カヴール デスク:構造美と機能性の調和
Cavour Desk(カヴール デスク)は、イタリアの伝説的建築家兼デザイナーであるカルロ・モリーノが1949年にデザインした、構造の完璧性を追求したライティングデスクである。トリノの邸宅Casa Orengoのインテリアのために創作されたこの作品は、モリーノがアルプスのスキーステーション建築で研究を重ねた構造形態の探求が結実したものであり、建築工学と有機的なデザインが融合した20世紀デザイン史における重要な作品として位置づけられている。
Zanottaによって製品化されたこのデスクは、モリーノの革新的な精神への真摯なオマージュとして、オリジナルデザインの本質を保ちながら現代の生活空間に適応させた傑作である。透明なガラス天板と有機的な曲線を描く木製フレームの対比が生み出す視覚的緊張感は、まさにモリーノが追求した「幻想的であればすべてが許される」という哲学の体現といえるだろう。
構造美学と有機的デザイン
Cavour Deskの最も特筆すべき特徴は、その非対称でありながら完璧にバランスの取れた構造美にある。無垢のオーク材またはカナレット・ウォルナット材で成形された脚部は、モリーノが開発・特許取得した冷間成形合板技術により、まるで生命体のような有機的な曲線を描きながら、驚くべき軽量性と強靭性を実現している。この技術により、従来の家具では不可能だった、流動的でダイナミックな形態が可能となった。
デスクの構造は、対立する要素の弁証法的な表現として設計されている。有機的でダイナミックな脚部の曲線と、幾何学的で静的な収納部分のボリュームとの間に生まれる均衡の取れたコントラストは、モリーノが追求した構造工学と芸術的表現の融合を象徴している。引き出しユニットと収納トレイは、天然または黒染めのオーク材、あるいはカナレット・ウォルナット材のベニヤ仕上げで、その表面は黒色に塗装された強化ガラスで覆われ、洗練された対比効果を生み出している。
12ミリ厚のクリアまたはエクストラクリアのガラス天板は、デスク全体に視覚的な軽やかさをもたらし、複雑な木製構造の建築的美しさを際立たせる役割を果たしている。オプションとして、黒染めオークフレームに合わせたスモーキーグレーのガラス天板も選択可能であり、より現代的で洗練された雰囲気を演出することができる。
エグゼクティブキットによる高級仕様
特別注文により、Executive Kit(エグゼクティブキット)を追加することが可能である。このキットには、引き出しとトレイの底面を覆う黒色カウハイドレザー(95番)、80×50センチメートルのデスクパッド、そしてデスクと同じ仕上げの無垢材製ペンホルダーが含まれる。これらの要素により、Cavour Deskはさらに洗練された高級感を獲得し、エグゼクティブオフィスにふさわしい格調高い存在感を放つ。
スキーステーション建築からの着想
Cavour Deskのデザインは、モリーノがアルプスのスキーステーション建築プロジェクトで探求した構造形態の研究に深く根ざしている。1940年代後半、モリーノはアオスタ渓谷のLago Nero(ラーゴ・ネーロ)やセルヴィーニアのCasa del Sole(カーサ・デル・ソーレ)といった山岳リゾート施設の設計に携わり、そこで軽量性と構造的効率性を追求する過程で、自然の有機的な形態から学んだ工学的解決法を家具デザインに応用した。
雪の重みに耐えながらも軽快さを保つ山岳建築の構造原理は、このデスクの細身でありながら強靭なフレーム構造に直接的に反映されている。モリーノはスキーヤーとしても卓越した技能を持ち、スキー技術の教本も執筆していたほどであり、速度とバランスへの情熱が彼のデザイン哲学の根幹を成していた。Cavour Deskに見られる流線型のフォルムと動的なバランス感覚は、まさにそうした経験の結晶といえるだろう。
カルロ・モリーノの多面的才能
カルロ・モリーノ(1905-1973)は、トリノで生まれ育ち、20世紀イタリアデザイン界において最も異彩を放った人物の一人である。建築家の枠を超え、デザイナー、写真家、作家、レーシングカードライバー、曲技飛行パイロット、スキーヤーとして多岐にわたる活動を展開し、その全てにおいて卓越した技能を示した。1931年にトリノ王立高等建築学校を卒業後、著名な建築エンジニアであった父エウジェニオ・モリーノの事務所で経験を積みながら、独自の建築・デザイン言語を確立していった。
