概要

イームズ LCWは、チャールズ&レイ・イームズが1945年から1946年にかけて設計した成形合板のラウンジチェアである。名称は Lounge height(ラウンジの高さ)、Chair、Wood base(木製脚)の頭文字による。座面・背もたれ・前脚・後脚・背骨の5つの部材を、ゴム製のショックマウントで結合する。

特徴・コンセプト

シェルを分割する

イームズ夫妻は当初、座面と背もたれが一続きになった単一のシェルを目指していた。1940年にエーロ・サーリネンと共同で出品し、ニューヨーク近代美術館のオーガニックデザイン家具コンペティションで一位を得た案がその系譜にある。だが合板を急な曲面に沿わせると割れてしまい、出品作では亀裂を張り地で覆う必要があった。

LCWでは、シェルを座面と背もたれの二つに分け、成形合板の背骨と脚で支える構成をとった。部材ごとに緩い曲面で済むため、割れずに成形できる。接合部を隠さずに見せられるようにもなった。

ゴムを介して結合する

各部材はゴムと金属を組み合わせたショックマウントで留められる。硬く固定すると合板のしなりだけが座り心地を決めるが、ゴムを挟めば結合部そのものが動く。背を預けると背もたれがわずかに追随する。

積層数と座面高

座面と背もたれは5層、脚部と背骨は8層の合板でつくられる。層が多いほど硬くなるため、しなりが要る部分は薄く、荷重を支える部分は厚くしている。座面高は約39cmと低い。食卓用ではなく、深く腰掛けるための寸法である。

エピソード

成形合板の技術は、1942年にチャールズ・イームズが米海軍向けの添え木を開発した経験にさかのぼる。人体の脚に沿う三次元の曲面を成形する必要があり、そこで得た知見が家具へ転用された。ロサンゼルスのアパートでは、自作の成形機「カザム!マシン」で実験が重ねられている。

LCWは1945年12月、ロサンゼルスのバークレー・ホテルで初めて披露された。翌1946年3月から4月にかけて、ニューヨーク近代美術館の「New Furniture Designed by Charles Eames」展で一般に公開されている。この展覧会でハーマンミラーのデザインディレクターだったジョージ・ネルソンがLCWを見たことが、以後40年以上続く協働の始まりになった。

製造は1946年から1947年にかけてエヴァンス・モールデッド・プライウッド・カンパニーが担い、1949年にハーマンミラーが製造権を取得した。1957年に一度生産を終えたが、1994年に再開されている。

評価と影響

LCWは、同時期に開発されたDCW(ダイニングチェアウッド)と同じ系列にあたる。座面と背もたれのシェルを共通にして脚部を替えるという方式は、のちのイームズ プラスチック サイドチェア DSWにも引き継がれた。ヨーロッパと中東ではヴィトラが製造している。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、「Low Side Chair」の名称で二つの個体を登録している。収蔵番号64.1946は1946年頃の製作で、成形・曲げ加工したバーチ合板に革を貼った仕様(製造元からの寄贈。寸法64.8×57.1×64.1cm)。収蔵番号643.1973は1946年製で、バーチ合板とゴム製ショックマウントによる(ユージン・エッピンガーからの寄贈)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館も、1945〜1946年のLCWを収蔵番号W.17-1989で登録している。

基本情報

名称 イームズ LCW / Eames LCW (Lounge Chair Wood)
デザイナー チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)
ブランド ハーマンミラー(北米ほか)/ヴィトラ(ヨーロッパ・中東)
初期製造 エヴァンス・モールデッド・プライウッド・カンパニー(1946〜1947年)
発表年 1945〜1946年(1957年に一度生産終了、1994年再開)
デザインの成立国 アメリカ
分類 ラウンジチェア
構造 座面・背もたれ・前脚・後脚・背骨の5部材をショックマウントで結合
主要素材 成形合板(座面・背もたれ5層、脚部・背骨8層)、ゴムと金属のショックマウント
座面高 約39cm
収蔵 ニューヨーク近代美術館(64.1946、643.1973)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(W.17-1989)

Reference