アラベスコ・テーブルが長く愛される理由

アラベスコ・テーブルは、イタリアの建築家カルロ・モリーノが1949年にトリノの芸術書出版者ヴラディ・オレンゴ侯爵の邸宅「カーサ・オレンゴ」のために設計したコーヒーテーブルである。一枚の曲木合板を連続的に曲げて形成された彫刻的な脚部に五つの不規則な開口部を穿ち、シュルレアリスト画家レオノール・フィニの裸婦素描から着想を得た不規則な輪郭のガラス天板を載せたこの作品は、20世紀イタリアデザインを代表する傑作として国際的に認知されている。

オリジナルは特定の空間のための一点物として制作されたが、イタリアの家具メーカー、ザノッタが1981年よりモリーノのアーカイブ研究に着手し、2020年に「モリーノ・コレクションCM 2020」としてアラベスコを含む作品群をオマージュとして発表した。現行のザノッタ版アラベスコCM(型番697)は、アジェンツィア・デル・デマニオ(イタリア国有財産庁)からの独占ライセンスのもとで製造されている。ヴィクトリア&アルバート博物館やブルックリン美術館などの主要美術館にオリジナルが収蔵されており、モリーノの家具デザインの中でも最も象徴的な作品として位置づけられている。

本ページでは、アラベスコ・テーブルの購入を検討されている方に向けて、正規品の仕様・素材・価格、類似作品との比較、暮らしへの取り入れ方、メンテナンス方法、購入方法、よくある質問まで、購入判断に必要な情報を網羅的にお伝えする。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

現行のアラベスコCMは、ザノッタ社がカルロ・モリーノの作品、図面、文書に関するすべての知的財産権を管理するイタリア国家(イタリア民法第586条に基づく)の独占ライセンスのもとで製造している。ザノッタはこれを「復刻」ではなく、モリーノへの「オマージュ」と位置づけており、オリジナルの設計思想を忠実に継承しながら現代の製造技術と品質基準に適合させている。

正式名称 アラベスコCM / Arabesco CM(型番697)
デザイナー カルロ・モリーノ(Carlo Mollino, 1905–1973) / イタリア
デザイン年 1949年(オリジナル:カーサ・オレンゴのために設計)
オリジナル製造 アペッリ・エ・ヴァレジオ(Apelli & Varesio)、トリノ
現行製造 ザノッタ(Zanotta S.p.A.)、イタリア
ライセンス アジェンツィア・デル・デマニオ(イタリア国有財産庁)からの独占ライセンス
分類 コーヒーテーブル / スモールテーブル
フレーム 曲木合板(ベントプライウッド)、オーク突板貼り、ワックス仕上げニス
天板(上段) 強化板ガラス、厚さ10mm
棚板(下段) 強化板ガラス、厚さ8mm
接合 フレームと天板はインターナリー・スレッデッド・スクリュー(内部ネジ式金具)で固定
サイズ 幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cm
仕上げバリエーション ナチュラルオーク(エクストラクリアガラス)、ブラックステインオーク(スモーキーグレーガラス)
参考価格帯(税込目安) 約€3,000〜3,800(欧州)、約$4,500〜5,000(米国)。日本国内は正規取扱店に要問合せ
納期 受注生産、約11〜12週間
収蔵美術館(オリジナル) ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)、ブルックリン美術館(ニューヨーク)

アラベスコの構造的核心は、一枚の曲木合板から形成された有機的なフレームにある。オリジナル製造元のアペッリ・エ・ヴァレジオでは、薄い楓材の層を重ねて接着し加熱成形する手法が開発された。フレームに穿たれた五つの不規則な開口部は、モリーノ自身の記述によれば「曲げた木に穴を開けることで質量を取り除き、視覚的に軽やかにする」ための設計であり、充と空、曲線と逆曲線が織りなす構造は、構造的強度を確保しながら宙に浮くような軽やかさを実現している。上段のガラス天板と下段のガラス棚板という二層構造は、マガジンラックとしての実用性も兼ね備えている。

類似商品・競合との比較

アラベスコ・テーブルは「彫刻的コーヒーテーブル」という固有の領域に位置し、シュルレアリスムの芸術性と家具の実用性を融合させた唯一無二の存在である。同カテゴリの名作コーヒーテーブルとの比較を以下に示す。

