概要

DCWは、チャールズ&レイ・イームズが1946年に発表した成形合板の椅子である。名称は Dining height(ダイニングの高さ)、Chair(サイドチェア)、Wood base(木製脚)の頭文字による。座面・背もたれ・脚部をそれぞれ成形し、ゴム製のショックマウントで結合する。

特徴・コンセプト

一体成形を諦めて分ける

イームズ夫妻は当初、一枚の合板から座面と脚を一体成形することを目指した。だが合板は曲げられる方向と曲率に限界があり、身体に沿う曲面と脚の形を一つの部材で両立できなかった。

そこで座面、背もたれ、脚部を別々に成形し、後から結合する構成に切り替えた。部材を分けたことで、それぞれに必要な曲面を与えられる。分けた結果として、座面と背もたれの角度も個別に決められるようになった。

ゴムで結合する

座面・背もたれと脚部フレームは、ネオプレンゴムのショックマウントで留められる。金属で固定すれば結合部は硬くなるが、ゴムを介せば体重の移動に応じてわずかに動く。背を預けたときの角度が変わり、衝撃も吸収される。金属部品はショックマウントの内部だけに収まるため、外からは木の部材だけが見える。

積層数を使い分ける

座面と背もたれは5層、脚部とバックブレースは8層の合板でつくられる。層を重ねるほど硬くなるので、しなりが必要な座面は薄く、荷重を支える脚部は厚くする。同じ素材のまま、部位ごとに性質を変えている。

エピソード

成形合板の技術は、イームズ夫妻がロサンゼルスの自宅で行った実験に始まる。「カザム!マシン」と呼ばれた自作の装置では、薄いベニヤ板を接着剤とともに重ね、自転車のポンプで膨らませた圧力で曲面をつくった。

1942年、二人は米海軍から脚用の添え木(スプリント)や担架の開発を受託し、熱と圧力による成形の精度を高めた。戦後、この技術が家具へ転用されている。

初期の生産はエヴァンス・モールデッド・プライウッド・カンパニーが担当した。1949年にハーマンミラーが同社のプライウッド部門を買収して製造を引き継いだが、金属脚のDCM・LCMに需要が移り、1953年に一度生産を終えている。1994年、ショックマウントの形状を楕円形から二つの円形に改めるなどの変更を加えたうえで生産が再開された。

評価と影響

DCWは、同時期に開発されたプライウッドグループの一員として発表された。ラウンジの高さのLCW、金属脚のDCMとLCMが同じ系列に含まれる。同じシェルに異なる脚部を組み合わせるという方式は、のちのイームズ プラスチック サイドチェア DSWイームズ ワイヤーチェア アウトドアにも引き継がれた。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、成形・曲げ加工したバーチ合板とゴム製ショックマウントによる1946年のサイドチェア(モデルDCW)を収蔵番号70.1946で登録している(製造元からの寄贈。寸法74.9×48.3×54.6cm)。

基本情報

名称 DCW(ダイニングチェアウッド)/ DCW (Dining Chair Wood)
デザイナー チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)
ブランド ハーマンミラー(北米ほか)/ヴィトラ(ヨーロッパ・中東)
初期製造 エヴァンス・モールデッド・プライウッド・カンパニー(1946〜1949年)
発表年 1946年
デザインの成立国 アメリカ
分類 ダイニングチェア/サイドチェア
主要素材 成形合板(座面・背もたれ5層、脚部・バックブレース8層)、ネオプレンゴム製ショックマウント
構造 座面・背もたれ・脚部を別々に成形し、ゴムを介して結合
関連モデル LCW(ラウンジ/木製脚)、DCM(ダイニング/金属脚)、LCM(ラウンジ/金属脚)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(70.1946)

Reference