Flos(フロス)

Flosは、1962年にイタリア北部のメラーノで設立された照明メーカーである。米国製の樹脂被覆材を照明に転用する試みから始まり、1964年にブレシア県ボヴェッツォへ拠点を移して量産体制を整えた。住宅向けの装飾照明と、商業施設・公共建築向けの建築照明の双方を扱い、屋外照明も手がける。設計は外部の建築家・デザイナーに委ね、製造と光学設計を自社が担う分業が創業以来の基本にある。2018年以降はInvestindustrialとCarlyleが共同で保有する持株会社の傘下にある。

事業と製造の実体

Flosは光源の開発から器具の製造・販売までを自社で行う。事業の拠点はイタリア・ブレシアとスペイン・バレンシアの2か所に置かれ、屋外照明の生産はイタリア・ベルナレッジョの工場が担う。バレンシアの拠点は建築照明の部門にあたる。

創業期の製造技術は「コクーン」と呼ばれる樹脂被覆にあった。米軍が梱包材として用いていた材料を吹き付け式で金属フレームに巻き付けるもので、糸状の樹脂が繭のように骨組みを覆い、光を透過させながら拡散させる。Arturo Eisenkeilが米国から輸入していたこの材料の用途を探る過程で、ヴィスコンテアをはじめとする一連のランプが生まれた。

ボヴェッツォへの移転は、ブレシア県が金属加工の集積地であることを踏まえた選択だった。以後の製品では、アルミニウムの押出しとダイカスト、鋼管の曲げ加工、大理石の切削、吹きガラスといった加工がそれぞれ別系統で用いられる。Arcoフロアランプの台座は大理石の塊で、グローボール Sのシェードは吹きガラスによる。

1990年代以降は光源の転換が製造の条件を変えた。LEDへの移行にともない、既存製品の光学部品と電源部を設計し直す作業が継続して行われており、配光調光の制御を前提とする建築照明の比重が高まっている。

沿革

創業前後

1960年前後、メラーノの事業者Arturo Eisenkeilは、米国から輸入した吹き付け式の樹脂被覆材の用途を探していた。家具製造の分野でAchille & Pier Giacomo Castiglioni、Afra & Tobia Scarpaと組んでいたDino Gavinaがこれに関心を示し、照明への応用が試みられる。TaraxacumやViscontea、Gattoといった初期のランプはこの時期に作られた。

1962年、Dino GavinaとCesare Cassinaがメラーノにおいて会社を設立する。社名はラテン語で花を意味するflosから採られ、Pier Giacomo Castiglioniの提案によるものだった。設立の年にArcoフロアランプタッチアトイオが発表されている。

ボヴェッツォへの移転と拡大

1963年、Sergio Gandiniが経営を引き継いだ。1964年には拠点をブレシア県ボヴェッツォへ移し、金属加工の産地に生産基盤を置く。この時期以降、Flosは他社が権利を持つ既存の設計を取得して製品に加える方法も併用するようになった。1955年にコンパッソ・ドーロを受けたCastiglioni兄弟のルミナトールは、当初の製造元であったミラノのGilardi & Barzaghiから引き継いだものである。

1979年、Achille CastiglioniとPio Manzùによるパレンテシがコンパッソ・ドーロを受賞した。以後もMarc SadlerのDrop(1994年)、Konstantin GrcicのMay Day(2001年)が同賞を受け、1995年には企業活動に対する表彰を受けている。

資本構成の変化

2018年、FlosはB&B Italia、Louis Poulsenとともに、InvestindustrialとThe Carlyle Groupが共同で設立した持株会社Design Holdingの傘下に入った。同社は2024年5月にFlos B&B Italia Groupへ改称している。Flosの経営を長く担ったPiero Gandiniは、現在このグループの会長を務める。

デザイナーとの協働

Flosは社内に意匠の部門を置かず、外部の設計者との個別の協働によって製品を開発する。設計者が造形と着想を担い、光学設計と製造技術を自社が引き受ける分担が創業期から続いている。既存の製品を他社から取得する場合も、原設計を保ったまま生産を引き継ぐ形が取られてきた。

創業期を支えたのはAchille CastiglioniとPier Giacomo Castiglioniの兄弟で、Afra & Tobia Scarpaもこの時期の協働相手にあたる。1990年代以降はPhilippe Starck、Jasper Morrison、Antonio Citterio、Konstantin Grcic、Ronan & Erwan Bouroullec、Patricia Urquiola、Michael Anastassiadesらとの協働が続く。

主な製品群

創業期のコクーン素材による製品にはヴィスコンテアガット テーブルランプがある。同じ1962年に発表されたArcoフロアランプは大理石の台座から鋼のアームを伸ばして天井を経由しない吊り下げ照明を成立させたもので、タッチアトイオとともにCastiglioni兄弟の初期の代表的な製品にあたる。同兄弟の設計ではほかにフリスビースヌーピー テーブルランプ、Pio Manzùとの共作であるパレンテシを扱う。

1990年代以降の製品では、Jasper Morrisonのグローボール Sグローボール T1、Michael AnastassiadesのICライツストリングライト、Philippe Starckのコピーキャット テーブルランプ、Ronan & Erwan Bouroullecのエイム ペンダントランプがある。Gino Sarfattiの設計によるモデル2097も現行の製品に含まれる。

製品は用途によって装飾照明、建築照明、屋外照明の3系統に分かれる。建築照明は2000年代半ば以降に本格化した領域で、埋め込み型や投光型の器具、および調光・制御の仕組みを含む。

基本情報

ブランド名 Flos(フロス)
設立 1962年
創業者 Dino Gavina、Cesare Cassina
創業地 イタリア・メラーノ
拠点 イタリア・ブレシア(ボヴェッツォ)、スペイン・バレンシア。屋外照明の生産はイタリア・ベルナレッジョ
資本関係 Flos B&B Italia Group(旧Design Holding)傘下。同グループはInvestindustrialとCarlyleが共同保有
事業内容 装飾照明・建築照明・屋外照明の設計、製造および販売
公式サイト https://flos.com

Reference