比較項目 アラベスコ・テーブル(ザノッタ) ノグチ コーヒーテーブル(Vitra / Herman Miller) IN-50 コーヒーテーブル(カッシーナ)
デザイナー カルロ・モリーノ イサム・ノグチ イサム・ノグチ
デザイン年 1949年 1944年 1944年
デザインの源泉 シュルレアリスム(レオノール・フィニ、ジャン・アルプ、ダリ) 東洋と西洋の美意識の融合、彫刻的有機フォルム ノグチの彫刻的造形の家具への昇華
主要素材 曲木合板(オーク)+強化ガラス2層 無垢材脚部+ガラス天板 無垢材脚部+ガラス天板
天板形状 不規則輪郭(裸婦シルエットに着想) 変形楕円(三角形的有機形状) フリーフォーム
構造的特徴 開口部による質量の除去、二層ガラス構造(マガジンラック機能) 二つの有機的脚部がガラス天板を支持 三つの脚部による安定構造
生産性質 国家ライセンスによる独占生産(ザノッタ) 正規ライセンス生産(Vitra / Herman Miller) 正規ライセンス生産(カッシーナ)
参考価格帯 約€3,000〜3,800 約$2,000〜 / ¥300,000〜 約¥500,000〜

選び方の指針

シュルレアリスムの官能性とイタリアンクラフツマンシップの精髄を空間に取り入れたい方には、アラベスコ・テーブルが最適である。曲木合板の有機的フレームと不規則な輪郭のガラス天板が生み出す造形は、リビングに置くだけで空間を美術館のような知的な場に変容させる。二層構造による収納機能も実用上の利点である。

より普遍的で穏やかな有機フォルムを求める方には、ノグチ コーヒーテーブルが適している。東洋と西洋の美意識を融合させた無垢材の脚部とガラス天板の構成は、幅広いインテリアに調和する汎用性を持つ。アラベスコがシュルレアリスムの「異質さ」を内包するのに対し、ノグチのテーブルは「静謐な調和」を体現する。

いずれも彫刻家・建築家が手がけた芸術的コーヒーテーブルであるが、アラベスコはモリーノの「すべては幻想的である限り許される」という信条に基づく挑発的な造形美を、ノグチは彫刻的均衡の美を、それぞれの空間にもたらす。

使用感と暮らしへの取り入れ方

天板の使い勝手とサイズ感

アラベスコ・テーブルは幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cmというコーヒーテーブルとしてゆとりのあるサイズを持つ。高さ45cmは一般的なソファの座面高(約40cm前後)との相性がよく、ソファに座った状態での飲み物や書籍へのアクセスが容易である。不規則な輪郭のガラス天板は、見た目の造形美に加え、角がないため動線の中でも身体に優しい形状である。

上段の強化ガラス天板(10mm厚)は日常的なコーヒーテーブルとしての使用に十分な耐久性を持つ。下段のガラス棚板(8mm厚)は雑誌や書籍を収納するマガジンラックとして機能し、美的造形と実用性を両立させている。ガラスの透明性により収納物が見えるため、美しい表紙のアートブックや写真集を「見せる収納」として楽しむことができる。

空間別のコーディネート提案

リビングにおいて、アラベスコ・テーブルは空間の主役となる存在感を持つ。ソファの前に配置するセンターテーブルとして最も力を発揮する。ナチュラルオーク仕上げ(エクストラクリアガラス)は、明るくニュートラルな空間に有機的な温かみを添える。ブラックステインオーク仕上げ(スモーキーグレーガラス)は、より劇的でドラマティックな空間演出に適している。

書斎やライブラリーにおいては、ソファやラウンジチェアの傍らに配置し、読書テーブル兼マガジンラックとして活用できる。モリーノ自身がオレンゴ侯爵の邸宅のリビングルームのために設計した経緯から、知的な書斎空間との親和性は本来的に高い。

ギャラリーやショールームなどの商業空間では、アラベスコ・テーブルはそれ自体がアート作品として空間を格上げする。モリーノの伝記作家フルヴィオ・フェラーリが評したように、この家具は「それが創られた唯一の部屋で完璧に機能するジグソーパズルのピース」であるが、同時にその圧倒的な造形力により、どのような空間に置かれても唯一無二の存在感を放つ。

生活スタイル別の提案

イタリアンデザインやシュルレアリスム芸術に深い関心を持つコレクターにとって、アラベスコ・テーブルはコレクションの核となる一点である。オリジナル作品の希少性(世界に数点のみ現存)を考えれば、ザノッタ版は国家ライセンスに基づく公認のオマージュとして、モリーノの造形世界に触れる現実的な手段である。

ミニマルな空間に一点の「異質さ」を取り入れたい方にも推奨される。シンプルなモノトーンの空間に曲木合板の有機的フレームが加わることで、空間全体に知的な緊張感と温かみが生まれる。

