モデル75 サイドボードは、デンマークの家具デザイナー、アルネ・ヴォッダーがシバスト社のために設計した収納家具である。1950年代末から1960年代初頭にかけて生み出されたこのサイドボードは、水平に伸びる本体と細く絞り込まれた脚部、そしてスライディング・ドアによる開口の広さで、デニッシュ・モダンの収納家具を語るうえで欠かせない一台とされている。
チーク材やブラジリアン・ローズウッドの木目、取手を省いた面の処理、背面まで仕上げられた仕様。壁に付ける箱ではなく、四方から見られる家具として設計されている。
特徴・コンセプト
モデル75を特徴づけるのはスライディング・ドアの扱いである。ヴォッダーがシバストのサイドボード群で用いた機構には、扉の表裏で異なる仕上げを持たせ、取り外して裏返せる「リバーシブル・ドア」がある。片面はチークやローズウッドの木地、もう片面は白・黒などのラミネートや対照的な木材。使い手が扉を反転させることで、同じ家具が別の表情を見せる。市場に流通する個体には、薄板を連ねて側面へ滑り込ませるタンブール(蛇腹)扉を備えたものもあり、仕様には幅がある。
フォルム
鋭い水平線と、わずかに丸みを帯びたエッジ、先細りのテーパード・レッグ。この三つの対比が、大型の収納家具でありながら床から浮いたような軽さを生んでいる。取手を突出させず、引出し前板の縁を斜めに削って指を掛ける処理も、面の連続を保つためのものである。
内部の構成
内部は可動棚板と引出しトレイ、大型の引出しプラットフォームなどで構成され、個体によって組み合わせが異なる。スライディング・ドアは開いても前方へ張り出さないため、通路の狭い場所でも扱いやすい。背面が仕上げられているため、壁付けだけでなく間仕切りとしても置ける。
製造の背景
シバスト社は1908年、家具職人ペーダー・オルセン・シバストによってデンマークの地方で創業した小さな木工所に始まる。1940年代に息子ヘルゲ・シバストが経営に加わり、戦後は米国向け輸出で名を高めた。ヴォッダーとシバストの協働は1950年代から20年以上続き、この間に生まれた家具は米国のオフィスや大使館、ホテルへと渡っている。
モデル75も、この協働のなかで生まれた一連のサイドボード群に属する。1957年に発表された同系列のサイドボードはミラノ・トリエンナーレで第1位を得ており、ヴォッダーのケースファニチャーはこの時期に国際的な評価を確立した。
現在の位置づけ
モデル75の生産はすでに終了しており、入手できるのはヴィンテージ市場に限られる。ヨーロッパの北欧家具ディーラーや国際オークションで扱われ、素材とコンディションによって価格帯は大きく開く。ブラジリアン・ローズウッド材の個体はワシントン条約(CITES)の規制対象であり、国際取引には証明書が必要となる。
シバスト社は現在、ヴォッダーの遺族との協働により、1957年設計のサイドボードを「Sibast No 11」として復刻生産している。モデル75そのものの復刻ではないが、リバーシブル・ドアという同じ考え方を、オークやウォールナットとカラーラミネートという現代の素材で継いでいる。
基本情報
| 製品名 | Model 75 Sideboard / モデル75 サイドボード |
|---|---|
| デザイナー | Arne Vodder(アルネ・ヴォッダー) |
| デザイン年 | 1950年代末〜1960年代初頭(正確な年は特定されていない) |
| メーカー | Sibast Møbelfabrik(シバスト・ムーベルファブリック) |
| 原産国 | デンマーク |
| 主要素材 | チーク材、ブラジリアン・ローズウッド(無垢材および突板) |
| 特徴 | スライディング・ドア(リバーシブル仕様およびタンブール仕様の個体が確認される)、テーパード・レッグ、仕上げ済み背面 |
| 生産状況 | 生産終了。ヴィンテージ市場でのみ流通 |
| カテゴリー | サイドボード / 収納家具 |
| スタイル | デニッシュ・モダン / ミッドセンチュリー・モダン |