概要
ペルニラは、ブルーノ・マットソンが1944年に設計した安楽椅子である。バーチ材の無垢材でつくった座枠に、曲げ積層したビーチ材の脚と肘を組み、座面と背にウェビングを張る。背の傾きと足の支え方を変えた三つの型が用意された。名称は取材に訪れた新聞記者にちなむ。ヴァルナモの工房で生産が始まり、現在もブルーノ・マットソン・インターナショナルが製造している。
特徴とコンセプト
休息の角度で分かれる三つの型
1936年、イェーテボリのレースカ美術館での最初の個展で、マットソンは作業椅子・安楽椅子・寝椅子の三つを並べて示した。構造はいずれも同じで、違うのは背の傾きだけだった。この三つには肘掛けがない。ペルニラは、そのうち休息に向けた型に肘掛けと頭部の支えを加えたものにあたる。
ペルニラ1は安楽椅子の系統に、肘掛け、角度をつけた頭部の支え、別体の足載せ台を組み合わせる。ペルニラ2は背の傾きを作業椅子と安楽椅子の中間にとり、上体を起こした姿勢でも座れるようにした。ペルニラ3は寝椅子の系統で、脚を伸ばす部分を本体と一続きにしている。先行する型に比べ、いずれも座る人の重心を床に近づけている。姿勢を変えられる機構は持たず、型を選ぶことで座り方を決める作りである。
先に設計されたマットソン エヴァ・チェアが作業用の姿勢を受け持つのに対し、ペルニラは寄りかかる姿勢を受け持つ。背の上端を立ち上げて首まで支えるのは、背中を倒すと頭の重さを支える場所が必要になるためである。
帯を張って撓ませる
座面と背は、枠のあいだに帯を渡して張る。ばねや詰め物で厚みをつくる方法と違い、荷重がかかると帯そのものが撓み、身体の形に沿って沈む。支える層が薄いままなので椅子は軽く、帯と帯のあいだが空くため通気もある。着座面の柔らかさは詰め物の量ではなく、帯の張り具合と枠の間隔で決まる。
帯の素材は麻から始まり、のちに亜麻が標準になった。現行品のリネンの帯は、指定の仕様でスウェーデン国内で織られている。ほかに本革を編んだ仕様や、羊皮を掛けて使う仕様も作られてきた。
座枠と脚で材を使い分ける
座枠にはバーチ材の無垢材を使う。帯を張ると枠には内向きの引張りが常にかかるため、この部分には変形しない断面が要る。一方、脚と肘は薄板を重ねて型で圧着した曲げ積層のビーチ材で、継手を設けずに一続きの曲線が得られる。太さを変えながら向きを変える形は、無垢材を削り出しても得られるが、木目が途中で切れて折れやすくなる。
曲げ積層を工房の仕事に組み込めた背景には、1934年に加熱せず加圧だけで接着するカゼイン系の接着剤が市販されたことがある。蒸して曲げる曲木のように加熱設備を要さず、型に締めておけば固まるため、規模の小さな工房でも複雑な曲面を反復して作れた。
デザインのエピソード
取材に来た記者の名
ペルニラの名は、ダーゲンス・ニューヘテル紙の記者ペルニラ・トゥンベリエル(Pernilla Tunberger、1912-1986)にちなむ。彼女はヴァルナモのマットソン宅を訪ねて取材し、1943年3月4日付の同紙に「Tågbänk och biofåtölj äro onödigt obekväma(列車の座席と映画館の椅子は無用に座り心地が悪い)」と題した記事を書いた。記事はマットソンをヨーゼフ・フランクやル・コルビュジエと並べて紹介しながら、地元ヴァルナモではほとんど知られていないと伝えている。
国内市場に向いた時期の設計
1930年代後半、マットソンの家具は1937年のパリ万国博覧会などを通じて国外に広がりつつあった。1939年の第二次世界大戦の開戦でその拡大は止まり、仕事は国内市場に向かうことになる。ペルニラはこの期間の設計にあたる。
紙を撚った帯
戦中から戦後にかけて作られた個体には、麻ではなく紙を撚った紙紐の帯を張ったものがある。麻が軍需に回されたための代用とされる。現存する1940年代の個体には、この紙の帯のまま残っているものがある。
1969年のDUX版
1969年、DUXがペルニラ69を発表した。肘掛けを張り包み、帯の上にクッションを重ねる仕様で、帯をそのまま見せる従来の作りとは外観が異なる。この型は現在もDUXが扱っている。
評価と影響
発表から数年後の1949年、ニューヨーク近代美術館がペルニラ1を収蔵した。購入にはエドガー・カウフマン・ジュニアの名を冠した基金が充てられている。カウフマンは当時、同館で工業デザインの部門を率いていた。
現在はブルーノ・マットソン・インターナショナルがペルニラ2とペルニラ3を、DUXがペルニラ69を製造している。帯の張力で身体を受ける構成は、詰め物を厚くする方向とは別の座り心地の作り方として参照されてきた。
収蔵
以下の収蔵が確認できる。
- ニューヨーク近代美術館(MoMA) ペルニラ1 イージーチェア(T105、1944年) 収蔵番号 33.1949
- メトロポリタン美術館 ペルニラ イージーチェア 収蔵番号 1982.397.1
- メトロポリタン美術館 ペルニラ フットレスト 収蔵番号 1982.397.2
メトロポリタン美術館の記録は、所蔵する2点の年代をいずれも1941年としている。
ブルーノ・マットソンの設計思想や経歴について詳しくはブルーノ・マットソンプロフィールページをご覧ください。
ブルーノ・マットソン・インターナショナルの歴史や他の製品について詳しくはブルーノ・マットソン・インターナショナルブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson) |
|---|---|
| 発表年 | 1944年 |
| 製造 | Firma Karl Mathsson(現:Bruno Mathsson International)、DUX(ペルニラ69) |
| デザインの成立国 | スウェーデン(ヴァルナモ) |
| 主要素材 | バーチ材(座枠)、曲げ積層ビーチ材(脚・肘)、リネンまたはヘンプのウェビング |
| 型 | ペルニラ1 / ペルニラ2 / ペルニラ3 / ペルニラ69(DUX) |
| モデル番号 | T105(ペルニラ1) |
| コレクション | ニューヨーク近代美術館(収蔵番号 33.1949)、メトロポリタン美術館(収蔵番号 1982.397.1、1982.397.2) |
Reference
- Bruno Mathsson. Pernilla 1 Easy Chair (T105). 1944 | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/1702
- Bruno Mathsson - "Pernilla" Easy Chair | The Metropolitan Museum of Art
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search/482546
- Linen webbing | Bruno Mathsson International
- https://mathsson.se/eng/material-teknik/linnesadelgjord
- Formgivare: Bruno Mathsson | DUX
- https://www.dux.se/partners/formgivare/bruno-mathsson
- Marta Pernilla Elisabeth Tunberger | Svenskt kvinnobiografiskt lexikon
- https://skbl.se/sv/artikel/MartaPernillaElisabethTunberger
- Pernilla (stol) | Wikipedia
- https://sv.wikipedia.org/wiki/Pernilla_(stol)
- MCM Furniture Design History: The Evolution of the Pernilla Chair | Core77
- https://www.core77.com/posts/63979/MCM-Furniture-Design-History-The-Evolution-of-the-Pernilla-Chair
- Bruno Mathsson Model 36 | Swedish-Design.com
- https://swedish-design.com/product/bruno-mathsson-model-36-natural-webbing/