なお、ガラス天板の不規則な輪郭とフレームの開口部は、小さな子どものいる家庭では安全面への配慮が必要である。強化ガラスではあるが、貴重なデザイン家具として丁寧な取り扱いが求められる。

経年変化とメンテナンス

素材ごとの経年変化

曲木合板フレームのオーク突板はワックス仕上げニスが施されており、経年使用により木肌に深みのある色艶が加わっていく。ナチュラルオーク仕上げは時間とともに蜂蜜色の温かみを帯び、ブラックステイン仕上げは使い込むほどに落ち着いた黒の奥行きが増す。いずれも木材が持つ自然な経年変化の美しさを楽しめる素材選定である。強化ガラスの天板と棚板は経年による大きな変質は生じないが、日常使用に伴う微細な傷が蓄積する可能性がある。

日常メンテナンス

曲木合板フレームは、柔らかい乾いた布での清掃が基本である。ワックス仕上げの特性を維持するため、水分を多く含んだ布での清掃は避け、必要に応じて家具用ワックスを薄く塗布して木肌の保護と艶を回復させる。直射日光の長時間にわたる照射は、オーク突板の退色やワックスの劣化を促進するため、設置場所には配慮されたい。

ガラス天板と棚板は、ガラスクリーナーまたは薄く水を含ませた布で拭き取り、乾いた布で仕上げる。研磨剤を含む洗剤は使用しない。フレームとガラスの接合部(内部ネジ式金具)は定期的に緩みがないか確認することを推奨する。

修理・パーツ対応

ザノッタ社の正規品については、ザノッタ正規販売店を通じた修理・パーツ相談が可能である。ガラス天板や棚板の破損時の交換、フレームの補修などの対応については、購入時の販売店またはザノッタのカスタマーサービスに問い合わせを推奨する。曲木合板フレームの構造的損傷については、複雑な曲線形状のため専門的な修理が必要となる場合がある。

どこで買うか:正規販売店と購入方法

日本国内での購入

日本国内ではIL DESIGN(イル デザイン、東京デザインセンター内)がザノッタ製品をイタリアの正規代理店より直輸入販売している。張地サンプルや資料の提供にも対応しており、アラベスコCMの価格・在庫・納期については直接の問い合わせが必要である。metrocs(メトロクス)もザノッタの正規取扱いを行っている。日本国内の参考価格は、海外販売価格(約€3,000〜3,800)に関税・輸入消費税・販売店マージンが加算される。

海外での購入

欧州ではザノッタ公式サイト(zanotta.com)からの購入のほか、twentytwentyone(ロンドン)、Chaplins(ロンドン)、LONGHO(イタリア)、Ciat Design(欧州)、Martinel Store(イタリア)などの正規ディーラーで購入可能である。米国ではhive modern、duplex design(duplexdsgn.com)、Switch Modernなどの正規ディーラーが対応している。Pamono(国際プラットフォーム)では約$4,793で販売されている実績がある。

実物を確認できる場所

ザノッタのショールーム(ミラノ本社)およびザノッタ正規販売店で実物または素材サンプルを確認できる可能性がある。展示状況は時期・店舗により異なるため来訪前の問い合わせを推奨する。オリジナル作品はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、ニューヨークのブルックリン美術館で鑑賞可能である。

中古・ヴィンテージ市場

ザノッタ版アラベスコCMは1stDibsやPamono、Karl Kemp Antiquesなどの国際プラットフォームで中古品が取引されることがある。ザノッタによる初期生産品(1980年代〜)も存在する。購入時にはフレーム裏面の「zanotta made in Italy」スタンプの確認、曲木合板の割れ・剥離の有無、ガラスの欠け・ヒビの確認が重要である。

なお、1949年のオリジナル作品は世界に数点のみ現存する極めて希少な存在であり、コレクター市場では数百万ドル級の評価を受けている。2005年にはカーサ・オレンゴのためにモリーノがデザインした別の机がクリスティーズで約380万ドルで落札され、近代家具のオークション史上最高額を記録した。

購入時チェックリスト

  • 正規品であることの確認(フレーム裏面の「zanotta made in Italy」スタンプ)
  • 仕上げの選択(ナチュラルオーク+エクストラクリアガラス / ブラックステインオーク+スモーキーグレーガラス)
  • 設置場所の採寸(幅129cm × 奥行53cm × 高さ45cm。ソファとの距離・動線を考慮)
  • 床面の確認(フレームの接地点と床材の相性。デリケートな床面にはラグの使用を推奨)
  • 搬入経路の確認(幅129cmのため、ドア幅・通路幅の確認が必要)
  • 納期の確認(受注生産、約11〜12週間。在庫品がある場合はこの限りではない)
  • ガラスの取り扱いに関する注意事項の確認(強化ガラスだが衝撃には注意)
  • 中古品の場合:zanottaスタンプ、曲木合板の割れ・突板の剥離、ガラスの欠け・ヒビ、金具の緩みを確認

