概要
ニュアージュ ブックシェルフは、シャルロット・ペリアンが1950年代に設計したモジュール式の書棚である。「Nuage」はフランス語で雲を意味する。木の棚板とアルミニウムの垂直材を組み合わせ、大きさの異なる区画を非対称に積み上げると、壁の上にできる輪郭が雲のように見える。現在はカッシーナが「I Maestri」コレクションの一つとして製造している。
特徴・コンセプト
部材を標準化する
ニュアージュを成り立たせているのは、規格化された部材の組み合わせである。金属の支持材、厚みと幅の異なる木の棚板、垂直方向を仕切る金属のブロック、色を持つパネル、引き戸、トレイ。ペリアンはこれらの要素一式を「新しい金物(nouvelle quincaillerie)」と呼んだ。ここから壁一面の構成も、小さな一台も、同じ部材で組み上げられる。
棚板の幅と厚みが一様でないのは意図によるものである。何を載せるかによって必要な寸法は変わる。部材の種類を増やすのではなく、寸法の異なる同じ部材を用意することで対応している。
空隙を残す
壁に対して非対称に配置される棚は、絵や彫刻を置くための空隙を残す。棚が壁面を埋め尽くすのではなく、空いた部分が構成の一部になる。積み方によって空隙の位置が変わるため、同じ部材でも壁ごとに異なる輪郭が生まれる。
置き方を選べる
壁に掛ける、床に置く、部屋の間仕切りとして自立させる。同じ部材の組み替えで、用途の異なる家具になる。壁付けの書棚、自立する間仕切り、サイドボード、収納ユニットといった型が、同じ体系から派生する。
素材と仕上げ
現行のカッシーナ製では、棚板にオークの突板を貼ったブロックボードが用いられ、ナチュラルまたはブラックステインのローグロス仕上げから選べる。金属部にはアルマイト加工のアルミニウム、あるいはマットブラック/ホワイトの塗装仕上げが用意されている。パネルにはアルマイト加工のアルミニウムが用いられ、複数の色から選択できる。
エピソード
着想は、ペリアンが1940年から日本に滞在した時期にさかのぼる。彼女は京都で、雲の形を思わせるかたちで壁に並べられた棚を目にしたと述べている。左右対称でない構成、人体の尺度にもとづいて標準化された部材、その組み合わせから生まれる多様な表情。日本の伝統建築に見たこの原理が、後の設計の出発点となった。
ペリアンは1940年に商工省の輸出工芸指導者として招かれて来日し、滞在は1942年まで続いた。その後は仏領インドシナに移り、フランスに戻ったのは1946年である。1953年から54年にかけての二度目の日本滞在を経て、棚と収納家具を構成するすべての部材を標準化する研究に取り組んでいる。
1952年から56年にかけて部材の体系が整えられ、諸モデルはパリのギャラリー・ステフ・シモンから世に出た。同ギャラリーは、ジャン・プルーヴェやセルジュ・ムーユらの作品を扱った場所である。2012年、カッシーナはペリアンの娘であり相続人であるペルネット・ペリアン=バルサックとの協働のもと、ニュアージュの各モデルを「I Maestri」コレクションに加えて復刻した。
評価と影響
同じ部材から異なる用途の家具を導くという考え方は、606ユニバーサルシェルビングシステムやストリングシステムにも見られる。ニュアージュは、棚板の寸法を複数用意し、非対称に積むことを前提とする点で異なる。同じペリアンの7 フォートゥイユ・トゥルナンと同様、カッシーナが生産を担っている。
シャルロット・ペリアンの設計思想や経歴について詳しくはシャルロット・ペリアンプロフィールページをご覧ください。
カッシーナの歴史や他の製品について詳しくはカッシーナブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ニュアージュ / Nuage |
|---|---|
| デザイナー | シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand) |
| ブランド | カッシーナ(Cassina I Maestri/2012年より復刻) |
| 発表年 | 1952〜1956年(着想は1940年代の日本滞在期) |
| デザインの成立国 | フランス |
| 分類 | シェルフ/モジュール式収納 |
| 主要素材 | 棚板:オーク突板のブロックボード/支持材・仕切り・パネル:アルミニウム |
| 構造 | 標準化された部材の組み合わせ。棚板の幅・厚みは複数種 |
| 仕上げ | 棚板:ナチュラル/ブラックステイン(ローグロス)/金属:アルマイト、マットブラック、マットホワイト |
| 設置方法 | 壁掛け、床置き、自立(間仕切り) |
Reference
- Nuage | Cassina
- https://www.cassina.com/ww/en/products/nuage.html