Astep(アステップ)

Astepは、2014年にデンマークのコペンハーゲンで設立された照明ブランドである。創業者はアレッサンドロ・サルファッティ。イタリア照明デザイン史に名を刻む一族の三代目にあたり、イタリアの設計思想と、デンマークのものづくり・経営の感覚を一つの企業のなかで結び合わせている。ブランド名の「Astep」は「a step(一歩前へ)」を意味し、過去の遺産に敬意を払いながら、素材と技術の面で着実に前進しようとする姿勢を表している。

Astepの製品はすべてイタリアで製造される。歴史的な名作の復刻と、現代のデザイナーとの新作開発という二つの軸を持ち、照明を「デザイン」「技術」「責任(サステナビリティ)」という三つの柱のもとに捉えている点に特徴がある。

三世代にわたる照明の家系

Astepの背景には、サルファッティ家三代にわたる照明の歴史がある。創業者アレッサンドロの祖父ジノ・サルファッティは、1939年にイタリアでアルテルーチェ(Arteluce)を興し、照明にデザインという視点を持ち込んだ先駆者として知られる。生涯におよそ700点もの照明器具を手がけ、コンパッソ・ドーロをはじめとする数々の賞を受けた。

アレッサンドロの父リッカルド・サルファッティは、1978年に妻サンドラ・セヴェリ、建築家パオロ・リッツァットとともにルーチェプラン(Luceplan)を設立。技術と量産を重んじる産業的なアプローチで、照明をより広い層に届けた。アレッサンドロ自身も1996年にルーチェプランに加わり、のちにCEOを務めている。2013年に同社を離れてコペンハーゲンへ移り、翌2014年にAstepを立ち上げた。三世代がそれぞれの時代に新しい照明会社を興したこの歩みは、家業を継ぐというより、各世代が自らの一歩を刻んできた過程だといえる。

ブランドの特徴とコンセプト

Astepの活動は、大きく二つの方向に分かれている。

一つは、ジノ・サルファッティが遺したアルテルーチェ時代の名作、そしてヴィットリアーノ・ヴィガーノやフランコ・アルビニといったイタリアの建築家たちの照明を、現代に復刻する取り組みである。ジノ・サルファッティの一連の作品は、照明ブランドのフロス(Flos)との協働による「Flos with Sarfatti」コレクションとしても展開されている。

もう一つは、現代のデザイナーと組み、素材や技術の研究を土台に新しい照明のあり方を探る取り組みである。アルフレッド・ハベリ、サミュエル・ウィルキンソン、フランチェスコ・ゴメス・パスといった作り手とともに、住宅空間から業務用空間までを想定した製品を生み出している。

こうした活動を貫くのが、デザイン・技術・責任という三つの理念である。Astepは、事業の社会的・環境的責任を評価するB Corp認証を取得しており、profit(利益)のみを目的とするのではなく、働く人や環境への配慮を含めて企業のあり方を問い直そうとする姿勢を明確にしている。

主な照明

Astepを代表する照明のひとつが、ジノ・サルファッティが1950年代に手がけたモデル2065である。当時としては新素材だったメタクリレートを用いたペンダントで、アレッサンドロがAstepとして最初に世に送り出した製品でもあり、ブランドの原点として位置づけられている。

1959年に発表された「レ・スフェレ(Le Sfere)」シリーズも、Astepの復刻を代表する存在である。吹きガラスのオパール球を塗装スチールのリングが支える構成で、モデル237/238などの壁面用照明から、多数の球を連ねたシャンデリアまで幅広い構成を持つ。月の光への関心から生まれたとされるこのシリーズは、ジノ・サルファッティが手がけた最大の製品ファミリーとして知られている。

このほか、ヴィットリアーノ・ヴィガーノによるVV Cinquanta、フランチェスコ・ゴメス・パスによるCandela、アルフレッド・ハベリによるNoxなど、歴史的な作品と現代の作品の双方がコレクションに並ぶ。

主なデザイナー

Astepのコレクションには、復刻を通じて名を連ねる往年の作り手と、現代の協働相手の双方が含まれる。歴史的な作品では、ジノ・サルファッティ、ヴィットリアーノ・ヴィガーノ、フランコ・アルビニといったイタリア設計史の作り手たち。現代作品では、アルフレッド・ハベリ、サミュエル・ウィルキンソン、フランチェスコ・ゴメス・パスらが名を連ねている。

基本情報

正式名称 Astep(アステップ)
設立 2014年
創業者 アレッサンドロ・サルファッティ
本拠地 デンマーク・コペンハーゲン(製造はイタリア)
取扱分野 照明器具
公式サイト https://astep.design