コーディネート事例

イタリアン・シュルレアリスム——モリーノの官能的世界

アラベスコ・テーブルの最も劇的なコーディネートは、モリーノの世界観を空間全体で展開する構成である。ザノッタのモリーノ・コレクションCM 2020から他の作品を組み合わせ、モリーノが追求した官能的な曲線と有機的フォルムで統一する。ベルベットの深い色調のソファ、シュルレアリスト作品のアートプリント、間接照明による陰影の演出が、モリーノの「すべては幻想的である限り許される」という信条を空間に体現する。

イタリアンモダン・コレクション

アラベスコ・テーブルを、イタリアンモダンデザインの文脈に置くコーディネートも効果的である。ジオ・ポンティのスーパーレッジェーラチェア、フランコ・アルビニのマルガリータチェア、あるいはカッシーナの名作ソファなど、戦後イタリアデザインの名作を組み合わせることで、イタリアが生んだ創造性の多様性と達成を空間に凝縮できる。

コンテンポラリー・ギャラリースペース

白い壁面とコンクリートの床というギャラリー的空間に、アラベスコ・テーブルを一点配置する構成は、この作品の彫刻的造形を最大限に際立たせる。ナチュラルオーク仕上げのフレームとエクストラクリアガラスの透明感が、ミニマルな空間の中で有機的な生命力を放つ。周囲には最小限の家具のみを配し、アラベスコ・テーブル自体を空間の主題とする。

よくある質問

アラベスコ・テーブルの正規品の価格はどのくらいですか?
欧州での参考価格は約€3,000〜3,800、米国では約$4,500〜5,000程度である。日本国内価格はIL DESIGNやmetrocsなどのザノッタ正規取扱店に直接問い合わせが必要である。海外販売価格に関税・輸入消費税・販売店マージンが加算される。
どこで購入できますか?
日本国内ではIL DESIGN(東京デザインセンター)、metrocs等のザノッタ正規取扱店で購入可能。海外ではザノッタ公式サイト、twentytwentyone(ロンドン)、hive modern(米国)、Pamono等の正規ディーラーで購入できる。
実物を確認できる場所はありますか?
ザノッタのショールーム(ミラノ)および正規販売店で確認できる可能性がある(展示状況は要問合せ)。オリジナル作品はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、ニューヨークのブルックリン美術館で鑑賞できる。
納期はどのくらいかかりますか?
受注生産で約11〜12週間が目安である。在庫品がある場合はより短い期間で入手可能な場合もある。日本への輸入の場合は国際配送期間も考慮が必要。
メンテナンスはどのようにすればよいですか?
曲木合板フレームは柔らかい乾いた布で清掃し、必要に応じて家具用ワックスを薄く塗布する。ガラスはガラスクリーナーで拭き取る。直射日光の長時間照射は避ける。接合金具の緩みを定期的に確認する。
リプロダクトはありますか?
カルロ・モリーノの作品、図面、文書に関するすべての知的財産権はイタリア民法第586条に基づきイタリア国家に帰属している。ザノッタがアジェンツィア・デル・デマニオからの独占ライセンスのもとで製造する正規品が唯一の入手手段であり、リプロダクト品は市場に存在しない。
ガラス天板は割れないですか?
天板(10mm厚)・棚板(8mm厚)ともに強化板ガラスが使用されており、通常のガラスより高い耐衝撃性を持つ。ただし、強い衝撃や落下物による破損は起こり得るため、丁寧な取り扱いが望ましい。万が一の破損時はザノッタ正規販売店を通じたガラス交換の相談を推奨する。
他に検討すべきモリーノやザノッタの名作は?
ザノッタのモリーノ・コレクションCM 2020には、アラベスコのほかにも複数のテーブル・チェアが含まれている。ザノッタの他の代表作としてはサッコ(ビーンバッグチェア、1968年)、メッツァドロ・スツール(カスティリオーニ兄弟、1957年)、セッラ・スツール(カスティリオーニ兄弟、1957年)、ボビーワゴン(ジョエ・コロンボ、1970年)などがある。それぞれの作品について詳しくは、当サイトの各紹介ページをご参照いただきたい。