概要
コーア・クリント(1888-1954)は、デンマークの家具デザイナー・教育者である。1924年にデンマーク王立芸術アカデミーに家具科を設立し、1954年まで教えた。既存の家具の寸法を測って分析し、そこから設計を進めるという方法を課程に組み込んだ。この方法は以後のデンマークの設計者に広く引き継がれている。
バイオグラフィー
1888年12月15日、コペンハーゲンに生まれた。父ペーザー・ヴィルヘルム・イェンセン=クリントは建築家である。画家としての訓練を受けたのち、建築の実務に入った。
1914年、ファーボー美術館の設計に父とともに関わり、館の椅子を設計している。
1924年、デンマーク王立芸術アカデミーに家具科を設立した。以後1954年に没するまで教えている。
1927年から1928年にかけて、グルントヴィークス教会の内装と照明を手がけた。1933年のサファリチェア、1933年のチャーチチェアなどを設計している。1954年3月28日に没した。
デザインの思想と方法
クリントが課程に組み込んだのは、既存の家具を実測して分析するという作業である。何を収めるのか、どういう姿勢で使うのか、寸法はどこから来ているのか——これらを既存の物から読み取ったうえで設計に入る。造形の着想から始めない。
収めるものから寸法を決める
食器棚を設計する場合、まず何を収めるかを決め、その寸法を測る。皿の径、碗の高さ、盆の幅が分かれば、棚板の間隔と奥行きが決まる。中身の側から容器の寸法を導くという順序である。
既存の家具の形式を分析する
18世紀の英国の家具や、遠征用の折りたたみ家具を実測し、その寸法の根拠を読み取った。形式をそのまま模すのではなく、なぜその寸法なのかを取り出して現在の設計に用いる。
組み立てを前提とする
サファリチェアは、19世紀の遠征用の椅子の形式による。分解して運び、現地で組み立てられる。部材は少なく、接合は単純な差し込みと帯による。
教育の課程として定着させる
1924年に設立した家具科では、この分析の作業を課題として繰り返した。ボーエ・モーエンセン、ハンス・J・ウェグナー、グレーテ・ヤルクらがこの課程を経ている。
カール・ハンセン&サンの歴史や他の製品について詳しくはカール・ハンセン&サン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ファーボー チェア(1914年)
ファーボー美術館のために設計した椅子である。曲げた背もたれが肘掛けまで回り込み、座面は籐を編んで張る。美術館の展示室で使うことを条件とし、来館者が腰掛ける時間の長さから寸法が決まっている。→ファウボーチェア(フォーボーチェア)
レッドチェア(1927年)
デンマーク美術工芸博物館のために設計した椅子である。18世紀の英国の椅子の形式を分析したうえで、寸法を現在の身体に合わせ直している。革を張り、鋲で留める。→レッドチェア
ランタン(1944年)
グルントヴィークス教会のために設計した照明である。多面体の形をとり、内部に光源を収める。教会の高い天井から吊るすことを前提とした寸法になっている。→ペンダント101 ザ・ランタン
サファリチェア(1933年)
19世紀の遠征用の椅子の形式による椅子である。分解して運び、現地で組み立てられる。部材は少なく、接合は差し込みと帯による。既存の形式の寸法の根拠を分析したうえで作り直した例にあたる。→サファリチェア
デンマーク王立芸術アカデミー 家具科(1924年〜)
既存の家具を実測して分析する作業を課程に組み込んだ。この方法は以後のデンマークの設計者に広く引き継がれている。1924年の設立から1954年まで教えた。
評価と影響
クリントは一般に、デンマークの家具設計の方法を確立した人物と評価されている。既存の家具を実測して分析するという作業を、教育の課程として定着させた点が挙げられる。
1924年に設立した家具科からは、ボーエ・モーエンセン、ハンス・J・ウェグナー、グレーテ・ヤルク、ポール・ケアホルムらが出ている。20世紀中期のデンマークの家具設計は、この課程を経た設計者が担った。
設計者としての作品数は多くないが、ファーボー チェア、レッドチェア、サファリチェアは現在も生産が続いている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- V&A 家具(1933年) 収蔵番号 CIRC.731-1969
- V&A 家具(1948年) 収蔵番号 W.2-2004
- V&A 図面(1950年代後半) 収蔵番号 E.275:2-1994
MoMA、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。デンマーク国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1914年 | 椅子 | ファウボーチェア(フォーボーチェア) | Carl Hansen & Søn |
| 1924年 | 教育 | デンマーク王立芸術アカデミー 家具科 設立 | コペンハーゲン |
| 1927年 | 椅子 | レッドチェア | Carl Hansen & Søn |
| 1927-28年 | 内装 | グルントヴィークス教会 内装・照明 | コペンハーゲン |
| 1933年 | 椅子 | サファリチェア | Carl Hansen & Søn |
| 1933年 | 椅子 | チャーチチェア | Fritz Hansen |
| 1944年 | 照明 | ペンダント101 ザ・ランタン | Le Klint |
| 1930-50年代 | 収納 | 収納家具の各種 | Rud. Rasmussen ほか |
プロフィール
| 生没年 | 1888年12月15日〜1954年3月28日 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・コペンハーゲン |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン |
| 分野 | 家具、照明、教育 |
| 主な協働ブランド | Carl Hansen & Søn、FDB Møbler、Le Klint、Fritz Hansen |
Reference
- Kaare Klint | Carl Hansen & Søn
- https://www.carlhansen.com/en/designers
- Designmuseum Danmark
- https://designmuseum.dk/en/
- Det Kongelige Akademi
- https://royaldanishacademy.com/en
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/