概要

ジーノ・サルファッティ(1912-1985)は、イタリアの照明デザイナーである。1939年にミラノでアルテルーチェを設立し、設計と製造の両方を自社で行う体制をとった。生涯に700点を超える照明を手がけ、そのほとんどが同社の製品にあたる。電球の性能と配線の条件から構成を決める進め方をとり、モデル2097、モデル1063がよく知られる。

バイオグラフィー

1912年9月16日、ヴェネツィアにユダヤ系の家庭に生まれた。ジェノヴァ大学で航空工学を学んでいたが、家業の傾きにより1935年に中断している。

1939年、ミラノでアルテルーチェを設立した。当初は照明の受注生産を行い、やがて自社製品として量産する体制に移っている。設計から製造、販売までを一社で担う形をとった。

第二次世界大戦中は人種法を逃れてスイスへ移り、戦後にミラノへ戻って事業を再開した。1950年代から60年代にかけて、同社の製品は数を増やしている。

1973年、アルテルーチェをフロスに売却した。以後は設計から退いている。1985年に没した。同社の製品はフロスとアステップが再生産している。

デザインの思想と方法

サルファッティが出発点に置いたのは、その時点で入手できる電球の性能である。光源の大きさ、発熱、必要な電圧が決まれば、それを支える構成と配線の経路も決まる。装飾を加える余地はほとんど残らない。

電球を隠さない

笠で光源を覆うのが照明の通例だが、サルファッティは電球を露出させる構成も用いた。モデル2097では、放射状に伸ばした腕の先に電球をそのまま取り付ける。電球の形と数が、そのまま器具の外観になる。

配線を構成に組み込む

電球を露出させると、配線をどう通すかが問題になる。モデル2097では、腕に沿ってコードを垂らし、隠さずに見せる。配線を消すのではなく、構成の一部として扱うという判断にあたる。

釣り合いで支持する

モデル1063では、細い管を床から立ち上げ、内部に蛍光管を収める。台座は管の重さと釣り合う重量に設計され、追加の支持を持たない。構造上必要な条件だけで形が決まっている。

自社で作るから試せる

設計と製造を同じ会社で行うため、試作と修正を短い周期で繰り返せる。700点を超える製品数は、この体制によるところが大きい。外部の工場に委ねる場合には成立しにくい進め方である。

代表作にみる方法

モデル1063(1954年)

細い管を床から立ち上げ、内部に蛍光管を収めた床置き照明である。台座は管と釣り合う重量に設計され、支柱以外の部材を持たない。当時としては珍しく蛍光管を家庭用の照明に用いた例にあたる。ニューヨーク近代美術館が1958年に収蔵している(収蔵番号264.1958)。→モデル1063

モデル2097(1958年)

中央の支柱から腕を放射状に伸ばし、その先に電球を直接取り付ける吊り照明である。笠を持たないため、電球の形と数がそのまま外観を決める。配線は腕に沿って垂らし、隠さない。腕の本数によって30灯、50灯といった型が用意される。→モデル2097

モデル600P(1966年)

半球形の台座に球形のシェードを載せた卓上灯である。シェードは台座の上を転がるように動き、光の向きを変えられる。留め具や関節を持たず、二つの曲面の接触だけで位置が決まる。ニューヨーク近代美術館とシカゴ美術館が収蔵している。

モデル238/1

壁付けの照明で、腕の角度を変えて光の向きを調整できる。可動部は最小限に抑えられ、部品点数が少ない。アステップが再生産している。→モデル238/1

アルテルーチェの製品群(1939-1973年)

700点を超える製品のほとんどが同社から発表された。壁灯、卓上灯、床置き、吊り下げと種類は広く、いずれも当時入手できた光源の条件から構成が決まっている。1973年にフロスへ売却された。

評価と影響

サルファッティは一般に、20世紀の照明設計において最も多くの製品を残した設計者の一人と評価されている。700点を超える製品数は、設計と製造を一社で行う体制によるところが大きい。

電球を隠さず、配線を構成に組み込むという方向は、以後の照明にも見られる。アキッレ・カスティリオーニらと同じ時期に、ミラノで照明の設計が集中的に進んだ状況の一部にあたる。

アルテルーチェは1973年にフロスへ売却された。現在、フロスとアステップが主要な設計を再生産している。

受賞・収蔵

受賞

  • 1954年 コンパッソ・ドーロ賞
  • 1955年 コンパッソ・ドーロ賞

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、AIC=シカゴ美術館)。

  • MoMA ウォールライト(1950年頃) 収蔵番号 1430.2000
  • MoMA フロアランプ モデル1063(1954年) 収蔵番号 264.1958
  • MoMA テーブルランプ モデル571(1955年頃) 収蔵番号 873.2007
  • MoMA テーブルランプ モデル566(1956年頃) 収蔵番号 874.2007
  • MoMA ランプ モデル600P(1966年) 収蔵番号 2242.1967
  • V&A デスクランプ(1977年頃) 収蔵番号 M.130-1978
  • AIC テーブルランプ モデル600P(1966年) 収蔵番号 2016.201

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1950年頃 照明 ウォールライト Arteluce
1954年 照明 モデル1063 Arteluce / Flos
1955年頃 照明 モデル571 Arteluce
1956年頃 照明 モデル566 Arteluce
1958年 照明 モデル2097 Arteluce / Flos
1966年 照明 モデル600P Arteluce
1970年代 照明 デスクランプ Arteluce
照明 モデル238/1 Astep

プロフィール

生没年 1912年9月16日〜1985年
出身地 イタリア・ヴェネツィア
国籍 イタリア
活動拠点 ミラノ
分野 照明
主な協働ブランド Arteluce、Flos、Astep

Reference

Gino Sarfatti | Flos
https://flos.com/designers/gino-sarfatti/
Gino Sarfatti | Astep
https://astep.design/designers/gino-sarfatti
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Art Institute of Chicago Collection
https://www.artic.edu/collection