概要
モデル75 サイドボードは、アルネ・ヴォッダーがシバスト社のために設計した収納家具である。水平に伸びる本体と細く絞り込まれた脚部、引き戸による開口の広さを特徴とする。背面まで仕上げられており、壁に付けるだけでなく間仕切りとしても置ける。生産はすでに終了している。
特徴・コンセプト
裏返せる引き戸
ヴォッダーがシバストのサイドボード群で用いた機構には、扉の表裏で異なる仕上げを持たせ、取り外して裏返せるものがある。片面はチークやローズウッドの木地、もう片面は白や黒のラミネートや対照的な木材である。使い手が扉を反転させれば、同じ家具が別の表情になる。市場に流通する個体には、薄板を連ねて側面へ滑り込ませるタンブール(蛇腹)扉を備えたものもあり、仕様には幅がある。
引き戸は開いても前方へ張り出さない。開き戸では扉の幅だけ手前に空間が必要になるが、引き戸なら通路の狭い場所でも扱える。
取手を出さない
取手を突出させず、引出し前板の縁を斜めに削って指を掛ける。面から突き出る部品がないため、水平線が途切れない。鋭い水平線、わずかに丸みを帯びた稜線、先細りの脚という三つの要素の対比により、大型の収納家具でありながら床から浮いたように見える。
内部の構成
内部は可動棚板と引出しトレイ、大型の引出しプラットフォームなどで構成され、個体によって組み合わせが異なる。素材はチーク材やブラジリアン・ローズウッドで、無垢材と突板が併用される。
エピソード
シバスト社は1908年、家具職人ペーダー・オルセン・シバストによってデンマークの地方で創業した小さな木工所に始まる。1940年代に息子ヘルゲ・シバストが経営に加わり、戦後は米国向けの輸出で知られるようになった。ヴォッダーとシバストの協働は1950年代から20年以上続いている。
1957年に発表された同系列のサイドボードはミラノ・トリエンナーレで第1位を得ており、ヴォッダーの収納家具はこの時期に国際的な評価を得た。
評価と影響
生産は終了しており、入手できるのはヴィンテージ市場に限られる。ブラジリアン・ローズウッド材の個体はワシントン条約(CITES)の規制対象であり、国際取引には証明書が必要になる。
シバスト社は現在、ヴォッダーの遺族との協働により、1957年設計のサイドボードを「Sibast No 11」として復刻生産している。モデル75そのものの復刻ではないが、裏返せる扉という同じ考え方を、オークやウォールナットとカラーラミネートという現在の素材で継いでいる。
アルネ・ヴォッダーの設計思想や経歴について詳しくはアルネ・ヴォッダープロフィールページをご覧ください。
シバストの歴史や他の製品について詳しくはシバストブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | モデル75 サイドボード / Model 75 Sideboard |
|---|---|
| デザイナー | アルネ・ヴォッダー(Arne Vodder) |
| ブランド | シバスト(Sibast Møbelfabrik) |
| 発表年 | 1950年代末〜1960年代初頭(正確な年は特定されていない) |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 分類 | サイドボード/収納家具 |
| 主要素材 | チーク材、ブラジリアン・ローズウッド(無垢材および突板) |
| 扉 | 引き戸(裏返せる仕様、タンブール仕様の個体が確認される) |
| 仕様 | 背面まで仕上げ済み。取手は前板の縁を削って指を掛ける |
| 生産状況 | 生産終了(ヴィンテージ市場でのみ流通) |
Reference
- Sibast No 11 | Sibast Furniture
- https://sibastfurniture.dk/en/products/no-11-sideboard