CSS(コンプリヘンシブ・ストレージ・システム)は、ジョージ・ネルソン・アソシエイツが設計し、ハーマンミラーが1959年から1973年まで製造したモジュラー収納システムである。床から天井へ突っ張るアルミニウム押出材のポールを支柱とし、そこに棚板・キャビネット・引き出し・デスクなどのコンポーネントを掛けていく。
「Comprehensive(包括的な)」の名が示すのは、住宅の書棚からオフィスの収納壁まで、同じ部品構成で対応するという設計の射程である。壁面に固定するだけでなく、部屋の中央に立てて間仕切りとして使うこともできた。
特徴・コンセプト
ポールとブラケットによる構造
CSSの骨格は、陽極酸化処理を施したアルミニウム押出材のポールである。断面はH形に近く、前面と背面の双方にブラケットを取り付けられる。この形状ゆえに、壁付けだけでなく間仕切りとしての設置が成立した。ポールは約32インチ(約813mm)間隔で立てられ、隣り合う2本のあいだが1ベイとなる。ベイを増やせば横方向にいくらでも伸びる。
コンポーネントの豊富さ
棚板、引き戸キャビネット、ドロップダウン扉の収納、引き出しユニット、折り畳み式のデスク面。さらに照明器具、レコード収納、化粧鏡なども用意され、1964年のハーマンミラー社カタログでは用途別に「Conference Wall」「Office Wall」「Bedroom Wall」といった呼称で提案されていた。家具ではなく「壁」として売られていたことがわかる。
素材と仕上げ
木部にはウォールナットやチークが主に用いられ、アッシュやローズウッド、白いラッカー仕上げの個体も存在する。ポールとブラケットはアルミニウムとエナメル塗装のスチール。木の温度と金属の精度、その組み合わせが住空間とオフィスの両方に対応する外観を生んでいる。
背景
CSSの源流は、ネルソンが1945年に建築家ヘンリー・ライトとの共著『Tomorrow's House』で提唱した「ストレージウォール」の概念にある。収納を独立した家具ではなく建築の一部として扱うという発想であり、1954年の著書『Storage』でさらに整理された。
直接の前身は、ネルソン事務所がアルミ押出材メーカー向けに設計したOMNIシステムである。OMNIの支柱が矩形断面であったのに対し、CSSはH形に近い断面を採ることで前後両面の利用を可能にした。壁に取り付けるための直角に曲げた支持材も追加され、システムとしての適用範囲が広がっている。
アメリカ国内ではハーマンミラーが、フランスではモビリエ・アンテルナシオナル(Mobilier International)が製造を担当した。1973年に生産が終了し、以降は復刻されていない。
評価
CSSが提示したのは、家具を単品ではなくシステムとして構想するという方法である。標準化された部品を組み替えることで用途に応じた構成を得るという考え方は、ネルソンが1964年に発表したアクション・オフィスへと引き継がれた。
ヴィトソエ606やUSMハラーなど、後続するモジュラー収納の系譜のなかで参照されることも多い。生産終了から半世紀を経た現在も、ヴィンテージ市場では構成の規模とコンディションに応じて高い価格で取引されている。
収蔵例としては、スミソニアン協会クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館がチーク材のCSSウォールユニットを所蔵している。
基本情報
| 正式名称 | CSS (Comprehensive Storage System) |
|---|---|
| デザイナー | ジョージ・ネルソン・アソシエイツ(George Nelson & Associates) |
| デザイン年 | 1959年 |
| メーカー | ハーマンミラー(Herman Miller)/フランス版:モビリエ・アンテルナシオナル |
| 製造期間 | 1959年〜1973年 |
| 製造国 | アメリカ合衆国 |
| 構造 | アルミニウム押出材ポール+ブラケット。フロア・トゥ・シーリング設置または壁面マウント |
| 主な素材 | ウォールナット、チーク、アッシュ、ラミネート、アルミニウム、エナメルスチール |
| ベイ幅 | 約32インチ(約813mm) |
| カテゴリー | 収納家具 / システム家具 |