アラベスコ・テーブルが長く愛される理由
アラベスコ・テーブルは、イタリアの建築家カルロ・モリーノが1949年に設計したコーヒーテーブルである。一枚の曲木合板を連続的に曲げて成形した脚部に複数の不規則な開口部を設け、シュルレアリスト画家レオノール・フィニの素描に着想を得た不規則な輪郭のガラス天板を載せた造形で、20世紀イタリアデザインを代表する一点として知られている。
オリジナルは特定の空間のために少数が制作されたが、イタリアの家具メーカー、ザノッタは1981年のフェニス・チェアを皮切りにモリーノ作品の復刻を続け、2020年には8点からなる「モリーノ・コレクションCM 2020」をオマージュとして発表した。アラベスコもこのコレクションに含まれ、アジェンツィア・デル・デマニオ(イタリア国有財産庁)からの独占ライセンスのもとで製造されている。オリジナルの作例はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに収蔵されている。
本ページでは、アラベスコ・テーブルの購入を検討されている方に向けて、正規品の仕様・素材・価格、類似作品との比較、暮らしへの取り入れ方、メンテナンス方法、購入方法、よくある質問まで、購入判断に必要な情報をまとめてお伝えする。
カルロ・モリーノの設計思想や経歴について詳しくはカルロ・モリーノ プロフィールページをご覧ください。
アラベスコ・テーブルのデザインストーリーについて詳しくはアラベスコ・テーブル紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
現行のアラベスコCMは、ザノッタ社が製造している。カルロ・モリーノの作品・図面・文書に関する知的財産権はイタリア民法第586条に基づきイタリア国家に帰属しており、ザノッタはアジェンツィア・デル・デマニオからの独占ライセンスのもとで生産する。ザノッタはこれを「復刻」ではなく「オマージュ」と位置づけ、オリジナルの設計を尊重しながら現代の製造技術に適合させている。
| 正式名称 | アラベスコCM / Arabesco CM |
|---|---|
| デザイナー | カルロ・モリーノ(Carlo Mollino, 1905–1973) / イタリア |
| デザイン年 | 1949年 |
| オリジナル製造 | アペッリ・エ・ヴァレジオ(Apelli & Varesio)、トリノ |
| 現行製造 | ザノッタ(Zanotta S.p.A.)、イタリア |
| ライセンス | アジェンツィア・デル・デマニオ(イタリア国有財産庁)からの独占ライセンス |
| 分類 | コーヒーテーブル / スモールテーブル |
| フレーム | 曲木合板(ベントプライウッド)、オーク突板貼り、ワックス仕上げニス |
| 天板(上段) | 強化板ガラス、厚さ10mm |
| 棚板(下段) | 強化板ガラス、厚さ8mm |
| 接合 | フレームと天板を内部ネジ式の金具で固定 |
| サイズ | 幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cm |
| 仕上げバリエーション | ナチュラルオーク(エクストラクリアガラス)、ブラックステインオーク(スモーキーグレーガラス) |
| 参考価格帯(税込目安) | 約€3,000〜3,800(欧州)、約$4,500〜5,000(米国)。日本国内は正規取扱店に要問合せ |
| 納期 | 受注生産、約11〜12週間が目安 |
| 主な収蔵先(オリジナル) | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)ほか |
アラベスコの構造の要は、一枚の曲木合板から成形された有機的なフレームにある。オリジナルの製造では、薄い木材の層を重ねて接着し、加熱しながら曲げる手法が用いられた。フレームに設けられた複数の不規則な開口部は、必要な箇所にのみ材を残して質量を抑え、視覚的な軽さを生むための工夫である。曲線と逆曲線が組み合わさった構造は、強度を保ちながら宙に浮くような印象を与える。上段のガラス天板と下段のガラス棚板という二層構成は、雑誌や小物を置く棚としての実用性も兼ねている。
