概要

LC1 バスキュラントチェアは、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが1928年に設計したラウンジチェアである。原名の「1 Fauteuil à dossier basculant(傾く背もたれを持つ肘掛椅子)」が示すとおり、背もたれが軸を中心に傾く。パリ郊外のヴィラ・チャーチのために設計され、翌1929年のパリ・サロン・ドートンヌで発表された。現在はカッシーナが製造している。

特徴・コンセプト

傾く背もたれ

背もたれは左右の軸を中心に傾く。使う人が体重を移すと、それに応じて角度が変わる。リクライニングのための機構やロックを持たず、軸一本で背の角度を可変にしている。部品を増やさずに姿勢の変化を受け止める方法として、この構成が選ばれている。

座面と背もたれには革または布が張られ、身体が触れる面はいずれも柔らかい。骨組みのスチールパイプと張地の対比が、そのまま外観に現れる。

革のバンドによるアームレスト

アームレストは、フレームのあいだに革のバンドを渡しただけの構成である。硬い部材を置かないため、腕を載せた位置でバンドがたわみ、体格の違いを吸収する。前方が広く後方に向かって細くなる平面形も含めて、遠征用の折りたたみ椅子に見られた構成が読み替えられている。

エピソード

LC1の最初の型は、パリ郊外ヴィル・ダヴレーのヴィラ・チャーチのために設計された。1927年10月にシャルロット・ペリアンがアトリエに加わり、以後1937年まで続く三者の協働のなかで、家具の設計が本格的に進むことになる。

1929年のサロン・ドートンヌでは、LC2 ソファLC4 シェーズロングとともに「住居設備(Équipement intérieur d'une habitation)」と題した展示の一部として発表された。装飾を排した構成は当時の家具の見え方とは大きく異なり、受け止め方は分かれた。

1965年、カッシーナが製造権を取得して生産を始めた。各製品にはデザイナーの署名と製造番号が刻印される。2022年に製品名が原名の表記へ改められ、2023年のiMaestriコレクション50周年を機に、遺族および各財団との合意のもとで「LC」の接頭辞が外された。

評価と影響

軸一本で背の角度を可変にするという解き方は、簡潔な構成のなかに機能を収めた例として参照される。同じ年に設計されたLC4 シェーズロングも、ロック機構を持たずに角度を保つ点で共通する。ヴィラ・チャーチ版、1929年のサロン・ドートンヌ版、1930年のUAM(近代芸術家連盟)版など、初期には複数の型がつくられた。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、クロームメッキのスチールパイプとキャンバスによる1928年の椅子を「Armchair with a Tilting Back(Siège à Dossier Basculant)」として収蔵番号281.1934で登録している(1934年、トーネット・ブラザーズ社からの寄贈。寸法66.3×65.1×66cm)。

基本情報

名称 1 Fauteuil à dossier basculant(旧称 LC1、バスキュラントチェア)
デザイナー ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
ブランド カッシーナ(Cassina/1965年〜)
発表年 1928年設計/1929年 サロン・ドートンヌで発表
デザインの成立国 フランス
分類 ラウンジチェア/アームチェア
主要素材 スチールパイプ(クロームメッキまたは艶消し黒塗装)、座面・背もたれ:革または毛皮、アームレスト:革のバンド
機構 軸を中心に傾く背もたれ
初期の型 1928年ヴィラ・チャーチ版、1929年サロン・ドートンヌ版、1930年UAM版
収蔵 ニューヨーク近代美術館(281.1934)

Reference

Armchair with a Tilting Back | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/3178
6 Table tube d'avion(名称変更とライセンスについて)| Cassina
https://www.cassina.com/ww/en/products/lc6.html