5070 サラダセットは、イタリアの巨匠エットレ・ソットサスが1978年にアレッシィのために手がけた調味料セットである。オイル、ビネガー、塩、胡椒という食卓に欠かせない四つの調味料を、一つの優美なフォルムに収めたこの作品は、発表から半世紀近くを経た今日もなお生産が続けられ、「インダストリアル・スタンダード」の称号を得るに至った稀有なデザインプロダクトである。

当初、アレッシィがホテルやレストラン向けの業務用品を専門としていた時代に、プロフェッショナルユースを念頭に開発された本作は、その審美性と機能性の高次な融合により、瞬く間に家庭用としても広く受け入れられることとなった。クリスタルガラスの透明な容器と、鏡面仕上げのステンレススチールが織りなす端正な佇まいは、1980年代以降のデザイン潮流を先取りするものであった。

特徴・コンセプト

本作品の最も顕著な特徴は、アーチ状のハンドルによって四つの容器を一度に運ぶことを可能にした、その機能的明快さにある。ソットサスは「私がデザインするほとんどすべての作品には台座がある。形を台座の上に置くと、その形は即座により重要に、より堅固になる。それは小さなモニュメントとなるのだ」と語っており、本作においてもステンレス製の台座が彫刻的な存在感を強調しながら、安定性を確保する重要な役割を果たしている。

素材と構造

容器にはクリスタリンガラスを採用し、内容物と残量を一目で確認できる実用性を備える。各容器の蓋には18/10ステンレススチールの鏡面仕上げドームが冠され、塩と胡椒用には適切な穴が設けられている。オイルとビネガー用の容器には液だれ防止のストッパーが装備され、業務用途にも耐えうる堅牢さを誇る。

デザイン言語

ハンドルのアーチ形状は、各容器のキャップに施されたアーチ形状と呼応し、統一されたデザイン言語を構築している。ガラスとスチールという限られた素材パレットは、洗練されたエレガンスを醸し出しながら、調味料を入れた際にその色彩が作品に生命を吹き込む。1986年のMetropolis誌において「サラダのための香水」と評されたように、その繊細なシルエットは香水瓶を想起させる優雅さを湛えている。

開発エピソード

5070の原案では、台座に溶接された二本の中央ピンにオイルとビネガーの容器を差し込む構造が構想されていた。容器の中央に溝を設け、そこにピンを通すという革新的なアイデアであったが、ガラス加工の技術的制約により実現には至らなかった。そこでソットサスは発想を転換し、ピンを外側に配置して容器を側面から支持する現在の構造を編み出した。この制約が、かえって四つの容器が調和しながら寄り添う印象的なフォルムを生み出す契機となったのである。

1970年代初頭、アレッシィのクルシナッロ工場を訪れたソットサスは、若き経営者アルベルト・アレッシィに深い印象を与えた。アルベルトは後年、「エットレ・ソットサスはオリベッティでの仕事で名声を確立しており、ラディカルデザインの導師として知られていた。彼は私が出会った最初の真に国際的な人物であり、哲学者のようにカリスマに満ち、あらゆることについて興味深い見解を持っていた」と回想している。ソットサスとの対話を通じて、アレッシィはデザインの高尚なテーマと産業が社会に果たす役割について深く思索するようになり、これが後の「デザインの工場」としてのアレッシィの変革へとつながっていった。

評価と影響

5070 サラダセットは、その審美性と機能性の両立により「真のインダストリアル・スタンダード」と称されるに至った。シンプルな数本の線で、調味料セットという日常的な器物の原型的な姿と物質性を高めるソットサスの才能の証左として、デザイン史において高く評価されている。

アレッシィの製品群は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ポンピドゥー・センター、ウィーン応用美術館、メトロポリタン美術館、スミソニアンクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館、ミラノ・トリエンナーレなど、世界有数の美術館の永久コレクションに収蔵されており、本作もまたその卓越したデザインにより、現代プロダクトデザインの金字塔として認識されている。

発表当時、本作は1980年代を特徴づけることになるデザインスタイルの先駆けとして、時代を先取りした実用主義的デザインと評された。ソットサスが後に共同設立するメンフィス・グループの美学を予見させる要素も見られ、機能主義を超えた「官能的で刺激的な」デザインを追求したソットサスの思想が凝縮されている。

基本情報

製品名 5070 サラダセット / 5070 Salad Set
デザイナー エットレ・ソットサス / Ettore Sottsass
ブランド アレッシィ / Alessi
発表年 1978年
素材 18/10ステンレススチール(鏡面仕上げ)、クリスタリンガラス
寸法 幅175mm × 奥行80mm × 高さ190mm
構成 オイル容器、ビネガー容器、塩入れ、胡椒入れ(4点セット)
生産国 イタリア
コレクション Programma 5

デザイナーについて

エットレ・ソットサス(1917-2007)は、20世紀後半のイタリアデザインを牽引した建築家・デザイナーである。オーストリアのインスブルックに生まれ、建築家である父の影響のもとトリノで建築を学んだ。1958年よりオリベッティ社のデザインコンサルタントを務め、1969年に発表した真紅のタイプライター「ヴァレンタイン」をはじめとする革新的なプロダクトで国際的名声を確立した。

1981年には、ポストモダンデザインの象徴となるメンフィス・グループを共同設立。鮮やかな色彩、大胆な幾何学形態、そして従来のデザイン規範への挑戦的姿勢で知られるその活動は、現代デザインに多大な影響を及ぼした。「機能主義だけでは不十分だ。デザインは官能的で刺激的でなければならない」という彼の言葉は、硬直した合理主義からの脱却を目指したその思想を端的に表している。家具、ガラス、セラミック、ジュエリー、建築に至るまで、その創作は多岐にわたり、世界中の主要美術館のコレクションに収蔵されている。