概要

ノモス テーブルは、ノーマン・フォスター率いるフォスター・アソシエイツが設計し、イタリアのテクノが1986年に製品化したテーブルである。中央に通した背骨状のパイプ、その左右から伸びる2本の支持腕、斜めに張り出す4本の脚が天板を受ける。骨格を共通にしたまま天板の形と大きさを替えることで、1人用の机から大型の会議卓までを一つの系列で賄う。事務用のテーブルとデスクの系列として1987年のコンパッソ・ドーロを受けた。現在もテクノが生産を続けている。

特徴・コンセプト

机ではなく骨格を設計する

フォスター・アンド・パートナーズの説明によれば、この設計は自分たちの事務所で必要になった机から始まっている。打ち合わせにも製図にも展示にも使えて、用途に応じて高さや大きさを変えられる机が、当時の既製品には見当たらなかった。そこで机を一台ずつ形づくるのではなく、荷重を受ける骨格の側を共通化し、用途の違いは天板に受け持たせる構成をとった。

骨格は、中央のパイプを背骨、左右の支持腕を肋骨に見立てた構成をとる。テクノは動物の骨格になぞらえてこの形を説明している。天板は構造材を兼ねず、脚部が支える面として載る。材質や寸法の違う天板を用意しても、脚部の設計に手を入れずに済む。

天板の受け方

テーブルでは、天板を系列共通の構造部ではなく専用のアルミニウム鋳物が受ける。ガラスの天板は吸盤で保持し、木の天板はアルミの受けにねじで留める。性質の異なる面を同じ脚部で扱えるのは、この受け部品が二通りの留め方を引き受けているためである。

天板と受けの間に挟むスペーサーを入れるか外すかで、天板の高さは72cmと65cmの二通りになる。部材を追加せず、組み立ての段階で高さを選び分けられる。

金属どうしで組む

部材の接合はすべて金属どうしで行う。テクノはこの方式について、接合部の寿命が延びること、使用を終えた製品を材料ごとに分けやすいことを利点として挙げている。配線は骨格に沿わせて通し、給電口に手が届く位置へ引き出す。

フレームの仕上げにはクロムめっきのほか、塗装や黒ニッケルめっきがある。ニューヨーク近代美術館とヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が収蔵する1986年の個体は、いずれもクロムめっきを施した鋼とガラスで構成されている。

系列のなかでのテーブル

ノモスの部材は、棚や間仕切り、照明、表示板を取り付けられるように設計されている。これに対しテーブルが受けるのは天板だけで、パイプの径も25mmと、系列の部材の30mmより細い。ベースは傾いた形をとり、天板は前述の専用鋳物が支える。同じ名前の系列でありながら、テーブルだけは部材の構成が異なる。

エピソード

1981年、フォスターの事務所はロンドンのグレート・ポートランド街に新しいスタジオを構えた。そこで使う机を既製品で賄えなかったため、自分たちで図面を引き、協力してくれる工房に少数を作らせている。これがノモスの原型にあたる。改良版はスウィンドンのルノー配送センターにも運ばれ、受付、事務室、食堂で使われた。

テクノがこの机を知ったのは、別の用件の途中だった。同社チェントロ・プロジェッティの責任者が、香港上海銀行本店の内装を請け負う可能性を説明するためフォスターの事務所を訪れ、見慣れない机に気づいたとテクノは記録している。そこから2年を超える作業が始まった。工房仕事に近かった机を、寸法や部材の種類をそろえた工業製品の系列へ組み替える必要があり、図面と試作が繰り返された。製品として発表されたのは1986年である。

名称はギリシャ語の nomos による。フォスター・アンド・パートナーズはこれを「公平な配分」の意と説明する。テクノは、秩序と自発性、規則と創造を同時に指す語が現代の言語には見当たらないため、フォスター・アソシエイツとともにこの古語を選んだと述べている。

評価と影響

1987年のコンパッソ・ドーロの講評は、フォスター・アソシエイツの構想とテクノの生産技術が結びついた点、そして製品の設計と生産工程が互いを規定し合っている点を挙げている。授賞の対象は一台のテーブルではなく、事務用のテーブルとデスクの系列だった。

テクノは、構造を共有して用途の異なる家具を組み立てる方式の先駆として、この系列を位置づけている。ノモスはワークステーション、会議用の卓、住宅向けのテーブルへ枝分かれし、天板の材質と仕上げを加えながら生産が続いてきた。2013年には協働30周年の特別仕様が作られ、天板にセメント、ウォールナットの無垢材、黒い大理石、スモークガラスが加わっている。

受賞歴・収蔵

受賞

  • 1987年 コンパッソ・ドーロ(第14回/対象は事務用のテーブルとデスクの系列「ノモス」)

収蔵

ニューヨーク近代美術館(MoMA)
Nomos Dining Table(1986年) 収蔵番号 140.1988 クロムめっき鋼とガラス。製造元からの寄贈。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)
Nomos テーブル(1986年) 収蔵番号 W.16:1, 2-1989 クロムめっき鋼、ガラス、金属部品。高さ73cm、幅100cm、長さ280cm。
メトロポリタン美術館(Met)
Nomos Table(1987年) 収蔵番号 1998.379ab ガラス、ステンレス鋼、樹脂部品。天板は一辺119.4cmの正方形。

基本情報

名称 ノモス テーブル / Nomos Table
デザイナー ノーマン・フォスター(Norman Foster/フォスター・アソシエイツ)
ブランド テクノ(Tecno)
発表年 1986年
デザインの成立国 イギリス
分類 テーブル/デスク
構造 中央のパイプと左右の支持腕、斜めに張り出す4本の脚で天板を受ける
主要素材 フレーム:金属パイプ(クロムめっき、塗装、黒ニッケルめっき)/天板受け:アルミニウム鋳物/天板:強化ガラス、木材、石材、セメントなど
天板高さ 72cm/65cm(スペーサーの有無で選択)
サイズ 角形は幅100〜280cm、円形は直径120〜200cm(品番により異なる)
生産 1986年〜(テクノ)

Reference

Nomos | Tecno(公式・製品ページ)
https://www.tecnospa.com/en-us/products/life/nomos-table
Nomos: the pioneer of all shared structure systems | Tecno(公式・アーカイブ)
https://www.tecnospa.com/en-us/archives/nomos-the-pioneer-of-all-shared-structure-systems
Nomos Table Abacus | Tecno(公式・製品資料)
https://www.tecnospa.com/ContentsFiles/Nomos%20Table%20Abacus%20EN.pdf
Nomos | Tecno | Foster + Partners Industrial Design(公式)
https://fosterandpartnersindustrialdesign.com/project/nomos-tecno/
Sistema di tavoli e scrivanie per ufficio "Nomos" | ADI Design Museum
https://www.adidesignmuseum.org/i-premiati/sistema-di-tavoli-scrivanie-per-ufficio-nomos/
Norman Foster. Nomos Dining Table. 1986 | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/2525
Nomos Table | V&A Collections
https://collections.vam.ac.uk/item/O144156/
"Nomos" Table | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/487071