Arteluce(アルテルーチェ)

Arteluceは、1939年2月にミラノで設立された照明器具のメーカーである。設計から製造、販売までを自社で行い、器具の大半は創業者のGino Sarfattiが手がけた。1949年に市内へ設けた工場が、会社が存続した期間を通じて唯一の生産拠点にあたる。店頭で売るカタログ製品と並行して、客船や劇場、美術館の照明を請け負う特注の仕事を続けた。1973年12月、Sarfattiは会社と自身の設計に関する権利をFlosへ譲渡し、企業としての活動を終えている。

事業と製造の実体

Arteluceは自社の工場で器具を組み立て、自社の店舗で売る体制を取った。工場はミラノのヴィア・プリヴァータ・ベッリンツォーナ48番地に置かれ、1949年の開設から譲渡まで唯一の生産拠点だった。2012年のミラノ・トリエンナーレによる回顧展の資料は、開設時の床面積を約400平方メートル、1962年からの改修と1968年の増床を経た規模を約800平方メートル、従業員数を最も多い時期で約35人としている。

この規模の工場から出た型番は、1938年から1973年までにおよそ700にのぼる。ロンバルディア州の文書館は、その大半をSarfatti自身が設計したと記録している。

製品には名前を付けず、設置の形式ごとに区切った通し番号で呼んだ。0番台は反射器と特殊な壁付け器具、100番台は壁付け、500番台は卓上、1000番台は床置き、2000番台は吊り下げ、3000番台は天井直付けにあてられている。モデル1063やモデル2097といった呼称はこの規則によるもので、番号を見れば設置方法が判別できる。

材料は塗装した鋼板、アルミニウム、真鍮、クロムめっきを施した鋼管が中心で、台座には大理石や鋳鉄が使われた。1950年前後にはメタクリル樹脂の板を拡散板に用いる器具が現れ、ガラスより軽く割れにくい材料として吊り下げ型に展開した。回顧展の資料は、同社の仕事の中心に新しい光源をめぐる実験があったと整理している。

出荷の形も製品によって異なった。1955年の型番1055/Sは分解した状態で箱に収めて売るノックダウン方式で、型番に付いたSは箱を意味するscatolaの頭文字にあたる。

沿革

設立とミラノの店

Gino Sarfattiは1930年代半ばからミラノで照明の仕事に関わり、Lumen社との協働と自身の工房を経て、1939年2月にS.A. Arteluceを設立した。設立にはミラノの実業界の数人と建築家Maurizio Tempestiniが加わり、会長はPopi Bolchini、Sarfattiは支配人の立場に就いた。同じ年、コルソ・リットリオ(現在のコルソ・マッテオッティ)12番地に販売店を借り、1962年までこの場所を使っている。1941年11月には会社の形態を合資会社に改め、Sarfatti個人が無限責任を負う構成になった。

ニューヨーク近代美術館の作家記録は創業を1936年としているが、会社としてのArteluceの設立は1939年2月である。

戦時の疎開と再開

ミラノへの空襲が始まると、生産設備と家族はブリアンツァへ移された。人種法による迫害を避けるためにSarfattiはスイスへ逃れ、ルガーノ近郊で終戦を迎える。この間、会社は代理人に委ねられて限られた範囲で操業を続けた。1945年にミラノへ戻ったSarfattiは、市外れのヴィア・チェゼーナで、住居の階下に改装した部屋と差し掛け屋根の下の空間を使って事業を立て直している。

工場の設置と販路の拡大

1949年、妻の実家から出た資金でヴィア・ベッリンツォーナの工場が建てられた。同じ時期に客船コンテ・ビアンカマーノ向けの納入があり、店頭販売に加えて輸出と大型の受注が事業の柱に加わる。1950年にSarfattiは米国を訪れ、照明メーカーLightolierとの関係を深めた。不在の間、製品の意匠上の方針は建築家Vittoriano Viganòに委ねられている。

店舗の改装と移転

1953年、コルソ・マッテオッティの店舗がMarco ZanusoとAlbe Steinerの手で改装された。昼は店全体が外から見える構成とし、夜はブラインドで区切った窪みに器具を一台ずつ収める見せ方が取られている。1962年には家主の都合でこの場所を引き払い、ヴィア・デッラ・スピーガ23番地にViganòの設計で新しい店を開いた。工場も同じ年から改修に入り、1968年に増床している。

大型受注と事業の終了

1964年、長男のRiccardo Sarfattiが会社に加わり、のちに生産と大口の受注を担当した。同じ年、客船ミケランジェロとラファエロ向けの納入が完了している。1972年にはCarlo Mollinoの設計で改修されたトリノ王立劇場の照明を手がけ、大ホールに吊る「ヌーヴォラ(雲)」と呼ばれる装置を設計・製作した。1973年12月、Sarfattiは会社と自身の設計に関する権利をFlosへ譲渡した。

