チェア
ヴァーテブラ Vertebra
背中を預ければ背もたれが倒れ、同じ動きで座面が前へ滑り出す。1976年に発表されたヴァーテブラは、調節の幅を広げるかわりに、操作する機構そのものを減らした事務用椅子である。機構の特許を持つオランダの会社が地域ごとに生産を許諾し、イタリア、アメリカ、日本でそれぞれの市場向けに作られた。
ポリプロピレンチェア Polypropylene Chair
家具に使われていなかったポリプロピレンを椅子に用いた最初の量産品として、1963年に発売された。高価なファイバーグラスに代わる素材を探していたロビン・デイは、シェルの縁を外側へ巻き込んで剛性を確保し、脚部との接合を座裏に隠すことで、一つの型から大量に取れる形にまとめた。
カバー・チェア Cover Chair
トーマス・ベンツェンが2013年にムートのために設計したアームチェア。背もたれは座面の後ろで左右へ回り込み、そのまま前へ折れて肘掛けになる。この成形合板の面が前脚と後脚を結ぶため、木製のアームチェアで通例となる脚のあいだの貫を持たない。
リザルト・チェア Result Chair
フリソ・クラーマーとヴィム・リートフェルトが1958年に設計した椅子。打ち抜いた鋼板をU字形に折り曲げた脚が、成形合板の座と背を支える。1960年代から70年代のオランダの学校で大量に使われ、2017年からHAYがアーレンドの許諾を受けて生産している。
プロナ Plona
1970年、ジャンカルロ・ピレッティは肘掛けのある折りたたみ椅子をつくった。座面から背、肘の立ち上がりまでを一枚のシェルにまとめ、側面の一点で畳む。プロナは発表の2年後にニューヨーク近代美術館へ収蔵され、現在も生産が続いている。
セプテンバー September
黒く塗られた細いスチールパイプが半円を描き、その内側に三角形の座が張られる。1977年に発表されたセプテンバーは、脚の位置する3点だけで円と三角を結び合わせた椅子である。
ヒモイス Himo Isu
戦後まもない日本で、限られた材料と設備でつくれる椅子として考えられた一脚。ナラの直材を組み、座と背には紐を縦横に張る。詰め物も張り地も持たず、クッションはどの家にもあった座布団で代える。1955年、銀座松屋に設けられたグッド・デザイン・セクションに選ばれている。
トリイスツール Torii Stool
1956年に発表された籐のスツール。正面から見ると左右対称で、脚と座をつなぐ横材が鳥居を思わせる。季節の家具とされてきた籐を、通年で使う室内家具の素材として扱い直した一脚である。
スネークチェア Snake Chair
床に置かれた輪から座面を経て背もたれまで、1本のスチールパイプが途切れずに続く。照明で知られるポール・ヘニングセンが1930年代初頭に手がけたこの椅子は、発表当時は量産に至らないまま図面と写真のなかに残され、近年になって生産が始まった。
ヴィクトリアン・レイリング・チェア Victorian Railings Chair
トム・ディクソンが1986年に制作した肘掛け椅子。19世紀の装飾鉄柵を背に、マンホールの蓋を座面に用いる。図面からではなく、集まった廃材の形と寸法から椅子の姿が決まっている。
ファットチェア Fat Chair
細いスチールの骨組みに、ラッシュを編んだ面を組み合わせたアームチェア。ロンドンの工房で注文に応じてつくられていた設計を、カッペリーニが量産向けに作り替えた。同じ設計者のSチェアでは手で編まれるラッシュが、この機種では機械で編まれている。
パスティルチェア Pastil Chair
エーロ・アールニオが1967年に設計し、1968年にアスコから発表された椅子。ガラス繊維強化ポリエステルの上下二つの殻を接合した扁平な球体で、脚を持たず、丸い底で床に接して揺れる。ジャイロチェアの名でも知られる。アスコによる製造は1980年で途絶え、1991年に再生産が始まった。
バードチェア&オットマン Bird Chair and Ottoman
曲げたスチールロッドを溶接した格子で身体を受けるベルトイアのワイヤー家具のうち、背を頭の高さまで伸ばしたラウンジチェア。座面高約37cmの低い座と、同じ高さに揃えたオットマンを組み合わせ、腰から足先までを預けて座る。1952年の発表以来、ノルが生産を続けている。
バスケットチェア Basket Chair
ナナ・ディッツェルとヨルゲン・ディッツェルが1950年に設計したラウンジチェア。籐を編んだ椀形のシェルを木のフレームに掛け、身体を受け止める面と荷重を支える骨組みを分けている。籠職人と家具職人の協働でつくられ、2014年からはケタルが製造している。
ジン シェーズロング Djinn Chaise Longue
オリヴィエ・ムルグがエアボーンのために設計した「ジン」シリーズの寝椅子。鋼管の骨組みにウレタンフォームを重ね、全体をファスナーで着脱できるジャージーのカバーで覆う。骨組みを外に見せず、背から脚先まで一続きの起伏として現れる。1968年の映画『2001年宇宙の旅』の室内に用いられ、広く知られるようになった。MoMA、V&A、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー・センターが収蔵している。