概要
ファウボーチェアは、コーア・クリントが1914年に設計した椅子である。デンマークのファウボー美術館のために、来館者が絵画の前で腰を下ろすための椅子として設計された。1915年の同館開館以来、生産が続いている。当初はルッド・ラスムッセン工房が製作し、2011年に同工房を取得したカール・ハンセン&サンが引き継いだ。
特徴とデザインコンセプト
後脚は座面から床に向かって弧を描き、そのまま上方へ延びて背もたれの支柱になる。脚と支柱を別の部材にすれば接合部が必要になるが、一本の材が通れば継ぎ目が生じない。荷重の経路も一本の線として現れる。この形は古代ギリシャのクリスモス椅子の系譜にある。
各部の寸法は幾何学的な関係のもとに決められている。背もたれの弧の半径と、床から座面上端までの高さが同一寸法で揃う。
素材と手仕事
背もたれには手編みの籐(ラタン)が用いられる。板で塞げば背面が見えなくなるが、透かせば向こう側の床が見える。美術館では椅子が視界を遮らないことが条件になる。軽量化にもつながる。一脚の籐編みには約20時間を要する。
フレームにはオーク、ウォルナット、マホガニーといった無垢材が用いられる。部材の切り出しはCNC加工機によるが、組み立ては手作業で行われる。座面にはレザーが用いられる。
誕生のエピソード
ファウボーチェアの起源は1912年に遡る。フュン島の画家集団「フュン派」の作品を展示する美術館が、実業家マス・ラスムッセンの夏の邸宅に隣接して計画された。設計は新古典主義建築の旗手であったカール・ペーターセンに委ねられ、クリントは1913年12月にペーターセンの助手として参加した。
1914年2月には書庫用のソファや書棚の図面が描かれ、展示室用の椅子、すなわちファウボーチェアの最初の設計図面は同年6月に完成した。その後、縮小模型と実寸大の試作品が製作され、翌1915年の美術館開館に合わせて披露された。
この椅子の設計にあたっては、ペーターセン自身も背もたれ上端の曲がり方について修正を提案したとされ、クリントは後年、その助言が設計上の重要な議論であったことを認めている。師弟の対話から生まれた一脚は、デンマーク家具デザイン史における転換点として記憶されている。
評価と影響
クリントは、既存の類型を寸法から見直すという方法をとった。同じ設計者によるサファリチェアは、遠征用の折りたたみ椅子を出発点としている。
同じカール・ハンセン&サンではCH25 ラウンジチェアやCH327 ダイニングテーブルの生産が続く。4館の公開データでは、ファウボーチェアの収蔵は確認できていない。
コーア・クリントの設計思想や経歴について詳しくはコーア・クリントプロフィールページをご覧ください。
カール・ハンセン&サンの歴史や他の製品について詳しくはカール・ハンセン&サンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 正式名称 | KK96620 ファウボーチェア(フォーボーチェア) / KK96620 Faaborg Chair |
|---|---|
| デザイナー | コーア・クリント(Kaare Klint) |
| デザイン年 | 1914年 |
| 発表 | 1915年(ファウボー美術館開館時) |
| 製造元(現行) | カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn / デンマーク) |
| 製造元(当初) | ルッド・ラスムッセン(Rud. Rasmussen)※2011年にカール・ハンセン&サンが取得 |
| フレーム素材 | オーク材(FSC™認証)、ウォルナット材、マホガニー材(FSC™認証) |
| 背もたれ | 手編みラタン(籐) |
| 座面 | レザー(Sif 90 / Sif 98) |
| サイズ | W700 × D545 × H730 mm / 座面高 440 mm |
| 仕上げ | オイル仕上げ(オーク・ウォルナット)、ラッカー仕上げ(マホガニー) |
| 製造国 | デンマーク |
| スタッキング | 不可 |
ファウボーチェアの仕様・購入方法・メンテナンスについて詳しくはファウボーチェア購入ガイドをご覧ください。