バイオグラフィー
1917年、オーストリアのインスブルックに生まれる。本名エットレ・ソットサス・ジュニア。建築家の父エットレ・ソットサス・シニアのもとに生まれ、幼少期をイタリアのトリノで過ごした。1939年にトリノ工科大学で建築の学位を取得し、第二次世界大戦後の1947年にミラノで建築事務所を開設。1958年からはオリベッティ社のデザインコンサルタントを長年務め、コンピューターやタイプライターなど革新的なプロダクトを手がけた。1980年代にはメンフィス・グループを率いてポストモダンデザインの旗手となり、色彩豊かで遊び心にあふれた作品で、機能主義一辺倒だったデザイン界に新たな風を吹き込んだ。2007年、ミラノで死去した。
デザインの思想とアプローチ
ソットサスのデザイン哲学は、「デザインは人生を豊かにするための道具」という信念に根ざしている。彼は機能性だけでなく、感情的な価値や文化的な意味を重んじ、デザインを通じて人々の生活に喜びと驚きをもたらすことを追求した。とりわけインドへの旅と東洋思想から深い影響を受け、精神性と物質性の調和を探った。工業デザインにおいても、人間味と温かみを失わない独自のアプローチを確立している。
作品の特徴
ソットサスの作品は、いくつかの特徴で見分けられる。まず、原色や鮮やかな色を組み合わせた大胆な色彩。次に、円・三角・四角といった基本形態を遊戯的に組み合わせ、予想外の形を生み出す造形。さらに、プラスチック、ラミネート、金属、ガラスなど異なる素材を意外な形で融合させる手つき。そして、古代文明やポップカルチャー、東洋思想など、多様な文化的要素を取り込む引用の幅広さである。
主な代表作とその特徴
Valentine タイプライター(1969年)
オリベッティ社のために、ペリー・キングとともに設計した真紅のポータブルタイプライター。プラスチック製の本体とケースが一体化したデザインは、タイプライターを事務機器から個人的な表現の道具へと変えた。ポップアートを思わせる鮮やかな色彩と、若者文化を意識したカジュアルな佇まいは、当時の社会に大きな印象を与えた。
メンフィス・グループを象徴する作品。カラフルなラミネート板を非対称に組み合わせた本棚で、機能的な家具というより彫刻作品のような存在感をもつ。斜めに配された棚板、原色の大胆な使用、遊び心あふれる形態は、1980年代のポストモダンデザインを代表する。
Tahiti ランプ(1981年)
メンフィスのコレクションに含まれる照明。鳥のような形の本体に、赤・黄・黒のラミネートを組み合わせた大胆なデザインで、機能性よりも視覚的な印象を重視し、照明を一種の芸術作品として捉え直した。
波打つような有機的な形状のミラー。ピンク色の蛍光灯で縁取られた鏡は、実用性を超えた詩的な存在である。女性的な曲線と未来的な照明の組み合わせは、1970年代のラディカルデザインの精神を体現している。
メンフィス・グループの設立と活動
1980年12月、ミラノのソットサスの自宅で開かれた会合をきっかけに、メンフィス・グループは構想された。グループ名は、その場で繰り返し流れていたボブ・ディランの曲「Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again」にちなむ。ミケーレ・デ・ルッキ、マッテオ・トゥーン、マルコ・ザニーニ、マルティーヌ・ベダンら若手の建築家・デザイナーに、批評家のバルバラ・ラディーチェらが加わり、ナタリー・デュ・パスキエ、倉俣史朗、梅田正徳など国際的な顔ぶれも参加した。1981年のミラノ・サローネで初のコレクションを発表して大きな反響を呼び、以後1980年代を通じて毎年コレクションを発表。既存のデザイン概念を打ち破り、装飾と機能の新たな関係を提示した。
功績・業績
ソットサスの功績は、デザインの概念そのものを押し広げたことにある。機能主義一辺倒だった20世紀後半のデザイン界に、感情・記憶・文化的な意味という新たな価値の軸を持ち込んだ。オリベッティ社での革新的なプロダクトデザイン、メンフィス・グループによるポストモダンデザインの確立、そして建築から日用品まで幅広い領域での活動を通じて、デザインの可能性を大きく広げた。コンパッソ・ドーロ賞をはじめ数々の国際的なデザイン賞を受け、2007年に世を去るまで挑戦的な姿勢を保ち続けた。
評価・後世に与えた影響
ソットサスの影響は、現代デザインの広い領域に及んでいる。メンフィスの活動は、1980年代のニューウェーブデザインや、その後のデザインアート、現代のコンテンポラリーデザインの土台の一つとなった。「デザインは文化的な表現である」という彼の視点は、今日のデザイナーにも受け継がれている。とりわけ、感情的な価値を重んじる現代の体験デザインや、文化的な多様性を尊重するデザインの文脈で、その先見性が評価されている。デザインを問題解決の手段にとどめず、詩的で哲学的な表現として捉えた彼の姿勢は、今も多くのデザイナーに刺激を与え続けている。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1959年 | コンピューター | Elea 9003 | Olivetti |
| 1963年 | タイプライター | Praxis 48 | Olivetti |
| 1964年 | タイプライター | Tekne 3 | Olivetti |
| 1969年 | タイプライター | Valentine | Olivetti |
| 1970年 | ミラー | Ultrafragola | Poltronova |
| 1972年 | セラミック | Indian Memory Series | Bitossi |
| 1980年 | テーブル | Le Strutture Tremano | Alchimia |
| 1981年 | 本棚 | Carlton | Memphis |
| 1981年 | ランプ | Tahiti | Memphis |
| 1981年 | サイドボード | Casablanca | Memphis |
| 1981年 | フルーツボウル | Murmansk | Memphis |
| 1982年 | 椅子 | First Chair | Memphis |
| 1983年 | テーブル | Mandarin Table | Memphis |
| 1984年 | 椅子 | Eastside Chair | Knoll |
| 1985年 | 花瓶 | Aldebaran Vase | Memphis |
| 1986年 | テーブル | Park Table | Memphis |
| 1988年 | 照明 | Treetops | Memphis |
| 1990年 | ジュエリー | Cleto Munari Collection | Cleto Munari |
| 1992年 | 花瓶 | Shiva Vase | Design Gallery Milano |
| 1999年 | セラミック | Ceramics of Darkness | Bitossi |
| 2000年 | グラス | Etrusco Series | Venini |
| 2003年 | 家具 | Y'a Bon Series | Moulin Rouge |
| 2004年 | 花瓶 | Kachinas | Bitossi |
| 2006年 | 照明 | Callimaco | Artemide |
Reference
- Ettore Sottsass - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Ettore_Sottsass
- Memphis Milano - Official Website
- https://www.memphis-milano.com
- Design Museum - Ettore Sottsass
- https://designmuseum.org/designers/ettore-sottsass
- Triennale Milano - Ettore Sottsass Archive
- https://www.triennale.org/en/archive/ettore-sottsass
- MoMA - Ettore Sottsass Collection
- https://www.moma.org/artists/5523
- Vitra Design Museum - Ettore Sottsass
- https://www.design-museum.de/en/collection/100-masterpieces/detailseiten/carlton-ettore-sottsass.html
- The Met Museum - Ettore Sottsass Works
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search#!?q=Ettore%20Sottsass