類似作品との比較
アラベスコ・テーブルは、彫刻的なコーヒーテーブルという領域に位置し、シュルレアリスムの造形と家具の実用性を結びつけた作品である。同じく著名なデザイナーによる彫刻的コーヒーテーブルとの比較を以下に示す。参考価格は税・輸送費などにより変動する目安である。
| 比較項目 | アラベスコ・テーブル(ザノッタ) | ノグチ コーヒーテーブル(ヴィトラ / ハーマンミラー) | プラットナー コーヒーテーブル(ノル) |
|---|---|---|---|
| デザイナー | カルロ・モリーノ | イサム・ノグチ | ウォーレン・プラットナー |
| デザイン年 | 1949年 | 1944年 | 1966年 |
| 造形の方向性 | シュルレアリスムに通じる有機的曲線 | 彫刻的で穏やかな有機フォルム | スチールロッドによる装飾的・彫刻的構造 |
| 主要素材 | 曲木合板(オーク)+強化ガラス2層 | 無垢材の脚部+ガラス天板 | スチールロッド+ガラス天板 |
| 天板形状 | 不規則輪郭(女性像の輪郭に着想) | 変形した三角状の有機形状 | 円形 |
| 収納機能 | 下段ガラス棚による収納あり | なし | なし |
| 生産形態 | 国家ライセンスによる独占生産(ザノッタ) | 正規ライセンス生産(ヴィトラ / ハーマンミラー) | 正規ライセンス生産(ノル) |
| 参考価格帯(目安) | 約€3,000〜3,800 | 約¥300,000〜 | 約¥450,000〜 |
選び方の指針
シュルレアリスムに通じる造形と、曲木合板の職人技を空間に取り入れたい方には、アラベスコ・テーブルが向いている。有機的なフレームと不規則な輪郭のガラス天板はリビングの主役となり、二層構造による収納機能も実用面での利点である。
より穏やかで普遍的な有機フォルムを求める方には、ノグチ コーヒーテーブルが適している。無垢材の脚部とガラス天板の構成は幅広いインテリアに調和する。アラベスコが個性の強い造形であるのに対し、ノグチのテーブルは静かな調和を特徴とする。
金属の輝きと直線的な構造で華やかさを求める方には、プラットナー コーヒーテーブルが選択肢となる。いずれもデザイナーが手がけた彫刻的なコーヒーテーブルであり、素材と造形の方向性の違いで選ぶとよい。
使用感と暮らしへの取り入れ方
天板の使い勝手とサイズ感
アラベスコ・テーブルは幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cmと、コーヒーテーブルとしてゆとりのあるサイズを持つ。高さ45cmは一般的なソファの座面高(約40cm前後)との相性がよく、ソファに座った状態での飲み物や書籍へのアクセスが容易である。不規則な輪郭のガラス天板は角がないため、動線のなかでも身体にあたりにくい形状である。
上段の強化ガラス天板(10mm厚)は日常的なコーヒーテーブルとして十分な耐久性を持つ。下段のガラス棚板(8mm厚)は雑誌や書籍を置く棚として機能する。ガラスの透明性により収納物が見えるため、表紙の美しいアートブックや写真集を見せる収納として楽しむこともできる。
空間別のコーディネート提案
リビングでは、アラベスコ・テーブルはソファの前に置くセンターテーブルとして力を発揮する。ナチュラルオーク仕上げ(エクストラクリアガラス)は明るくニュートラルな空間に有機的な温かみを添え、ブラックステインオーク仕上げ(スモーキーグレーガラス)はより落ち着いた陰影のある空間に向く。
書斎やライブラリーでは、ソファやラウンジチェアの傍らに置き、読書テーブル兼マガジンラックとして活用できる。モリーノが個人邸の空間のために設計した経緯もあり、静かな書斎空間との親和性が高い。
ギャラリーやショールームなどの空間では、周囲の家具を最小限に抑え、アラベスコ・テーブルを一点だけ配置することで、その彫刻的な造形が際立つ。
生活スタイル別の提案
イタリアンデザインやシュルレアリスム芸術に関心を持つ方にとって、アラベスコ・テーブルは所有する価値のある一点である。オリジナルは希少で入手が難しいが、ザノッタ版は国家ライセンスに基づく公認のオマージュとして、モリーノの造形に触れる現実的な手段となる。
