概要
ポール・ヘニングセン(1894-1967)は、デンマークの照明デザイナー・著述家である。1920年代から光源をどう遮り、どう反射させるかを計算で解く方法をとった。複数の笠を対数螺旋に沿って重ねることで、どの角度から見ても電球が直接目に入らない構成を得ている。ルイスポールセンとの協働は生涯続いた。
バイオグラフィー
1894年9月9日、デンマークのオードロップに生まれた。母は作家アグネス・ヘニングセンである。コペンハーゲンの工科学校で建築を学んだが、課程を終えずに離れている。
1920年代前半から照明の設計を始めた。1925年のパリ万国博覧会で、ルイスポールセンと組んで発表した照明が金賞を受けている。この「PHランプ」が以後の系列の基礎になった。
1920年代から40年代にかけて、雑誌の編集と評論も手がけた。建築と社会を論じる立場から、しばしば論争の対象になっている。
1958年、PHアーティチョークとPH5を発表した。1967年1月31日に没している。
デザインの思想と方法
ヘニングセンが扱ったのは、電球の光をどう配るかという問題である。裸の電球はまぶしく、影が濃い。笠で覆えばまぶしさは減るが、光量も減る。彼はこの二つを両立させる形を、幾何学の計算で求めた。
対数螺旋で笠の断面を決める
複数の笠を重ねる際、それぞれの断面を対数螺旋に沿った曲線にする。この曲線では、光源から出た光がどの笠に当たっても、一定の角度で反射する。結果として、どの位置から見ても電球が直接目に入らず、かつ光量の損失も抑えられる。
三枚の笠を基本とする
PHランプの基本形は、大きさの異なる3枚の笠からなる。上から順に径が小さくなり、それぞれの縁が次の笠の内側に入る。この重なりが遮光と反射を同時に担う。笠の数と間隔は計算で決まっている。
光の色を調整する
笠の内側を赤や青に塗ることで、反射する光の色が変わる。電球の光は青みが不足するため、内面に青を配して補正する。色の選択は装飾ではなく、光の質を調整するための処理にあたる。
羽根を重ねて全周を覆う
PHアーティチョークは、72枚の羽根を12段に配して球体をつくる。どの角度から見ても光源が見えず、羽根の隙間から拡散した光が漏れる。笠を重ねる方法を、全方向へ拡張した構成である。
ルイスポールセンの歴史や他の製品について詳しくはルイスポールセン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
PHランプ(1925年)
大きさの異なる3枚の笠を対数螺旋に沿って重ねた照明である。1925年のパリ万博で金賞を受けた。どの位置から見ても電球が直接目に入らず、光量の損失も抑えられる。以後の系列の基礎にあたる。ニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館が収蔵している。→PH 3/2 テーブルランプ
PH アーティチョーク(1958年)
72枚の羽根を12段に配して球体をつくった吊り照明である。どの角度から見ても光源が見えず、羽根の隙間から拡散した光が漏れる。コペンハーゲンの飲食店のために設計された。ニューヨーク近代美術館、V&A、シカゴ美術館が収蔵している。→PH アーティチョーク
PH5(1958年)
3枚の笠と2枚の反射板からなる吊り照明である。当時、電球の形状が各社で変わりつつあったため、どの電球を使っても配光が変わらない構成が求められた。笠の内側の一部を赤と青に塗り、光の色を補正している。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号295.1999)。→PH 5(ピーエイチ・ファイブ)
PH スノーボール(1958年)
複数の笠を重ねて球形に近い形とした吊り照明である。PH5と同時期の設計にあたる。→PH スノーボール
スネークチェア(1931年)
照明以外の設計もわずかに残している。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号974.2010)。
評価と影響
ヘニングセンは一般に、照明の設計を計算で解く方法を確立した人物と評価されている。まぶしさを抑えつつ光量を確保するという条件を、対数螺旋という幾何学で満たした点が挙げられる。
ルイスポールセンとの協働は1925年から没するまで続いた。PHの系列は現在も同社の主要な製品群であり、生産が続いている。
設計と並行して雑誌の編集と評論も手がけ、建築と社会を論じる立場から発言した。設計者としての仕事と著述が並行する例にあたる。
受賞・収蔵
受賞
- 1925年 パリ万国博覧会 金賞(PHランプ)
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA PH テーブルランプ(1926年) 収蔵番号 27.2000
- MoMA PH 4/4「プーリー」天井照明(1926-28年) 収蔵番号 17.2025
- MoMA スネークチェア(1931年) 収蔵番号 974.2010
- MoMA PH アーティチョーク(1958年) 収蔵番号 294.1999
- MoMA PH5 ペンダント(1958年) 収蔵番号 295.1999
- V&A 照明(1927年) 収蔵番号 M.26-1992
- V&A アーティチョーク(1960年) 収蔵番号 M.38-1992
- Met PH テーブルランプ(1927年) 収蔵番号 2000.376a,b
- AIC アーティチョーク(1958年) 収蔵番号 2015.628
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1925年 | 照明 | PHランプ | Louis Poulsen |
| 1926-28年 | 照明 | PH 4/4「プーリー」 | Louis Poulsen |
| 1931年 | 椅子 | スネークチェア | — |
| 1958年 | 照明 | PH アーティチョーク | Louis Poulsen |
| 1958年 | 照明 | PH 5(ピーエイチ・ファイブ) | Louis Poulsen |
| 1958年 | 照明 | PH スノーボール | Louis Poulsen |
| 1920-60年代 | 照明 | PH 3/2 テーブルランプ | Louis Poulsen |
| 1920-60年代 | 照明 | PH 3½-3 ペンダント | Louis Poulsen |
| 1920-60年代 | 照明 | PH 3½-2½ フロア | Louis Poulsen |
| 1920-40年代 | 著述 | 雑誌の編集・評論 | デンマーク |
プロフィール
| 生没年 | 1894年9月9日〜1967年1月31日 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・オードロップ |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン |
| 分野 | 照明、著述 |
| 主な協働ブランド | Louis Poulsen |
Reference
- Poul Henningsen | Louis Poulsen
- https://www.louispoulsen.com/en/designers
- Designmuseum Danmark
- https://designmuseum.dk/en/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection