造形に見事に表現されている。シート部とバック部は一体成形された格子状のワイヤーメッシュで構成され、座る人の体重に応じて柔軟にたわむことで、独特の座り心地を実現している。

デザインプロセスにおいて、ベルトイアは「自分自身の身体に頼り始めた。自分が椅子として何を求めるかを考え始めた」と語っている。彼は数多くの試作を手作業で行い、ロッドやワイヤーの曲げ方、形状の可能性、そして素材が持つ本質的な特性を探求した。その結果生まれたのは、空間、形態、そして金属の特性に関する彫刻的研究としての椅子であった。機能的な問題を解決しながらも、根本的には彫刻作品としての性格を持つこのチェアは、ベルトイアの芸術家としての才能と家具デザイナーとしての実践的知識が見事に結実した作品である。

フレームは溶接スチール構造で、クロームメッキ仕上げまたはリルサン(耐候性に優れたナイロンコーティング)仕上げが施されている。シートパッドはオプションで追加でき、ドーム型の金属製スナップで椅子に固定される。座面の高さは約46センチメートル、全体の寸法は幅約54センチメートル、奥行約58センチメートル、高さ約73センチメートルと、人間工学的に最適化された設計となっている。

エピソード

ベルトイア サイドチェアの誕生には、Knoll社の創業者であるハンス・ノールとフローレンス・ノールの寛容な姿勢が大きく寄与している。1950年、夫妻はベルトイアに対して、家具をデザインすることを強要せず、彼が興味を持つことを自由に探求するよう奨励した。フローレンス・ノールは後に「当時のデザイナーの中で彼を際立たせていた創造性を妨げないように、完全な自由の中で彼を働かせることに決めた」と回想している。この自由な環境が、ベルトイアに芸術的概念を家具デザインに応用する機会を与え、傑作の誕生を可能にしたのである。

ベルトイアは完璧を追求し続け、手作業で多くのバリエーションを試みながら、軽やかで風通しの良い構造で空間を形作ることを目指した。その芸術的とも言えるプロセスを通じて、サイドチェアやスツールからダイヤモンドチェア、ラージダイヤモンドアームチェア、そしてラウンジモデルであるバードチェアに至るまで、それぞれ特定の機能を持つ複数の椅子が生み出された。これらはいずれも自然で彫刻的な形態を備えており、ベルトイアコレクションとして1952年に発表された。

興味深いことに、ベルトイアはクランブルック芸術アカデミーでチャールズ・イームズと共に働き、イームズの成型合板チェアの開発を手伝った経験を持つ。この時期、ベルトイアはワイヤーグリッド構造のコンセプトについて図面を作成しており、イームズが1950年にハーマンミラー社から発表したワイヤーチェアとベルトイアの1952年の作品との間には、類似した発想の系譜が認められる。しかしながら、ベルトイアのチェアは独自の美学と構造的洗練を備えた独立した傑作として評価されている。

評価

ベルトイア サイドチェアは、発表当初から批評家と一般の双方から高い評価を受けた。ミース・ファン・デル・ローエやエーロ・サーリネンと並び、ベルトイアは工業素材に崇高な優雅さを見出し、それを通常の実用性を超えた芸術作品へと昇華させたデザイナーとして認識されている。このチェアは、ミッドセンチュリーモダンデザインの最も著名な成果の一つとして、あらゆる室内空間、あらゆる装飾様式に調和する普遍的なデザインとして広く認められている。

1956年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は本作品を購入基金によって永久コレクションに加えた。この収蔵は、ベルトイア サイドチェアが単なる商業製品ではなく、20世紀デザイン史における重要な文化的遺産として認識されたことを意味する。MoMAのコレクションにおいて、本作品はビニールコーティングされたスチールワイヤー、黒色酸化処理されたスチールロッドベース、そしてナウガハイド製シートパッドで構成された初期のバージョンが収蔵されている。

1952年の発表以来、ベルトイア サイドチェアはKnoll社によって継続的に生産されており、これは本作品の普遍的な魅力と商業的成功を証明している。チェアから得られるロイヤリティによって、ベルトイアは1950年代初頭から金属彫刻の制作に専念することができ、彼の真の情熱であった彫刻芸術の追求を可能にした。この意味において、ベルトイア サイドチェアは、デザイナーの芸術的キャリアを支えた重要な作品でもある。

受賞歴

ハリー・ベルトイアは1955年に「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、若手デザイナーとして頭角を現した。また、アメリカ建築家協会(AIA)から職人技メダル、そしてAIAゴールドメダルを授与されており、建築とデザインの分野における彼の卓越した貢献が認められている。1962年にはドイツのデザインセンター・シュトゥットガルトからメリット証明書を受賞するなど、国際的な評価も獲得している。これらの栄誉は、ベルトイアが家具デザインの分野において、工業素材を芸術的表現の媒体へと変革した先駆者として認識されていることを示している。

基本情報

デザイナー ハリー・ベルトイア(Harry Bertoia)
デザイン年 1952年
ブランド Knoll International
分類 サイドチェア / ダイニングチェア
材質 溶接スチールロッド(クロームメッキまたはリルサン仕上げ)、オプションでシートパッド
サイズ 幅約54cm × 奥行約58cm × 高さ約73cm / 座面高約46cm
生産状況 1952年より継続生産中
所蔵 ニューヨーク近代美術館(MoMA)永久コレクション