FLOS(フロス)

FLOS(フロス)は、1962年にイタリア・メラーノで設立された照明ブランドです。実業家のディーノ・ガヴィーナとチェザレ・カッシーナが創設し、アキッレ・カスティリオーニとピエル・ジャコモ・カスティリオーニ兄弟、アフラ&トビア・スカルパらがデザインを手がけました。半世紀以上にわたり、照明を実用品であると同時に空間を構成する要素としてとらえる製品づくりを続けています。

ブランドヒストリー

創業期:コクーン技術からの出発

FLOSの前史は1960年前後に遡ります。メラーノの製造業者アルトゥーロ・アイゼンキールは、アメリカから持ち込んだスプレー式の樹脂「コクーン」に着目していました。これは金属フレームに樹脂を吹き付け、光を霧状の素材を通して柔らかく拡散させる技術です。この素材に関心を持ったディーノ・ガヴィーナとチェザレ・カッシーナが、カスティリオーニ兄弟やスカルパ夫妻と組んでランプの開発を進め、1962年にFLOSが正式に設立されました。ブランド名はラテン語で「花」を意味し、ピエル・ジャコモ・カスティリオーニが提案したものです。創業期には「タラクサカム」や「ヴィスコンテア」といったコクーン素材のランプ、そして「ARCO」「TACCIA」「TOIO」が生み出されました。

経営の転換と飛躍

1963年からセルジオ・ガンディーニが経営を担い、金属加工が盛んなブレシア県ボヴェッツォへ本拠を移しました。ガンディーニはデザインの追求と製品の権利保護に力を注ぎ、デザイナーと製品・コミュニケーションをともに作り上げる体制を築きました。1972年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された「イタリア:ニュー・ドメスティック・ランドスケープ展」では、カスティリオーニ兄弟をはじめとするイタリアデザインが紹介され、FLOSの国際的評価を高める契機となりました。

現代への展開

2005年以降、FLOSは住宅向けのデコラティブ照明に加え、商業施設や公共建築向けのアーキテクチュラル照明にも本格的に取り組むようになりました。近年はLED照明やバッテリー式照明の開発、過去の名作のLED化を進め、アウトドア照明にもラインナップを広げています。2018年にはDesign Holdingグループの一員となり、2022年に創立60周年を迎えました。

デザインの考え方

FLOSのデザインは、技術的な革新と造形的な美しさを結びつけることを軸としています。照明器具を単なる光源ではなく、空間を演出する要素としてとらえる姿勢は、カスティリオーニ兄弟の「既存の概念にとらわれない発想」を出発点としており、現在まで受け継がれています。

新しい素材や技術にも積極的で、コクーン技術からLED、光学技術へと進化を取り入れながら、長く使えるデザインを追求してきました。フィリップ・スタルクジャスパー・モリソンマイケル・アナスタシアデスパトリシア・ウルキオラ、ロナン&エルワン・ブルレックなど、各時代のデザイナーとの協働が、コレクションに幅をもたらしています。

代表的な照明

ARCO(アルコ)|1962年

ARCOは、カスティリオーニ兄弟がデザインしたフロアランプで、大理石のベースから弧を描くステンレスのアームが特徴です。街灯から着想を得たこのデザインは、天井から電源を取れない場所でもペンダントライトのように真上から光を届けることを目的としています。約65kgの大理石ベースに開けられた穴は、棒を通して持ち運ぶための実用的な工夫でもあります。1962年の発表以来、現在も生産が続き、LEDバージョンも展開されています。

TACCIA(タッチア)|1962年

TACCIAは、シーリングランプを逆さまにするという発想から生まれたテーブルランプです。半円形のリフレクターと、柱を思わせる台座が特徴で、光源を台座に隠すことで直接的なまぶしさを抑えています。現在はLEDにアップデートされたバージョンも展開されています。

TOIO(トイオ)|1962年

TOIOは、自動車のヘッドライトを照明器具として再解釈した作品です。スチール構造と曲線のベースを持ち、高さを調整できる機能を備えています。既製品を新しい文脈で用いるカスティリオーニ兄弟のアプローチを示す一例として、MoMAのコレクションにも収められています。

IC Lights(アイシーライツ)|2014年

IC Lightsは、キプロス出身のデザイナー、マイケル・アナスタシアデスが2014年に発表したシリーズです。真鍮の棒と球形のガラスシェードが、絶妙なバランスを保つデザインで、コンタクトジャグリングから着想を得たとされています。フロア、テーブル、ペンダントなど多様なバリエーションを展開し、現代のFLOSを代表する製品の一つとなっています。

GLO-BALL(グローボール)|1998年

イギリスのデザイナー、ジャスパー・モリソンが1998年に発表した「GLO-BALL」シリーズは、彼の「スーパーノーマル」というデザイン哲学を反映した作品です。一見シンプルな球体ですが、わずかに上下を押しつぶした楕円形で、開口部を小さく抑えることでガラス全体が均一に発光します。吹きガラスによる薄く均質なシェードが、満月のような柔らかな光を生み出します。ペンダント、フロア、テーブルなど多様なバリエーションがあります。

協働するデザイナー

FLOSの製品は、各時代を代表するデザイナーとの協働によって生み出されてきました。創業期を支えたのはアキッレ・カスティリオーニ(1918-2002)とピエル・ジャコモ・カスティリオーニ(1913-1968)の兄弟で、「ARCO」「TACCIA」「TOIO」など数々の照明を手がけました。1990年代以降は、フィリップ・スタルクの「Miss Sissi」、ジャスパー・モリソンの「GLO-BALL」、マイケル・アナスタシアデスの「IC Lights」「String Light」など、新しい世代のデザイナーによる製品が加わっています。ほかにも、パトリシア・ウルキオラ、コンスタンティン・グルチッチ、ロナン&エルワン・ブルレック、マルセル・ワンダースらが協働しています。

FLOSの特徴

FLOSは、創業期のコクーン技術からLED照明まで、技術の進化を取り入れながら製品を開発してきました。過去の名作をLED化するプロジェクトも進めており、定番のデザインを現代の技術で更新しています。吹きガラス、金属加工、表面処理といったイタリアの製造技術が、製品の品質を支えています。

製品は、華やかなものからミニマルなものまで幅広く、住宅向けのデコラティブ照明、商業施設や公共建築向けのアーキテクチュラル照明、屋外向けのアウトドア照明まで、用途に応じたソリューションを展開しています。

基本情報

ブランド名 FLOS(フロス)
設立 1962年
創業地 イタリア・メラーノ(Merano)
本社所在地 イタリア・ブレシア県ボヴェッツォ(Bovezzo)
創業者 ディーノ・ガヴィーナ(Dino Gavina)、チェザレ・カッシーナ(Cesare Cassina)
イタリア
カテゴリー 照明器具(デコラティブ照明、アーキテクチュラル照明、アウトドア照明)
公式サイト https://japan.flos.com/