概要
FK ラウンジチェアは、デンマークのプレベン・ファブリシウスとヨルゲン・カストホルムが設計したFKシェルチェアを、ラウンジ向けに展開した回転式の肘掛け椅子である。座から背、肘掛けまでが一続きになった器状のシェルを、三本脚のアルミニウムのベースが支える。当初はドイツのキル・インターナショナルが製造し、のちにウォルター・ノルへ移って現在も型番6727として生産が続いている。机に向かうための背の高いFKチェアに対し、こちらは座面を下げ、シェルの幅を広げてある。
特徴・コンセプト
肘掛けを別の部材にしない輪郭
シェルは深い器の形をしており、その左右の縁が前方へ回り込んでそのまま肘掛けになる。腕を載せる部材を後から取り付けるのではなく、一枚の面の輪郭を操作することで肘掛けを得ている。腰と背中、両脇を一つの面が受け止めるため、側面に支えを足す必要がない。
横から見たとき、輪郭は座面の高さで途切れず、背から肘掛け、座の下端まで一本の線として通る。ウォルター・ノルは、このシェルが1960年代の造形に新しい方向を示したと説明している。
座る姿勢に合わせて低く、広くとる
幅81cm、奥行78cm、高さ84cm、座面高41cm、座の奥行49cmという寸法は、体をあずけて後ろに傾く姿勢を前提としたものである。机に向かう椅子は上体を起こして作業するため座面を高く、背を高くとるが、ラウンジでは腰を沈めて背中を預ける。座面を下げ、座の奥行を増し、シェルの幅を広げることで、腰から肩までを面で支えながら、身体の脇にゆとりを残している。
全高を抑えたことで、背もたれが座る人の視線を遮らない。複数脚を向かい合わせて置いたときや、ソファと組み合わせたときに、椅子が空間を仕切らずに済む。
三方だけに伸ばすベース
ベースはアルミニウム製で、シェルの底の一点から三方へ伸びる。四方に脚を出す構成に比べて床に見える線が減るため、厚みのあるシェルに対して脚部が軽く見える。ウォルター・ノルはこの対比を、量感と軽さを一つの形に収めたものとして説明している。
仕上げは磨きと黒の粉体塗装から選べる。座面は360度回転し、脚の先にはグライドが付く。ラウンジでは話す相手も向きも定まらないため、椅子を持ち上げずに体の向きを変えられる。
外側まで革で包む
FKチェアが硬い外殻を見せ、その上に革の座を重ねるのに対し、FK ラウンジチェアはシェルの外側までを革で覆う。座と背にはコールドフォームの成形パーツが入り、その上から革が張られる。硬い面が表に出ないため、事務空間向けの椅子でありながら住宅やホテルのラウンジにも置ける表情になる。
革はウォルター・ノルが用意する種類のなかから選ぶ。深い器の形に革を張り込む工程は手作業になる。
エピソード
ファブリシウスは家具職人として、カストホルムは鍛冶職人として修業し、コペンハーゲンでインテリアデザインを学ぶ過程で出会っている。1961年、二人は共同の設計事務所を構えた。ウォルター・ノルによれば、二人が置いた目標は形と素材と人体への納まりを詰めきることであり、行き着く先として時間が経っても古びない形を求めていた。
二人の仕事は、ドイツの家具製造業者アルフレート・キルの目にとまる。シュトゥットガルト近郊フェルバッハにあったキルの工場で製造することになり、事務空間と住宅の双方に向けた製品群がこの関係から生まれた。FKもそのひとつである。ウォルター・ノルは、FKの最初の設計が1967年のケルンの家具見本市で広く公開され、その直後からこの椅子に強い関心が集まったと記している。
1969年、FKシェルチェアは連邦賞「グーテ・フォルム」を受けた。この賞はドイツ連邦経済省が設け、ドイツ・デザイン協議会が運営したもので、授与はこの年が最初である。ファブリシウスとカストホルムの協働自体は1968年に終わっており、FKは7年ほどの共同作業の後半にあたる仕事となった。
製造はのちにウォルター・ノルへ移り、現在も同社のカタログに残っている。
評価と影響
FKは一般に、北欧の設計者がドイツの製造業者と組んで生まれた1960年代の仕事の代表例として扱われる。回転するベースの上に器状のシェルを載せる構成は、当時の事務空間や会議室で広く採られた形でもある。
ラウンジチェアは、その形を住宅の側へ寄せた型として、背の高いシェルチェアと並行して生産が続いている。
受賞歴
- 1969年 連邦賞「グーテ・フォルム」(Bundespreis Gute Form)/FKシェルチェアに対して。同賞はこの年に初めて授与された
プレベン・ファブリシウスの設計思想や経歴について詳しくはプレベン・ファブリシウスプロフィールページをご覧ください。
ヨルゲン・カストホルムの設計思想や経歴について詳しくはヨルゲン・カストホルムプロフィールページをご覧ください。
ウォルター・ノルの歴史や他の製品について詳しくはウォルター・ノルブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | プレベン・ファブリシウス(Preben Fabricius)、ヨルゲン・カストホルム(Jørgen Kastholm) |
|---|---|
| ブランド | ウォルター・ノル(Walter Knoll) |
| 発表年 | 1967年(FKの設計の公開) |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 当初の製造 | キル・インターナショナル(ドイツ) |
| 分類 | ラウンジチェア |
| 型番 | FK 6727-3G |
| 主要素材 | アルミニウム、コールドフォーム、レザー |
| サイズ | 幅81cm × 奥行78cm × 高さ84cm、座面高41cm、座奥行49cm、肘掛け高63cm |
| 機構 | 360度回転 |
Reference
- FK Lounge Chair | Walter Knoll
- https://www.walterknoll.de/en/products/lounge-chairs/fk-lounge-chair
- FK Programm | Walter Knoll
- https://www.walterknoll.de/products/family/fk
- Preben Fabricius & Jørgen Kastholm | Walter Knoll
- https://www.walterknoll.de/en/designers/jorgen-kastholm-and-preben-fabricius
- Walter Knoll FK Lounge Chair | Living Edge
- https://livingedge.com.au/chairs/lounge_chairs/walter_knoll-fk_lounge_chair/WK-FKLC.html
- German Design Council - Auslober
- https://www.german-brand-award.com/german-design-council