モリーノの作品は、未来派、シュルレアリスム、アール・ヌーヴォーの影響を受けながらも、決して既存の様式に収まることのない独創性を持っている。彼の家具デザインは、女性の身体の曲線や動物の形態といった有機的なモチーフから着想を得ており、バロック的な装飾性と合理主義的な機能性が共存する、彼自身が「トリノ風バロック」と称した独特のスタイルを確立した。1952年から1970年まで、トリノ工科大学建築学部で建築構成と装飾の教授を務め、後進の育成にも尽力した。
モリーノの建築作品としては、トリノ王立歌劇場(Teatro Regio)の再建、トリノ商工会議所、トリノ大学建築学部校舎などが知られ、家具デザインでは冷間成形合板技術を駆使した革新的な作品群を生み出した。彼の家具はほとんどが一点物またはごく少数の限定生産であり、トリノの工房Apelli & Varesioで製作されたものが多い。1973年8月27日、モリーノは自身のスタジオで仕事中に心臓発作により急逝したが、彼の作品は現在、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館をはじめとする世界中の著名な美術館のコレクションに収蔵されている。
Zanottaによる復刻と評価
Zanotta社は、1949年のオリジナルデザインを忠実に再現しながらも、現代の生活様式に適応させる形でCavour Deskを製品化した。1954年にアウレリオ・ザノッタによって創業されたZanottaは、イタリアンデザインの先駆者として、アヴァンギャルドなデザインと職人技の融合を追求してきた企業である。同社は1982年からモリーノ作品の独占的な復刻権を持ち、工学的精密性とデザイン的本質性を厳密に保ちながら、オリジナルの精神を現代に伝えている。
Cavour Deskは、その誕生以来70年以上を経た現在も、エレガントで官能的なデザインの独自性と印象的な存在感を保ち続けている。Google Arts & Cultureのコレクションにも収録され、デザイン史における重要作品として学術的評価も高い。オークションでは、モリーノの家具作品が数百万ドルで取引されることも珍しくなく、2005年にはクリスティーズで彼がデザインしたテーブルが380万ドルで落札された記録も残っている。
Zanottaのカタログには現在150以上の製品が収録され、18カ国の143名のデザイナーによる作品が並ぶが、その中でもモリーノの作品群は特別な位置を占めている。同社は4度のコンパッソ・ドーロ賞を受賞し、330点以上の製品が世界56カ所の美術館に永久収蔵されるという、イタリアンデザインを代表する企業としての地位を確立している。
現代空間における存在意義
Cavour Deskは、ホームオフィスや大規模なオープンスペースでの使用に理想的な作品である。その時代を超越したデザインは、クラシックからコンテンポラリーまで、あらゆるインテリアスタイルに調和する適応性を持っている。全長約247センチメートル、奥行き約90センチメートル、高さ約75センチメートルという堂々たるサイズは、執務空間に威厳と品格をもたらすと同時に、十分な作業面積と収納機能を提供する。
現代のデザイン評論家たちは、Cavour Deskを「材料と均衡の傑作」「機能性と現代美学を融合した中心的作品」と称賛している。その非対称な構造が生み出す視覚的緊張感と、引き出しユニットがもたらす機能的完結性の組み合わせは、モリーノが追求した「完璧な機構における構造的知性」の証明であり、すべての要素が精密に連結し合う様は、真の傑作と呼ぶにふさわしい。
このデスクは単なる家具を超えた文化的表現として、ラグジュアリー家具の世界における芸術性、機能性、贅沢さの交差点を体現している。モリーノの先見性とZanottaの革新的デザイン概念を受け入れる大胆さが織りなす物語は、情熱と革新、そして時代を超越したデザインの物語であり、今後も高級家具デザインの世界を照らし続ける灯台のような存在であり続けるだろう。
基本情報
| デザイナー | カルロ・モリーノ(Carlo Mollino) |
|---|---|
| ブランド | Zanotta(ザノッタ) |
| デザイン年 | 1949年 |
| 分類 | ライティングデスク/ワーキングデスク |
| サイズ | W 247cm × D 90cm × H 75cm |
| 主な素材 | 天然オーク材/黒染めオーク材/カナレット・ウォルナット材(無垢)、強化ガラス、ワックス仕上げ |
| 天板仕上げ | クリアガラス/エクストラクリアガラス/スモーキーグレーガラス(12mm厚) |
| 特徴 | 冷間成形合板技術による有機的構造、非対称バランス、引き出しユニット付属 |
| 製造国 | イタリア |
| コレクション | Google Arts & Culture、その他多数の美術館・博物館 |