バユ(Bahut)は、ジャン・プルーヴェが1951年に設計したサイドボードである。「Bahut」はフランス語で戸棚を指す。折り曲げ加工した鋼板とアルミニウム板で構成され、扉には縞鋼板(ダイヤモンドプレート)が用いられている。
プルーヴェは鍛冶職人としての修業から出発し、ナンシーとマクセヴィルの工場で建築部材と家具を同じ論理で製造した。バユは、その工場が持っていた金属加工の技術と、装飾を持ち込まない造形観がそのまま形になった収納家具である。
特徴・コンセプト
折り曲げた板でつくる
プルーヴェの家具は、鋼板を折り曲げることで剛性を得る。厚い部材を使わず、断面の形状によって強さを出すこの方法は、彼が建築の構造部材で用いた考え方と同じである。バユの本体もアルミニウムと鋼の板を折って構成されており、余分な補強を加えずに箱としての強度を確保している。
縞鋼板の扉
前面の扉には、菱形の突起が並ぶ縞鋼板が使われる。本来は床材や踏板の滑り止めに用いられる工業用の板であり、それを家具の表面に持ち込んだところにこの作品の性格がある。クリーム色のラッカー仕上げのもとで、菱形のパターンが陰影となって浮かび上がる。
木の使いどころ
取手にはオーク無垢材が用いられる。金属で構成された箱に触れる部分だけが木であり、素材の使い分けは装飾ではなく用途に従っている。ヴィトラによる復刻版では、オークとスモークドオークの仕様が用意された。
誕生の背景
1951年当時、プルーヴェはナンシー郊外マクセヴィルの工場を率いていた。戦後の復興期にあって、この工場は住宅の構造部材から学校や事務所の家具までを一貫して製造している。バユもそうした生産体制のなかから生まれた一点であり、公共施設や企業のオフィス向けの家具と同じ系列に属する。
プルーヴェは1953年、資本を握ったアルミニウム産業側との対立により、自らの名を冠した工場を離れることになる。バユが作られたのは、その直前の時期にあたる。
ヴィトラは2002年からプルーヴェ家の協力のもとで作品の復刻を続けており、バユは2014年から2016年にかけてG-Star RAWとの限定シリーズ「Prouvé RAW Office Edition」として製造された。通常カタログの製品としては流通していない。
現在の評価
バユは、家具と建築を同じ手法で扱うプルーヴェの姿勢が出た作例として言及される。構造を隠さないという選択は、当時の家具の常識からは外れたものであった。
オリジナルの製造数は限られており、ヴィンテージ市場では来歴の確認された個体が高額で取引される。ヴィトラの復刻版も限定生産であったため、いずれも二次市場が主な入手経路となる。
基本情報
| 名称 | バユ / Bahut |
|---|---|
| デザイナー | ジャン・プルーヴェ / Jean Prouvé |
| デザイン年 | 1951年 |
| オリジナル製造 | アトリエ・ジャン・プルーヴェ(フランス・マクセヴィル) |
| 復刻 | ヴィトラ / Vitra(Prouvé RAW Office Edition、限定生産) |
| 素材 | 折り曲げアルミニウム板・鋼板、縞鋼板の扉、オーク無垢材の取手 |
| サイズ | W1,600mm × D450mm × H1,005mm(仕様により異なる) |
| カテゴリー | サイドボード / キャビネット |
| 原産国 | フランス |