ミニマルな空間に変化を加えたい方にも向いている。シンプルなモノトーンの空間に曲木合板の有機的なフレームが加わることで、落ち着いた温かみと視覚的なアクセントが生まれる。
なお、ガラス天板の不規則な輪郭とフレームの開口部があるため、小さな子どものいる家庭では取り扱いに配慮が必要である。強化ガラスではあるが、デザイン家具として丁寧に扱うことが望ましい。
経年変化とメンテナンス
素材ごとの経年変化
曲木合板フレームのオーク突板はワックス仕上げニスが施されており、使い込むうちに木肌に深みのある色艶が加わっていく。ナチュラルオーク仕上げは時間とともに温かみのある色合いを帯び、ブラックステイン仕上げは落ち着いた黒の奥行きが増す。強化ガラスの天板と棚板は経年による大きな変質は生じにくいが、日常使用に伴う細かな傷が蓄積することはある。
日常メンテナンス
曲木合板フレームは、柔らかい乾いた布での清掃が基本である。ワックス仕上げの特性を保つため、水分を多く含んだ布での清掃は避け、必要に応じて家具用ワックスを薄く塗布して木肌を保護する。直射日光の長時間の照射はオーク突板の退色やワックスの劣化を早めるため、設置場所には配慮したい。
ガラス天板と棚板は、ガラスクリーナーまたは薄く水を含ませた布で拭き取り、乾いた布で仕上げる。研磨剤を含む洗剤は使用しない。フレームとガラスの接合部(内部ネジ式金具)は、定期的に緩みがないか確認するとよい。
修理・パーツ対応
ザノッタ社の正規品については、正規販売店を通じた修理・パーツの相談が可能である。ガラス天板や棚板の破損時の交換、フレームの補修などについては、購入した販売店またはザノッタのカスタマーサービスへの問い合わせを推奨する。曲木合板フレームの構造的な損傷は、複雑な曲線形状のため専門的な修理が必要となる場合がある。
どこで買うか:正規販売店と購入方法
日本国内での購入
日本国内では、ザノッタ製品を取り扱う正規販売店を通じて購入できる。仕上げのサンプルや資料の提供に対応している店舗もあり、アラベスコCMの価格・在庫・納期については各店への問い合わせが必要である。日本国内の参考価格は、海外販売価格(約€3,000〜3,800)に関税・輸入消費税・販売店マージンが加算された水準となる。
海外での購入
欧州ではザノッタ公式サイト(zanotta.com)からの購入のほか、twentytwentyone(ロンドン)などの正規ディーラーで購入できる。米国ではhive modernなどの正規ディーラーが取り扱っている。国際的なデザイン家具プラットフォーム(1stDibs、Pamonoなど)でも取り扱いがある。並行輸入品を検討する場合は、正規ルートかどうか、保証の有無を確認したい。
実物を確認できる場所
ザノッタのショールームおよび正規販売店で、実物または素材サンプルを確認できる場合がある。展示状況は時期・店舗により異なるため、来訪前の問い合わせを推奨する。オリジナルの作例は、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに収蔵されている(常設展示とは限らないため、鑑賞可否は各館に確認されたい)。
中古・ヴィンテージ市場
ザノッタ版アラベスコCMは、1stDibsやPamono、専門のアンティークディーラーなどで中古品が取引されることがある。ザノッタによる初期の生産品も流通している。購入時には、フレーム裏面の「zanotta made in Italy」スタンプの有無、曲木合板の割れや突板の剥離、ガラスの欠けやヒビの確認が重要である。1949年当時のオリジナルは希少で、専門のオークションや画廊を通じて取引される。
購入時チェックリスト
- 正規品であることの確認(フレーム裏面の「zanotta made in Italy」スタンプ)
- 仕上げの選択(ナチュラルオーク+エクストラクリアガラス / ブラックステインオーク+スモーキーグレーガラス)
- 設置場所の採寸(幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cm。ソファとの距離・動線を考慮)
- 床面の確認(フレームの接地点と床材の相性。デリケートな床面にはラグの使用を検討)
