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ベント・プライウッド・アームチェアは、ジェラルド・サマーズが1934年に設計した椅子である。一枚の合板に切り込みを入れ、型で押して成形する。接合部を持たず、金具も用いない。当時の製造は1940年までで、現在はイタリアのアリヴァールが製造している。

このページでは、当時の製造品と現行品の違い、同時期の合板の椅子との比較、座り方と設置に要する寸法、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

フォールディング・アームチェアは、1934年から1940年にかけて「メイカーズ・オブ・シンプル・ファニチャー」社で製造されたオリジナル品と、1990年代以降にイタリアのアリヴァール(Alivar)社が製造したリエディション版の二系統が存在する。いずれも一枚の合板から成形される一体構造を忠実に再現している。

正式名称 Folding Armchair / Bent Plywood Armchair(フォールディング・アームチェア / ベント・プライウッド・アームチェア)
デザイン登録番号 REGD.No 791116(英国特許庁、1934年)
オリジナル製造元 Makers of Simple Furniture(メイカーズ・オブ・シンプル・ファニチャー)/ロンドン
オリジナル製造期間 1934年〜1940年
オリジナル製造数 約120脚
リエディション製造元 Alivar(アリヴァール)/イタリア・フィレンツェ(1984年創業)
アリヴァールモデル番号 565
分類 ラウンジチェア / アームチェア
サイズ 高さ740mm × 幅603mm × 奥行850mm / 座面高335mm(V&A所蔵品の実測値。当時の製造品は個体差がある)
重量 約9kg
素材(オリジナル) バーチの成形合板。V&A所蔵品は13層で、1mmと2mmの単板を交互に重ねる
素材(アリヴァール版) ビーチ合板にバーチ表面仕上げ(ナチュラル仕上げ / ブラック塗装)
構造 一枚の合板シートから切り出し・成形、金具・ジョイント不使用
製造工程 合板に4本の直線の切り込みを入れて肘掛けと後脚の位置を定め、接着剤が乾く前に木型で8時間押す。成形後に前脚を切り出す
参考価格帯 アリヴァールは価格を公表していない(2026年8月19日確認)。正規取扱店への問い合わせによる。当時の製造品は流通量が限られ、相場は状態と来歴で幅がある
主要収蔵機関 MoMA(1434.2000)、メトロポリタン美術館(1994.428)、V&A(W.26-1978)ほか

一体成形構造の革新性

フォールディング・アームチェアの真価は、その一体成形構造にある。13層のクロスグレイン合板を重ね合わせたシートに、4本の縦方向と2本の横方向の切り込みを入れ、航空産業で使用される高性能接着剤を用いて木製型に8時間圧着する。この工程により、座面・背もたれ・肘掛け・脚部がシームレスにつながった有機的なフォルムが出現する。型から外した後、前脚部分のみを切り出すことで製作が完了する。金具やジョイントを一切使用しないこの構造は、当時アルヴァ・アアルトやマルセル・ブロイヤーすら実現できなかった革新であった。

オリジナルとリエディションの関係

メイカーズ・オブ・シンプル・ファニチャー社は、第二次世界大戦中の1940年に英国政府の合板輸入制限により閉鎖された。以降、オリジナルの製造は途絶えたが、1990年代にイタリアの家具メーカー、アリヴァール社がモデル565として本作品のリエディションを開始した。アリヴァール版はフィラデルフィア美術館にも収蔵されており、デザイン史的に認知されたリエディションである。素材はビーチ合板にバーチ表面仕上げを施し、ナチュラル仕上げとブラック塗装の2種を展開している。近年、2024年にも新たなリエディションが製作されている。

類似商品・競合との比較

1930年代に合板を曲げて椅子をつくる試みは各地で行われた。何枚の板から成形するかによって、接合部の数と製造の工程が変わる。

比較項目 ベント・プライウッド・アームチェア アイソコン ロングチェア パイミオチェア
構成する板の枚数 1枚(切り込みを入れて成形) 座面と背もたれで1枚、支持のフレームは別部材 座面と背もたれで1枚、フレームは別部材
接合部 なし 座面とフレームを4点で固定 座面とフレームを固定
金具の使用 なし あり あり
肘掛け 座面から連続して立ち上がる フレームが兼ねる フレームが兼ねる
現在の製造 アリヴァール(イタリア) アイソコン・プラス(イギリス) アルテック(フィンランド)
メーカー公表価格 公表なし(正規取扱店へ問い合わせ) 公表なし 公表なし

選び分けの目安

接合部のない構成を選ぶ場合
ベント・プライウッド・アームチェアは一枚の板から成形するため、緩みや軋みの起点になる箇所を持たない。他の二者はフレームと座面を固定するため、その箇所の点検が要る。
寝そべる姿勢で使う場合
アイソコン ロングチェアは座面から脚を伸ばす長さを持つ。ベント・プライウッド・アームチェアは奥行850mmで、上体を預ける姿勢にとどまる。
張り地を選びたい場合
三者とも木部が露出する構成で、張り地の選択肢を持たない。座面にクッションを載せて調整することになる。

使用感と設置条件

座る姿勢

座面高335mmは、一般的なラウンジチェアより低い。体が沈む姿勢になるため、立ち座りの動作が大きくなる。座面と背もたれが連続した曲面で、詰め物を持たない。合板そのものが荷重でわずかに撓む。

