アラベスコ・テーブルは、イタリアの建築家カルロ・モリーノが1949年に設計したコーヒーテーブルである。曲木合板の脚部とガラスの天板を組み合わせ、シュルレアリスムの絵画に通じる有機的な曲線で構成された彫刻的な小テーブルで、モリーノの家具作品のなかでも代表的な一点として知られている。
オリジナルはトリノの家具工房アペッリ・エ・ヴァレジオが手がけ、ジオ・ポンティの一族であるリサ・ポンティとルイジ・リチトラをはじめとする個人の依頼のために少数が製作された。1950年にはイタリア政府が主催した巡回展「Italy at Work: Her Renaissance in Design Today」に出品され、戦後イタリアデザインを海外に紹介する一例となった。現在はザノッタ社が「アラベスコCM」として製造している。
特徴・コンセプト
アラベスコ・テーブルの特徴は、一枚の合板を連続的に曲げて成形した脚部にある。フレームには複数の不規則な曲線的開口部が設けられ、必要な箇所にのみ材を残すことで質量を抑え、視覚的な軽さを生んでいる。曲線と逆曲線が組み合わさった構造は、強度を保ちながらも宙に浮くような印象を与える。
シュルレアリスムからの造形
ガラス天板の不規則な輪郭は、イタリアのシュルレアリスト画家レオノール・フィニ(1908–1996)が描いた横たわる女性像のドローイングに由来する。モリーノはその素描から女性の胴部の輪郭をトレースし、天板の形状に用いた。フレームの流れるような曲線は、ジャン・アルプの生物形態的な造形に通じるものとして語られている。
素材と構造
本作は曲木合板のフレーム、強化ガラスの天板と下棚、金属の留め具で構成される。合板フレームはオーク材の突板で仕上げられ、上段のガラスは10mm厚、下段の棚は8mm厚の強化板ガラスが用いられる。上下二段の構成は、雑誌や小物を置く棚としての機能も兼ねている。
歴史と展開
アラベスコ・テーブルは、1949年からアペッリ・エ・ヴァレジオの工房で少数が製作された。モリーノのスケッチをもとに実物大の図面が起こされ、職人との協働を通じて複雑な曲線が実現されている。カーサ・オレンゴやポンティ家といった個人の空間のために作られた作例が知られている。
1950年の巡回展「Italy at Work」ではアメリカ各地の美術館を巡回し、本作もその一例として紹介された。オリジナルの作例はヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)などに収蔵されており、同館は本作を、機能を備えながら彫刻のような佇まいを持つ作品として紹介している。
現行品(ザノッタ・アラベスコCM)
イタリアの家具メーカー、ザノッタは、モリーノの作品へのオマージュとしてアラベスコを製造している。カルロ・モリーノの作品・図面・文書に関する知的財産権はイタリア民法第586条に基づきイタリア国家に帰属しており、ザノッタはアジェンツィア・デル・デマニオからの独占ライセンスのもとで生産を行っている。
現行のアラベスコCMは、ナチュラルオークまたはブラックステインオークの曲木合板フレームにワックス仕上げを施し、強化ガラスの天板を組み合わせる。ナチュラルオークにはエクストラクリアガラス、ブラックステインオークにはスモーキーグレーのガラスが合わされる。
基本情報
| 名称(日本語) | アラベスコ・テーブル(アラベスコCM) |
|---|---|
| 名称(英語) | Arabesco Table / Arabesco CM |
| デザイナー | カルロ・モリーノ(Carlo Mollino, 1905–1973) |
| デザイン年 | 1949年 |
| 製造(オリジナル) | アペッリ・エ・ヴァレジオ(Apelli & Varesio)、トリノ |
| 製造(現行品) | ザノッタ(Zanotta)、イタリア |
| 素材 | 曲木合板(オーク突板)、強化ガラス、金属金具 |
| 寸法 | 幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cm |
| ガラス厚 | 天板10mm、下棚8mm(強化板ガラス) |
| 仕上げ | ナチュラルオーク(エクストラクリアガラス)/ブラックステインオーク(スモーキーグレーガラス) |
| 主な収蔵先 | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)ほか |