- 搬入経路の確認(幅129cmのため、ドア幅・通路幅の確認が必要)
- 納期の確認(受注生産、約11〜12週間が目安。在庫品がある場合はこの限りではない)
- ガラスの取り扱いに関する注意事項の確認(強化ガラスだが衝撃には注意)
- 中古品の場合:zanottaスタンプ、曲木合板の割れ・突板の剥離、ガラスの欠け・ヒビ、金具の緩みを確認
コーディネート事例
モリーノ・コレクションでまとめる
ザノッタのモリーノ・コレクションCM 2020から他の作品を組み合わせ、モリーノの有機的な曲線で空間を統一する構成である。深い色調のソファや間接照明を合わせ、陰影のある落ち着いた空間にまとめると、アラベスコの造形が引き立つ。
イタリアンモダンでまとめる
アラベスコ・テーブルを戦後イタリアデザインの文脈に置く構成も効果的である。ジオ・ポンティのスーパーレッジェーラや、同じくザノッタのカスティリオーニ兄弟による作品など、イタリアの名作を組み合わせることで、まとまりのある空間が生まれる。
ミニマルな空間に一点だけ置く
白い壁とコンクリートの床のような簡素な空間に、アラベスコ・テーブルを一点だけ配置する構成は、この作品の彫刻的な造形を際立たせる。ナチュラルオーク仕上げのフレームとエクストラクリアガラスの透明感が、簡素な空間のなかで有機的なアクセントとなる。周囲には最小限の家具のみを置き、テーブル自体を空間の主題とする。
よくある質問
- アラベスコ・テーブルの正規品の価格はどのくらいですか?
- 欧州での参考価格は約€3,000〜3,800、米国では約$4,500〜5,000程度である。日本国内価格はザノッタ正規取扱店に直接問い合わせが必要で、海外販売価格に関税・輸入消費税・販売店マージンが加算される。
- どこで購入できますか?
- 日本国内ではザノッタ正規取扱店で購入できる。海外ではザノッタ公式サイト、twentytwentyone(ロンドン)、hive modern(米国)などの正規ディーラー、および1stDibsやPamonoといった国際プラットフォームで取り扱いがある。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- ザノッタのショールームや正規販売店で確認できる場合がある(展示状況は要問合せ)。オリジナルの作例はロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに収蔵されている。
- 納期はどのくらいかかりますか?
- 受注生産で約11〜12週間が目安である。在庫品がある場合はより短い期間で入手できることもある。日本へ輸入する場合は国際配送期間も考慮が必要である。
- メンテナンスはどのようにすればよいですか?
- 曲木合板フレームは柔らかい乾いた布で清掃し、必要に応じて家具用ワックスを薄く塗布する。ガラスはガラスクリーナーで拭き取る。直射日光の長時間照射は避け、接合金具の緩みを定期的に確認する。
- リプロダクトはありますか?
- カルロ・モリーノの作品・図面・文書に関する知的財産権はイタリア民法第586条に基づきイタリア国家に帰属している。ザノッタがアジェンツィア・デル・デマニオからの独占ライセンスのもとで製造する正規品が、公認された入手手段である。
- ガラス天板は割れないですか?
- 天板(10mm厚)・棚板(8mm厚)ともに強化板ガラスが使用されており、通常のガラスより高い耐衝撃性を持つ。ただし強い衝撃や落下物による破損は起こり得るため、丁寧な取り扱いが望ましい。破損時はザノッタ正規販売店を通じたガラス交換の相談を推奨する。
- 他に検討すべきモリーノやザノッタの名作は?
- モリーノ・コレクションCM 2020には、アラベスコのほかにレアレ・テーブル、カヴール・デスク、ジルダ・チェア、フェニス・チェア、アルデア・アームチェアなどが含まれる。ザノッタの他の代表作としては、サッコ(ビーンバッグチェア、1968年)、メッツァドロ・スツール(カスティリオーニ兄弟、1957年)、セッラ・スツール(カスティリオーニ兄弟、1957年)などがある。各作品について詳しくは当サイトの紹介ページをご参照いただきたい。