肘掛けは座面から連続して立ち上がり、途中に接合部がない。腕を置く位置が面として広くとれる。

設置に要する寸法

本体は幅603×奥行850mm。奥行が幅の1.4倍あり、前後方向に長い。立ち座りのために前方へ600mm程度の余裕を見ておく。

後脚から肘掛けまでが一続きの面で構成されるため、背面にも造形が現れる。壁に寄せるより、周囲を空けて置くほうが形が読み取れる。

搬入経路

分解しない状態で納品される。最大寸法は奥行850mm。一般的な住宅の開口部(有効幅700mm前後)では傾けて通すことになる。重量は約9kgと軽い。玄関、廊下の曲がり角、階段の踊り場の寸法を事前に測っておく。

経年変化とメンテナンス

合板に起きること

合板は単板を接着剤で重ねた材で、湿度の変化で層の間に力がかかる。乾燥が続くと接着面が離れ、端部から層が開くことがある。逆に湿度が高い環境では接着層が緩む。

この椅子は接合部を持たない代わり、荷重を合板の曲面全体で受ける。層の剥離が進むと、その箇所から強度が落ちる。端部の状態を定期的に見ておく。

塗装面は紫外線で退色する。当時の製造品は白の着色仕上げが用いられ、経年で色が変わっているものが多い。

日常の手入れ

ふだん
乾いた柔らかい布で拭く。水拭きは合板の端部から水分が入るため避ける。
置き場所
直射日光と、暖房の風が直接当たる場所を避ける。急な乾燥は層の剥離を招く。床暖房の上も同じ理由で適さない。
湿度
極端な乾燥と多湿の双方を避ける。季節による室内湿度の変動が大きい場所では、加湿や除湿で幅を抑える。

修理

層の剥離は、進行の程度によっては木工の工房で接着し直せる。ただし成形された曲面を保ったまま圧着する必要があり、対応できる工房は限られる。当時の製造品では、修理の履歴が価値の評価に関わることがある。

どこで買うか

現行品

イタリアのアリヴァールが製造している。同社は価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによる。仕上げは木地のままと黒の塗装から選べる。

現行品はビーチ合板の表面にバーチを貼る構成で、当時のバーチ合板とは材の構成が異なる。この点は同社が公表している。

当時の製造品

1934年から1940年までの製造で、生産数は約120脚とされる。流通量が限られ、相場は状態と来歴で幅がある。

当時の製造品には、前脚のあいだのの裏に金属のプレートが留められ、登録番号 791116 が刻まれている。この番号は英国の国立公文書館の登録記録と対応する。

状態の確認

接合部を持たない構成のため、確認すべきは合板そのものの状態になる。端部で層が開いていないか、曲面に割れがないか、塗装の下に膨らみがないかを見る。座面の中央に立って撓みが戻るかも判断材料になる。

修理や再塗装の履歴は、当時の製造品では価値の評価に関わる。売り手に確認しておく。

購入前チェックリスト

  • 現行品か当時の製造品か(材の構成が異なる)
  • 当時の製造品の場合、登録番号791116のプレートの有無
  • 合板の端部で層が開いていないか
  • 曲面の割れ、塗装下の膨らみの有無
  • 修理・再塗装の履歴
  • 設置場所の寸法(幅603×奥行850mm+立ち座りに前方600mm程度)
  • 周囲を空けて置けるか(背面にも造形が現れる)
  • 搬入経路(最大寸法は奥行850mm)
  • 設置場所の湿度と日照(直射日光・暖房の風・床暖房を避ける)

よくある質問

現行品の価格はどのくらいですか?
現在製造しているアリヴァールは価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによります(2026年8月19日確認)。仕上げは木地のままと黒の塗装から選べます。当時の製造品は流通量が限られ、相場は状態と来歴で幅があります。
どこで購入できますか?
現行品はアリヴァールの正規取扱店を通じて購入します。当時の製造品は、20世紀の家具を扱うディーラーやオークションでの取引になります。
当時の製造品と現行品は何が違いますか?
当時の製造品はバーチの合板で、V&A所蔵品は13層、1mmと2mmの単板を交互に重ねる構成です。現行品はビーチ合板の表面にバーチを貼る構成で、材の重ね方が異なります。成形の方法と外形は引き継がれています。
当時の製造品かどうかはどう見分けますか?
前脚のあいだの貫の裏に金属のプレートが留められ、登録番号791116が刻まれています。この番号は英国の国立公文書館の登録記録と対応します。
座り心地はどうですか?
座面高335mmは一般的なラウンジチェアより低く、体が沈む姿勢になります。詰め物を持たず、合板そのものが荷重でわずかに撓みます。肘掛けは座面から連続して立ち上がり、腕を置く面が広くとれます。
手入れはどうすればよいですか?
乾いた柔らかい布で拭きます。水拭きは合板の端部から水分が入るため避けてください。直射日光、暖房の風が直接当たる場所、床暖房の上は、急な乾燥により層の剥離を招くため適しません。
修理はできますか?
層の剥離は、進行の程度によっては木工の工房で接着し直せます。ただし成形された曲面を保ったまま圧着する必要があり、対応できる工房は限られます。当時の製造品では修理の履歴が価値の評価に関わることがあります。
他に検討すべき製品はありますか?
同時期に合板を成形した椅子としては、アイソコン ロングチェアとパイミオチェアがあります。いずれも座面と背もたれを一枚の板で成形し、支持のフレームは別部材とする構成です。接合部を持たない点が、この椅子との違いにあたります。