譲渡後のブランド

Flosの傘下でもArteluceの名は使われ、1970年代末から1980年代にかけてPerry King、Santiago Miranda、Gianluigi Arnaldiらの設計が同じ名前で生産された。1996年にFlosの経営を継いだPiero Gandiniは、当時のArteluce名の製品群がFlosの方向と異なっていたとして、ブランドを閉じたと述べている。2012年にミラノ・トリエンナーレでSarfattiの回顧展が開かれたのち、2013年にFlosが設計5点の生産を再開し、その後はSarfattiの孫が率いるAstepとの共同の枠組みでも扱われている。

デザイナーとの協働

設計の中心は一貫して創業者にあり、器具の大半は社内で設計された。これと並行して、外部の建築家・デザイナーの設計を製造・販売する枠組みを持っていた。Franco AlbiniとFranca Helg、Sergio Asti、BBPR、Cini Boeri、Gianfranco Frattini、Vittorio Gregotti・Ludovico Meneghetti・Giotto Stoppinoの共同設計、Vito Latis、Ico Parisi、Vittoriano Viganò、Massimo Vignelli、Paolo Rizzattoらの製品が同社から出ている。

1953年の改装後、コルソ・マッテオッティの店は照明を論じる場として建築家が集まる場所になり、ここでの関係が設計の依頼につながった。1950年のSarfattiの渡米中には、Viganòが意匠上の方針を預かっている。

主な製品群

製品は壁付け、卓上、床置き、吊り下げの各系列を並行して広げる形で増えた。壁付けのモデル238/1は球形の光源を支持部材だけで保持する構成で、床置きのモデル1063は1954年、吊り下げのモデル2097は1958年、卓上のモデル600Pは1966年の設計にあたる。ひとつの設計から灯数や寸法の異なる型を出す場合は、2097/30や238/1のように番号へ枝番を付けて区別した。

特注の仕事は客船のほか、ジェノヴァのパラッツォ・ビアンコ、ミラノのカステッロ・スフォルツェスコの美術館、ミラノのピッコロ・テアトロなど、展示と舞台の照明に及んだ。既製の型番と特注の設計が同じ工場で並行して進む形が続いている。

受賞・収蔵

1954年11月の第10回ミラノ・トリエンナーレで、型番1063と1065がグランプリを受けた。同じ年に始まったコンパッソ・ドーロの第1回では型番559に対してArteluceが表彰され、翌1955年には型番1055が同じ賞を受けている。1973年の第15回トリエンナーレでは金メダルを受けた。

ニューヨーク近代美術館は、Arteluce S.A.名義の卓上照明2点(型番594、収蔵番号234.1965/型番585、収蔵番号235.1965)と、Gino Sarfatti名義の器具(型番1063、収蔵番号264.1958/型番600P、収蔵番号2242.1967/型番571、収蔵番号873.2007/型番566、収蔵番号874.2007)を収蔵する。

基本情報

ブランド名 Arteluce(アルテルーチェ)
設立 1939年2月
創業者 Gino Sarfatti(設立時の会長はPopi Bolchini、Sarfattiは支配人)
創業地 イタリア・ミラノ
生産拠点 ミラノ・ヴィア・プリヴァータ・ベッリンツォーナ48番地(1949年–1973年)
事業内容 照明器具の設計、製造および販売
現況 1973年にFlosへ譲渡。Arteluce名の製品は1990年代に終了

Reference

Flos - Lamps by Gino Sarfatti
https://flos.com/en/us/designers/gino-sarfatti.html
Flos - The history of Flos, since 1962
https://flos.com/en/us/about-us-heritage.html
Triennale Design Museum - Gino Sarfatti. Il design della luce(展覧会資料)
https://www.1fmediaproject.net/2012/09/20/gino-sarfatti-il-design-della-luce-triennale-design-museum-milan/
ADI Design Museum - Lampada da tavolo cilindrica a schermo regolabile 559
https://www.adidesignmuseum.org/schede/lampada-da-tavolo-mod-559/
Lombardia Archivi - Sarfatti, Gino
https://lombardiarchivi.servizirl.it/creators/3816
The Museum of Modern Art - Arteluce S.A., Milan. Table Lamp (model 594), 1962
https://www.moma.org/collection/works/2906
The Museum of Modern Art - Gino Sarfatti. Lamp (model 600P), 1966
https://www.moma.org/collection/works/4758
Wallpaper - Full circuit: Flos and Astep turn the lights back on for Gino Sarfatti
https://www.wallpaper.com/design/flos-and-astep-turn-the-lights-back-on-for-gino-sarfatti