概要
カルロ・モリーノ(1905-1973)は、イタリアの建築家・デザイナーである。トリノを拠点とし、建築、家具、写真、航空機の設計、競技用自動車の設計と対象が広い。家具では成形合板を曲面に成形し、切り抜きを設けた構成をとる。作品の多くは特定の施主のために作られ、量産されていない。
バイオグラフィー
1905年5月6日、イタリアのトリノに生まれた。父は技術者である。トリノ工科大学で建築を学び、1931年に修了している。
1930年代から父の事務所で建築の設計に携わった。1939年のカーサ・デヴァッレなど、トリノの住宅と施設を手がけている。
1950年代には家具の設計を行った。多くは特定の施主のための一点物か少数の制作にあたる。
建築と家具のほか、写真、滑空機の設計、競技用自動車の設計も行った。1954年から1973年までトリノ工科大学で教えている。1973年8月27日に没した。
デザインの思想と方法
モリーノの家具は、成形合板を三次元の曲面に成形し、そこに切り抜きを設ける構成をとる。切り抜きは軽量化と接合を兼ね、同時に輪郭を複雑にする。曲面と開口の組み合わせが形を決めている。
合板に切り抜きを設ける
成形した合板の面に穴を開けると、材料が減って軽くなり、他の部材を通す位置にもなる。アラベスコのテーブルは、曲げた合板に開口を設けて脚と天板を結ぶ。開口は装飾ではなく、構造上の要素になっている。
曲面を三次元に成形する
合板を一方向だけでなく複数の方向に曲げると、断面が変化して剛性が出る。平らな板では成立しない形も、この方法なら作れる。型の製作に手間がかかるため、量産には向かない。
施主ごとに作る
家具の多くは特定の住宅や施設のために作られた。制作数は数点にとどまるものが多く、寸法も個別に決まる。ザノッタによる後年の再生産で、一部が入手可能になった。
分野を限定しない
建築、家具、写真、滑空機、競技用自動車と対象は広い。滑空機と自動車では空気力学の条件が形を決めるが、家具でも材料の性質から形を導くという点で手順は共通する。
ザノッタの歴史や他の製品について詳しくはザノッタ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
カーサ・デヴァッレ(1939年、トリノ)
住宅の内装である。既存の建物の内部を全面的に構成し直した。ニューヨーク近代美術館が記録の写真9点を収蔵している(収蔵番号376.2017.1-9)。
アラベスコ テーブル(1949年)
曲げた成形合板に開口を設け、脚と天板を結んだ卓である。開口は軽量化と接合を兼ね、輪郭を複雑にする。天板はガラスで、下の曲線が透けて見える。V&Aが収蔵している(収蔵番号W.7-1985)。→アラベスコ・テーブル
レアーレ テーブル(1946年)
木の脚を斜めに交差させ、ガラスの天板を載せた卓である。脚が三次元に交わることで、支持と意匠が同じ形で成立する。→レアレ テーブル
カヴール デスク
曲面の合板と金属を組み合わせた机である。天板の下に収納を持ち、脚部が曲線を描く。→カヴール デスク
写真(1930-70年代)
生涯にわたり写真を制作した。メトロポリタン美術館が複数点を収蔵している。設計者としての活動とは別に扱われることが多い。
評価と影響
モリーノは一般に、20世紀イタリアの設計者のなかで最も対象の広い人物の一人と評価されている。建築、家具、写真、滑空機、競技用自動車と分野をまたぐ活動が特徴にあたる。
家具の多くは特定の施主のための少数の制作で、量産されていない。生前の流通は限られており、1990年代以降に中古市場での評価が高まった。
ザノッタによる再生産で、一部の設計が入手可能になっている。トリノ工科大学では1954年から没するまで教えた。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。
- MoMA カーサ・デヴァッレの記録写真(1939年) 収蔵番号 376.2017.1-9
- V&A アラベスコ(1949年) 収蔵番号 W.7-1985
- Met 写真「スカルプ」(1937-40年) 収蔵番号 2018.185
- Met 写真「ヴィラータ」(1938-42年) 収蔵番号 2005.100.644
- Met 写真(1937-43年) 収蔵番号 2018.187、2018.188
AIC では該当する収蔵は確認できなかった。イタリア国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1939年 | 内装 | カーサ・デヴァッレ | トリノ、イタリア |
| 1946年 | テーブル | レアレ テーブル | Zanotta(再製作) |
| 1949年 | テーブル | アラベスコ・テーブル | Zanotta(再製作) |
| 1950年代 | デスク | カヴール デスク | Zanotta(再製作) |
| 1950年代 | 建築 | トリノ乗馬クラブ、劇場ほか | トリノ、イタリア |
| 1955年 | 自動車 | ビゾルーニ 競技用自動車 | — |
| 1930-70年代 | 写真 | 写真作品 | — |
| 1930-70年代 | 航空 | 滑空機の設計 | — |
プロフィール
| 生没年 | 1905年5月6日〜1973年8月27日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・トリノ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | トリノ |
| 分野 | 建築、家具、写真、航空機、自動車 |
| 主な協働ブランド | Zanotta(再製作) |
Reference
- Museo Casa Mollino
- https://www.museocasamollino.org/
- Carlo Mollino | Zanotta
- https://www.zanotta.com/en-us
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection