概要
モデル232は、ボーエ・モーエンセンが1951年に発表した二枚扉の収納キャビネットである。「チャイナキャビネット」の通称で知られ、中国の伝統家具に着想を得た「Chinaシリーズ」を構成する一台にあたる。FDB(デンマーク生活協同組合連合会)の家具部門のために設計され、家具職人C.M.マドセンの工房で製作された。
特徴・コンセプト
鍵が取手を兼ねる
装飾を持たない矩形の箱と、細い脚を組んだベース。前面には引手や把手が取り付けられておらず、施錠用の真鍮の鍵がそのまま取手を兼ねる。部品を一つに減らすことで、平滑な前面に金物が一点だけ現れる状態になる。この鍵が、簡素な外観のなかで視覚的な焦点になっている。
素材と内部構成
本体にはオーク材またはチーク材の突板が用いられ、ローズウッド仕様も少数ながら存在する。内部はビーチ材やメープル材といった明るい木で構成されており、扉を開いたときに外装との明暗差が生まれる。無垢材のベースフレームが本体を持ち上げ、床から浮かせている。
内部には可動式の棚板と引き出しトレイが収まる。トレイは高さを変えて配置でき、食器や小物など収納物の寸法に合わせて構成を変えられる。
Chinaシリーズという文脈
モーエンセンは中国の伝統家具の研究を通じて、装飾ではなく構造と比例によって形を成立させる方法を掘り下げた。Chinaシリーズにはキャビネットのほかブックケースやチェスト・オブ・ドロワーズが含まれ、いずれも直線的な輪郭と脚部の比例を共有している。
エピソード
モーエンセンは1942年から1950年までFDBの家具デザイン部門を率い、デンマークの一般家庭に向けた家具の開発にあたった。モデル232が発表された1951年は、彼が自身の事務所を構えた直後にあたる。FDB時代に築いた設計の枠組みを引き継ぎながら、独立後の仕事として世に出た作品である。
彼は生涯を通じて、家具の寸法と生活の実態との関係を実測に基づいて検討した。1954年には建築家グレーテ・マイヤーとともに「Boligens Byggeskabe(住居の造り付け収納)」に取り組み、衣類や食器の標準寸法を調査して収納の基準を定めている。モデル232の内部構成に見られる合理性は、こうした関心の延長線上にある。
FDBの家具は、一般家庭が手の届く価格で購入できることが前提だった。モデル232は量産を想定した設計でありながら、C.M.マドセン工房の加工によって仕上げの精度が保たれている。複雑な加工を避けつつ、扉の建て付けや突板の木取りには手を抜かない。この配分が、この時期のモーエンセンの作品に共通する性格である。
評価と影響
デンマークの収納家具として評価が定着している。仕様や製造年によって寸法に差異があるため、中古で入手する際は個体ごとの実測が必要になる。歴史上の家具を調べ、そこから構造と比例の原則を取り出すという進め方は、モーエンセンの師であるコーア・クリントから受け継いだものであり、同じ姿勢はスポークバックソファにも見られる。
ボーエ・モーエンセンの設計思想や経歴について詳しくはボーエ・モーエンセンプロフィールページをご覧ください。
FDBモブラーの歴史や他の製品について詳しくはFDBモブラーブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | モデル232 チャイナキャビネット / Model 232 China Cabinet(Model A232) |
|---|---|
| デザイナー | ボーエ・モーエンセン(Børge Mogensen) |
| ブランド | FDB Møbler(製作:C.M. Madsen工房) |
| 発表年 | 1951年 |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 分類 | 収納家具/キャビネット |
| シリーズ | Chinaシリーズ |
| 主要素材 | 外装:オーク材・チーク材・ローズウッド材の突板/内部:ビーチ材またはメープル材/金具:真鍮 |
| 構造 | 二枚扉、可動棚板、引き出しトレイ、無垢材ベース。施錠用の鍵が取手を兼ねる |
| 寸法 | 仕様・製造年によって差異があり、個体ごとの実測が必要 |
Reference
- Børge Mogensen | FDB Møbler
- https://fdbmobler.dk/en/pages/borge-mogensen