概要

PH アーティチョークは、ポール・ヘニングセンが1958年に発表したペンダントライトである。コペンハーゲンの湖畔に建つレストラン「ランゲリニエ・パヴィリオン」のために設計され、以来ルイスポールセン社によって継続的に製造されている。12列に配された72枚の金属製シェード(リーフ)が有機的な曲面を描き、その名の由来となった植物アーティチョークを思わせる造形をつくり出す。

装飾的な存在感を備えながら、どの角度から見ても光源が直接目に入らないグレアフリーの光を実現している点が、この照明を長く支持される作品にしている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)の建築・デザイン部門コレクションに収蔵され(銅・スティール製、Object 294.1999)、住宅からホテル、公共空間まで幅広く用いられている。

特徴・コンセプト

PHアーティチョークの中心にあるのは、72枚のリーフが生むグレアフリーの光である。設計にあたっては、電球の裸の光がもたらす眩しさを抑え、拡散した柔らかな光で空間を満たすという原則が貫かれている。

光の設計

72枚のリーフは6枚ずつ12列に配置され、光源からの光を内側で反射しながら下方のシェードを照らす。この反射の連鎖によって器具全体が発光し、光源そのものは視界に入らないまま、均質な間接光が空間に広がる。影と光の関係、グレアの抑制、光による色の見え方という三つの観点が、一台の器具の設計に落とし込まれている。

PHセプティマからの発展

PHアーティチョークの構造は、1927年から1931年にかけて開発された「PHセプティマ」に連なる。7枚のガラスシェードで構成されたセプティマは、透明部分とサンドブラスト加工部分を交互に配し、光を拡散させる構造を持っていた。1958年にランゲリニエ・パヴィリオンの照明を手がけた際、この原理を土台としつつ、ガラスシェードを金属製のリーフに置き換えることでPHアーティチョークがまとめられた。

彫刻としての照明

PHアーティチョークは、照明器具であると同時に空間の焦点となる造形物でもある。依頼の条件は、華やかさを備えつつ、食事の場にふさわしいグレアフリーの光を提供することであった。どの角度からも光源が見えない有機的な形態は、この条件への回答として生まれている。点灯時には内部から光が溢れ、消灯時にも金属リーフが織りなす陰影が、それ自体として立体的な表情を見せる。

手仕事による品質

PHアーティチョークの製造工程の大部分は、現在もデンマークにおいて手作業で行われている。リーフの成形やフレームの組み立てには熟練を要し、機械生産では得にくい精度がこの方法によって保たれている。

エピソード

ランゲリニエ・パヴィリオンからの依頼

1958年、コペンハーゲンの港湾地区に建つレストラン「ランゲリニエ・パヴィリオン」は、大型のペンダントライトの制作をポール・ヘニングセンに依頼した。求められたのは、どの角度から見ても眩しくないという明確な条件であった。ヘニングセンはセプティマの原理を発展させてこれに応え、完成したPHアーティチョークは今日もランゲリニエ・パヴィリオンの天井に吊り下げられている。

空間を彩る存在として

PHアーティチョークは発表後、格調のある照明として銀行やホール、公共の建築などに広く採用されてきた。住宅の空間から大規模な施設まで、置かれる場所に応じて多様な表情を見せる。2020年にはブラック仕上げが加わり、現行の仕上げの選択肢がさらに広がっている。

評価

PHアーティチョークは、20世紀の照明デザインを代表する作品のひとつとして広く知られている。ニューヨーク近代美術館の建築・デザイン部門コレクションに収蔵されていることは、この照明が器具の枠を超えてデザイン史の文脈で位置づけられていることを示している。

72枚のリーフが生むグレアフリーの光は、発表から半世紀以上を経た現在も照明としての機能面で高く評価されている。有機的でありながら幾何学的な秩序を備えた形態は、時代や様式を問わず空間になじむものとして支持を集めてきた。工業製品でありながら手仕事の比重が大きい製造工程も、この作品の性格を形づくる要素となっている。

基本情報

正式名称 PH アーティチョーク / PH Artichoke
デザイナー ポール・ヘニングセン(Poul Henningsen / 1894–1967 / デンマーク)
デザイン年 1958年
ブランド ルイスポールセン(Louis Poulsen / デンマーク)
カテゴリ ペンダントライト
素材 リーフ:銅、真鍮、ステンレス、またはスティール。トップシェード:スティール(白色塗装)。フレーム:スティール(クロームメッキ)。サスペンション:アルミニウム(クロームメッキ)
サイズ Φ480×H497mm / Φ600×H580mm / Φ720×H650mm / Φ840×H720mm(4サイズ展開)
重量 約9kg(Φ480)〜 約30kg(Φ840)※サイズ・仕上げにより異なる
仕上げ 銅、真鍮、ブラッシュドステンレス、ポリッシュドステンレス、ホワイト、ブラック(2020年追加)
光源 Φ480:口金型(E26/LED電球対応)。Φ600以上:LED光源(調光対応)
取付方法 ボルト取付型(電気工事が必要)。フランジ・コード・ワイヤー付属
保護等級 IP20(屋内用)
製造国 デンマーク
参考価格帯 約130万円〜(税込目安、サイズ・仕上げにより異なる)※受注生産