概要

PHアーティチョークは、ポール・ヘニングセンが1958年に発表したペンダントライトである。コペンハーゲンのレストラン「ランゲリニエ・パヴィリオン」のために設計され、初号機は現在も同店の天井に吊られている。12段に配した72枚の金属製リーフが光源を包み、どの角度から見ても光源が直接目に入らない。製造はルイスポールセンが継続している。

特徴・コンセプト

72枚のリーフによる配光

リーフは12段に分けて等間隔に取り付けられ、上下の段どうしが互いの隙間を塞ぐ位置関係にある。真下から見上げても、水平に近い角度から見ても、視線と光源のあいだにはかならずいずれかのリーフが入る。光源から出た光はリーフの内面で反射し、下段のリーフを照らしてから室内へ届く。器具の全体が発光面となり、直接光によるグレアが生じない。装飾のために枚数を増やしたのではなく、視線の通る方向をすべて塞ぐために必要な枚数と段数が72枚・12段であった。

淡い赤に塗られた内面

1958年の初号機は、リーフの内側に淡い赤みのある色が施されていた。当時の光源が発する光は硬く、そのまま反射させると刺すような明るさになる。反射面に色を持たせることで、下方へ送られる光を和らげる狙いであった。反射面の仕上げが光の質を決めるという扱いは、リーフの素材選択にも及んでいる。初号機は銅でつくられ、金属そのものの色が反射光に乗る。

PHセプティマからの展開

この構造は、1927年から1931年にかけて開発された「PHセプティマ」に連なる。セプティマは7枚のガラスシェードで構成され、透明な部分とサンドブラスト加工を施した部分を交互に配して光を拡散させた。ルイスポールセンは1940年まで製造したが、戦時下の原材料不足により生産を終えている。1958年にランゲリニエ・パヴィリオンから依頼を受けたヘニングセンは、セプティマで確立した考え方を土台としたため、3か月で設計をまとめている。シェードは彼が「杭の柵」と呼んだまとまりに整理され、素材はガラスから金属へ置き換えられた。

手作業による組み立て

リーフは1枚ずつ検品され、フレームに手で取り付けられる。段ごとに角度と位置が決まっており、取り付けの精度がそのまま配光の精度になる。製造工程の多くが現在も手作業で行われているのは、この寸法管理を機械化しにくいためである。

エピソード

ランゲリニエ・パヴィリオンは、コペンハーゲンの港沿いに建つモダニズム建築のレストランである。1958年、この店の照明を任されたヘニングセンに求められたのは、食事の場にふさわしい明るさを確保しながら、客席のどの位置からも眩しさを感じさせない器具であった。天井高のある空間で、見上げる角度は席によって変わる。特定の角度だけを想定した遮光では足りず、全方位で光源を隠す構成が必要になる。72枚のリーフを段状に重ねる形は、この条件への回答として決まった。設置された器具は現在も同店で使われ続けている。

評価と影響

20世紀の照明デザインを代表する作例のひとつとして、一般的に高く評価されている。器具全体が発光しながら光源を見せない構成は、天井高のある住宅や商業空間で今も選ばれ続けている。仕上げの選択肢は初号機の銅に加えて複数が用意され、同じ形のまま反射光の色を変えられる。

収蔵

ニューヨーク近代美術館は、銅とスチールによる1958年型を建築・デザイン部門に収蔵している(収蔵番号294.1999、1999年、製造元からの寄贈)。

PHシリーズ全体の設計原理と各機種の関係については PH ランプ シリーズ にまとめている。

基本情報

デザイナー ポール・ヘニングセン(Poul Henningsen)
ブランド ルイスポールセン(Louis Poulsen)
発表年 1958年
デザインの成立国 デンマーク
分類 ペンダントライト
構成 12段・72枚のリーフ
主要素材 リーフ:金属/トップシェード:スチール(白)/フレーム:アルミニウム鋳物(クロームメッキ)
仕上げ ブラッシュドステンレス、銅、真鍮(ブラッシュド)、ホワイト、マットブラック
サイズ Φ480 / Φ600 / Φ720 / Φ840(4サイズ)
吊り方 ステンレスワイヤー3本(長さ調整可)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(294.1999)

Reference